黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

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2025年10月15日 11:40  エンタメOVO

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(左から)黒崎煌代 遠藤憲一 (C)エンタメOVO

 再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いた『見はらし世代』が10月10日から全国公開された。団塚唯我のオリジナル脚本による長編デビュー作となる本作で、主人公の蓮を演じた黒崎煌代と父の初を演じた遠藤憲一に話を聞いた。




−最初に脚本を読んだ時の印象から伺います。

黒崎 団塚(唯我)監督の前作『遠くへいきたいわ』(22)を見た時に、何か文字にはできない面白さがすごく多かったので、この脚本に団塚マジックが加わったらもっと面白くなるだろうなと思って、ワクワクしながら読みました。

遠藤 脚本を読んだ時は不思議な作品だと思いました。でも監督の短編『遠くへいきたいわ』を見せてもらったら、強烈な個性のある作品だったので、ぜひやりたいと思って参加しました。「主演は誰ですか」と聞いたら、「『さよなら ほやマン』(23)の人です」と。それで映画を見たら、ずっとヘラヘラ笑っていて、変な人だと思ってちょっと怖かった。ところが、実際に会ったら全然イメージと違って、ギャップが大きくて、あれは演技だったんだと思ってびっくりしました。

−今回は仲たがいをした親子役でしたが、演じたキャラクターをどのように捉えましたか。

黒崎 蓮は、ところどころ変な動きもするんですけど、意外と違和感なく受け入れることができました。つかみどころがない感じもありますが、東京に住む普通の男として捉えました。この作品の主演は一応僕ということになっていますが、家族4人の話なので、別に主演だからといって特別なことをするわけでもなく、変なことをせずに自然体でいれば、蓮になれるんじゃないかなと思ってやっていました。

遠藤 監督の指示がほんとに鋭かったので、とにかく言われるがままに演じました。俺からこうしたいとか言ったことは一度もなく、とにかく余計なことしないようにしました。監督とは、キャラクターについての話もあまりせずに、その場にポンと置かれて、指示されたことをやったという感じですね。

−お互いの演技をどう思いましたか。

黒崎 大先輩ですから失礼に当たるかもしれませんが、遠藤さんの表情や動きが見ていてとても面白かったです。もちろん、シリアスな演技もすごいんですけど、ずっとテレビや映画で遠藤さんを見て笑ってきましたから。

遠藤 「妖怪ウォッチ」とかを見過ぎたんじゃない。それとのギャップだね。シリアスなのは久しぶりだったから、真面目にやればやるほどおかしかったのかもしれないな。

黒崎 大先輩から楽しく学びました(笑)。

遠藤 黒崎くんはとても演技が上手だから、これからぐんぐん伸びていくと思います。この映画が上映されたら、黒崎くんもそうだけど、木竜麻生ちゃんも、菊池亜希子ちゃんも、伸びていくのは間違いないと思います。

−団塚監督の印象は?

遠藤 出来上がった映像を見て、びっくりしました。予想だにしないアングルがあったり、編集にも想像がつかないような斬新さがあって面白かった。監督は、撮影中に何か言う時も、この若さでと思うぐらいとても適切でした。言うことが全て鋭いから、こちら側の変な思いつきを入れるよりも、監督から言われたままにやった方が新しくていいものができると思いました。若いからとかは関係ないです。何か独特の才能があるんでしょうね。

黒崎 3年ぐらい前、『さよなら ほやマン』の時に知り合って今は友達です。今、監督が27歳で僕が23歳ですけど、例えば、「ここをもうちょっとこうしたら、優しい、いい感じになる」みたいな会話ができるのは、やっぱり同世代だからなのかなと思いました。

遠藤 俳優によって掛ける言葉が違うのがすごいよね。(妻役の)井川(遥)さんとは結構役に関してのディスカッションをいっぱいしていたけれど、俺とはそういう感じじゃなかった。みんな言われていることが全然違うんですよ。

−今後、監督として相当伸びていくような印象を受けましたか。

遠藤 これからどんどんと伸びていくんじゃないですか。ただ、今は自分の作りたいもの作っていると思うけど、だんだん仕事も増えていくと、エンターテインメント性の高いものを要求されることもあると思います。それを受けるのかというのもあるけれど、それをやったらどんな作品になるのかが楽しみだとも思います。

−撮影中のエピソードで何か面白いものがあれば。

黒崎 遠藤さんのSNSを見たら、遠藤さんが踊っているんです。それを見た後に、遠藤さんに向って花を投げつけるシーンをやったら、僕が笑ってしまって何度もNGになりました。

遠藤 それを見て俺も笑いをこらえるのに必死だったよ。プロデューサーからも「これはもしかしたら海外に行くような作品になります。もっと集中しましょう」と言われました。こんなに年が違うのに2人そろって怒られてしまいました。役柄とは全然違う。よくこんな2人がこの役をできたなと思います。

−この映画では渋谷の街が印象的に映りますが、お二人の目にはどのように映りましたか。

遠藤 今、宮下パークで遊んでいる若い人たちは、あそこにホームレスの人たちがいたり、いろいろな葛藤があった過去のことは知らないですよね。それでも町は進んでいく。この家族も、過去にはいろいろなことがあって、今は別れて暮らしながらも生まれ変わろうとしている。そういう意味で、この映画は一つの街と家族の姿を上手にリンクさせていると思います。ただ、渋谷が再開発されたように、家族の方も一つにまとまっていくというのが普通の描き方ですが、とにかく距離を置いて見ているし、べたべたしない。そこがすごいと思いました。今後、監督が成功すればするほど、この「見はらし世代」というタイトルが、「Z世代」や「バブル世代」と同じように、新しい言葉になっていくんじゃないかなと思います。

−完成作を見た印象と、これから映画を見る観客や読者に向けて、見どころも含めて一言ずつお願いします。

黒崎 この映画には、50代のお父さんから20代の若者まで、いろんな世代の人間が出てきます。だから、すごく普遍的なものが詰まっていると思います。こちらが何を感じてほしいと言うよりも、見た方が、何か一つでも感じていただければいいんじゃないかなと思います。

遠藤 黒崎くん、木竜ちゃん、監督も含めて、新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います。その人たちがどんなものを作り上げたのかというのは、言葉ではなかなか説明しきれないので、ぜひこの新鮮な感覚を劇場で見て味わってほしいなと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)


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