「100万円自腹で払って」ひょうたんアーティスト・あらぽんが“カナダ個展”を実施。最終的な損益を聞いた

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2025年10月15日 09:20  日刊SPA!

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あらぽん
カナダ・バンクーバーで初の海外個展を開催するため、今年4月からクラウドファンディングに挑戦していたひょうたんアーティストのあらぽん。
しかし、目標150万円に対して50万円という結果に終わり「クラファン失敗」が話題に。個展の開催すら危ぶまれていた中、あらぽんは100万円を自己負担してバンクーバーに渡航することを決断。9月には個展を実施していた。

コスト削減のため、ホテルではなくオフィス泊という過酷な条件での滞在となったが、現地で待っていたのは予想以上の手応えだったという(前後編の後編)。

◆1週間連続でシャワーのないオフィス泊

——100万円自腹でマックスプランを決めて、具体的にはどのようなコスト削減を?

あらぽん:大きなところだと宿泊費ですね。9月はまだバカンスシーズンの尾を引きずっていて、どのホテルも一泊4〜5万円でした。

それを全部削るために、カナダにいる1週間はお世話になっている方の会社のオフィスを借りて寝泊まりしまして、これで30万円が削れました。

——1週間連続でオフィス泊とは相当過酷でしたね……。

あらぽん:そうですね。オフィスにこもって作品の修正や追加制作、個展の準備など、夜遅くまで作業して、そのままソファで寝るという生活でした。

オフィスにシャワールームがないんで、隣のビルのトレーニングルームのシャワーを借りに行ったのも、ちょっとしんどかったです。

——他にも削減したコストはありますか?

あらぽん:作品の輸送費ですね。

正規の値段で絵を1枚送ると20〜30万円かかるんです。だから、一番大きいダンボールに入るサイズの作品だけを作って、それをギュウギュウに詰めて4箱送りました。

1箱3万円ちょっとなんで約13万円ですみましたが、カナダでダンボールを開けたら、4箱中3箱が壊れてました(苦笑)。

——3箱も壊れてたんですか!

あらぽん:でも修正できる範囲だったので、カナダに着いてすぐに修正作業をしました。意外と早く終わったおかげで、残りの時間は追加の作品作りと現地での告知に充てることができました。

◆現地トラブルで費用が追加

——苦労した甲斐もあって、かなりコスト削減できたようですね。

あらぽん:そうなんですが、実は現地で予想外の費用が発生してしまったんです……。

ギャラリーとの打ち合わせ中にライトの設置でもめてしまって、ギャラリー側から怒られてしまいました。そのせいで、当初はサービスになる予定だった備品代を正規料金で請求されることになって、会場費がプラス300ドルになりました。

——それは痛い出費ですね。

あらぽん:さらに「信用できないから」という理由で、イベント当日に警備員をつけることになり、700ドルが追加に(苦笑)。開催前からマイナスが大きくて、あの時は本当に焦りましたね。

でも売上が良かったから、現地でかかったお金は現地でちゃんと調達できて、なんとかトントンくらいにまでなりました。

◆台湾フェスで痛感した言葉の壁

——個展の前に、台湾フェスにも参加されたんですよね。

あらぽん:そうなんです。実はクラファンをしている時に、別ルートでこの台湾フェスに参加しないかと声をかけてもらったんですが、日程が難しそうだったんで断っていたんです。でも、飛行機のチケットが取れなくて日程がズレたんで、急遽参加しました。

台湾フェスの売り上げをマイナス分に充てられたらいいな、なんて考えてたんですが、それ以前の問題でした。

実は僕、英語が全然話せなくて、お客さんに話しかけられても「ジャパニーズラッキーアイテム」しか言えなかったんです。

2ターン目に返す言葉がわからなくて、お客さんと話すのが怖くなっちゃって……結局、1日目の売上げは雀の涙という感じで、2日目も最初の3時間は売上ゼロでした。

——海外の言葉でのコミュニケーションは慣れていないと難しいですよね。通訳の方はいなかったんですか?

