慢性的な人手不足に苦しむ日本において、早期離職は重要な企業課題だ。今回「採用のミスマッチを防ぐ方法」について、就活、採用、育成、研修を支援する上原コンサルティングオフィス代表の上原正光さんに話を聞いた。
「会社の良い面」だけを伝えていないか? 採用のミスマッチ、面接の場でどう防ぐ
――面接で応募者を見極める際に、一番大事なポイントは何でしょうか?
「自社の風土に合うかどうか」です。営業職一つとっても、厳しいノルマを課して成果を競う会社もあれば、チームで協力して目標を達成する会社もあります。まずは自社の特徴を正しく理解したうえで、それに適した人材かを判断することが欠かせません。
よくある失敗が「今の社風を変えたいから、全くタイプの違う人を採用しよう」というものです。新しく入ってきた人材に風土改革を期待するのは酷な話で、うまくいかないことが多いです。組織を変えたいなら、まず既存社員の意識を変える必要があります。
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――応募者側も同様に「自分がこの企業に合うか」を探っていると思います。両者のミスマッチを避けるために、どのような取り組みができるでしょうか?
採用面接には、入社後の離職を未然に減らす役割もあると考えています。離職を防ぐには「会社の良い面ばかりを伝えない」ことがとても大切です。残業の有無や転勤の可能性、配属先のバリエーションなど、入社後に「聞いていなかった」と不信感が生まれる可能性がある要素は事前にしっかり伝えるべきです。
現実を知ったうえで入社を決めてもらう方が、結果的に定着率は高まります。多くの企業が実践していることですが、社員とのカジュアルな面談を通して「この先こういう人になりたい」と思えるモデルケースを見つけてもらったり、見学会で会社のことを多角的に知ってもらう機会を設けたりすることも効果的です。
――面接以外で採用のミスマッチを防ぐためには、どのような取り組みができるでしょうか?
面接時間は限られているため、どうしても面接官のバイアスがかかってしまいます。そのため、適性検査の活用は有効だと考えています。適性検査はすでに多くの企業が取り入れていますが、検査会社の出すスコアで判断するだけでは意味がありません。
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過去に実施した適性検査と入社後のデータの相関を分析し、「活躍する人材」「離職しやすい人材」の特性や傾向を分析することが重要です。一般例で判断するのではなく自社の文脈に合ったデータ活用が採用の質を高めるポイントになります。
――離職を防ぐために、入社後はどのようなフォロー体制が必要でしょうか?
特に入社から3カ月、半年といった節目には、フォロー研修や1on1面談を通じて本人の不安を吸い上げ、承認欲求を満たすことが重要です。「自分はここまで成長している」という成長実感や、「自分でこの会社を選んだ」と再確認できる機会をつくることが離職防止につながります。
――面接官に必要な姿勢、考え方についてアドバイスをお願いします
面接の場は、面接官が「自社の風土に合うかどうか」を判断する場であると同時に、応募者にとっては自己を振り返り、将来のキャリアを考える重要な節目となります。面接官は応募者の人生の節目に立ち会っているという意識を持ち、目を見て、五感もフルに使って誠実に対話することが大切です。そうすることで、お互いが安心して語り合い、良い関係を築ける場になります。
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