あらぽん:語学学校の生徒さんに通訳をお願いしてたんですが、直前でキャンセルになりました。

それで一人で対応するしかなかったんですが、できるだけ話しかけられないようにしようと思って、陳列とかの作業をしてるフリして接客から逃げてました(苦笑)。

◆台湾フェスで販売したひょうたんグッズ

——想像以上に大変だったんですね。どこかのタイミングで状況は変わりましたか?

あらぽん:2日目の途中から通訳の人が来てくれたんですが、そうしたらすぐに売れました。体感で言うと5秒くらいです。やっぱり言葉って大事だなって思いました。

あと驚いたのが、色が塗ってあるひょうたんが珍しかったようで、「ひょうたんじゃなくて、プラスチックに色を塗ってるでしょ?」という人もいました。

本物のひょうたんに、ちゃんとひとつひとつデザインを考えて、心を込めて色を塗っているんで、それもきちんと英語で伝えないといけないなと思いました。

——通訳の方が来てから状況が変わったということですが、お客さんの反応で何か気づいたことは?

あらぽん:アジアの方が多く買ってくれたということでしょうか。台湾フェスでもアートエキシビジョンでも同じでした。たぶん、日本人を含めてアジアの人には「ひょうたんは縁起のいいもの」という認識が共通しているからだと思います。

カナダやその他の国の方も作品を見てくれましたが、「ひょうたんとは何なのか」からきちんと説明しないと買ってもらえませんでしたね。

◆単独個展の予定がJAPAN ART EXHIBITIONに

——当初は単独個展の予定でしたが、開催形式が変わりましたね。

あらぽん:そうなんです。ギャラリーの広さに対して展示作品が少なかったんで、カナダのスタッフさんが急遽「ギャラリーに余裕があるからエキシビジョンにするのはどうか」って提案してくれたんです。

——急遽決まったというのは、開催直前だったんですか?

あらぽん:1ヶ月前くらいですね。それから急いでいろんなアーティストに声をかけてもらいました。

光浦靖子さん、和菓子アーティストのMeguさん、ジャパニーズスタイルベーグルのWA-BAGELさん、アーティストのTaka Sudoさんが参加してくれて、「JAPAN ART EXHIBITION」として開催することになりました。

そこで、約80点のひょうたんアート作品を展示しました。1日という限られた時間でしたが、300人近い方にお越しいただきました。

◆カナダで得た手応えと収支

——1日で300人は、大盛況と言っていいのではないでしょうか。

あらぽん:ありがとうございます。朝から客足が途絶えることがなくて、お昼ご飯を食べる暇もないくらい忙しかったです。閉館ギリギリまでお客さんが作品を見てくれて、本当にうれしかったです。

あと、小物が爆売れしたのも助かりました。自腹の上に追加費用が発生して、当初はかなり焦っていましたが、現地でけっこう回収できたので、最終的にはほぼトントンになりました。

——素晴らしいですね!今後はどんな展開を考えていますか?

あらぽん:まだ決定ではないのですが、4月にカナダで開催される桜フェスに出たいなと思っているところです。

桜フェスは超大きな日本のお祭りなんで、今回のようなジャパンアートエキシビジョンも同時開催できたら、すごく盛り上がると思うんです。

——最後に、何か挑戦したいけど一歩を踏み出せない人へのアドバイスをお願いします。

あらぽん:僕は、何事も「考えるより動く」方がいいと思っています。考えると怖いことばかりが頭に浮かんできて、結局、踏み出せなくて後悔する、なんてこともあり得ます。

確かに、僕みたいな考えるより先に体が動く場合は、後でトラブルが起こることも多いんですが、その時にどう対処したらいいか考えて、ひとつずつクリアするという方法も悪くないと思うんです。

後悔しないように、まだ見えないトラブルを恐れずに、思い切って挑戦してみてください!

<取材・文・写真/安倍川モチ子>

【安倍川モチ子】
東京在住のフリーライター。 お笑い、歴史、グルメ、美容・健康など、専門を作らずに興味の惹かれるまま幅広いジャンルで活動中。X(旧Twitter):@mochico_abekawa

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