963のWEC参戦継続は「顧客とFIA/ACO次第」とポルシェ。ル・マンの自動招待枠はどうなる?

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2025年10月16日 07:00  AUTOSPORT web

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プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963(右)と、WEC第3戦スパと同第4戦ル・マンで登場したポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの3台目のマシン
 ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハによると、WEC世界耐久選手権におけるポルシェのファクトリー・ハイパーカー・プログラムの撤退は、同社のカスタマープログラムに「影響はない」という。しかし来年、ポルシェがプライベーターとともにハイパーカークラスに参戦し続けることができるかについては疑問が残る状況だ。


■他のカスタマーとは話し合っていない

 先週明らかにされたとおり、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは11月6〜8日に開催される2025年シーズン最終戦『バーレーン8時間』をもって世界選手権での活動を終了するが、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では2台体制で行うポルシェ963のファクトリープログラムを継続する予定だ。

 ローデンバッハは先週末、ロード・アトランタで行われたIMSA最終戦『モチュール・プチ・ル・マン』で記者団の取材に応じ、ドイツのメーカーがWECにカスタマーチームを通じて、LMGT3、さらにはハイパーカークラスに参戦する可能性を示唆した。

「2026年のWECハイパーカークラスにファクトリープログラムで参加しないという決定は、我々のカスタマープログラムにはまったく影響しない」と同氏は述べた。

「これ以上は答えることができない。どうなるかは、我々のカスタマーとACOフランス西部自動車クラブおよびFIA国際自動車連盟の決定次第だ」

 メーカーのワークスチームによるエントリーがない状況で来年、カスタマーチームのポルシェ963がハイパーカークラスでの競争を許可されるかどうかは、現時点では不明だ。

 2025年WEC競技規定の第3.2.3条には、「メーカーはハイパーカーFIA世界耐久選手権に2台のマシンをエントリーしなければならない」とあり、どのマシンが「ハイパーカーFIA世界耐久選手権またはハイパーカー・チームカップに参加するかを決定するのはメーカーの責任である」と規定されている。

 2023年半ばから現在まで、963のカスタマーカーをを1台体制でハイパーカークラスに投入しているプロトン・コンペティションは、マニュファクチャラー選手権ポイントの対象とならないハイパーカー・チームカップのカテゴリーでエントリーしている。

 プロトンは、5号車ポルシェ963で参戦予定だったIMSA最終戦プチ・ル・マンを含むミシュラン・エンデュランス・カップの終盤2戦を欠場しているが、同時に来年の計画をまだ明らかにしていない。しかし、クリスチャン・リード率いるこのチームは、WECでポルシェのLMDhカーを走らせる可能性がある唯一のカスタマーであると考えられている。

 ポルシェLMDhファクトリーディレクターのウルス・クラトルはSportscar365に対し、現在WECにおける他の潜在的なカスタマーとは話し合っていないと認めた。

 仮にプロトンが来年2台体制でのハイパーカー参戦に踏み切ったとしても、それが2026年のWECのメーカー要件を満たすかどうかはまだ分かっていない。

 しかし、もしポルシェ963が来シーズンもWECに参戦すれば、プチ・ル・マン後にGTPクラスのドライバー、チーム、マニュファクチャラーの3部門を総なめにしたポルシェ・ペンスキー・モータースポーツが、2026年のル・マン24時間レースにおけるIMSAの自動招待枠を利用できる可能性がある。

 ペンスキー・レーシングのジョナサン・ディウグイド社長は「正直なところ、現時点では多くの要素が動いている」と語った。「人々は、必ずしも事実ではない多くのことを事実として捉えている」

「現時点では、全体像を完全に理解しているわけではないと思う。我々は、ひとつずつ段階を踏んで乗り越えてから、それを評価していくつもりだ」

 プライベーターによる2台体制での参戦が理論上、ペンスキーのル・マンへの一回限りの参戦を可能にするWECの要件を満たすと考えているかと尋ねられた際、ディウグイドは「それは多くの疑問の中のひとつだ」と答えた。

 さらに彼はこう付け加えた。「究極的には、それはFIAとACOのテリトリーであり、彼らがそれをどのように設定するかにかかっている。いずれにせよ、来年の競技規定はまだ発表されていない。それは宙に浮いているようなものだ」

 もうひとつの潜在的なハードルは、各ハイパーカーメーカーがWECに参戦するために支払わなければならない53万8000ユーロ(約9500万円)のエントリーフィーだ。

 ポルシェがその費用を支払うのかと尋ねられたローデンバッハは「もし、それが必要なことであれば、我々は話し合うだろう。もちろん、我々はつねにカスタマーを喜んで支援させてもらう」と述べた。

「繰り返すが、2026年のWECにファクトリープログラムで参加しないという決定は、カスタマーに対する我々の戦略的な哲学を変えるものではない」


■LMGT3エントリーが認められるか不透明

 一方、ローデンバッハは、現在マンタイ・レーシングが運営している2台のLMGT3クラスでの割り当てが、来年も継続して認められることを望んでいる。

 WECは、アクティブな、または間もなく開始するハイパーカープログラムを持つGT3メーカーを優先しているが、そのどちらの基準も満たしていないにもかかわらず参戦枠を与えられたメルセデスAMGなど、いくつかの例外が存在する。

「我々の顧客、この場合はマンタイが来シーズンもそこにいることを願っている」とローデンバッハ。「しかし、最終的にエントリーを受け入れるのはFIAとACO次第だ」

 ディウグイドは、もしすべての準備が整えば、チーム・ペンスキーがIMSAの自動招待を通じてポルシェ963で来年のル・マンに戻るチャンスに飛びつくだろうと示唆した。

「ル・マンは我々のプログラムの焦点であった」と彼は語った。

「我々は誰も望んでいない状況にいる。ル・マンにはもちろん出たいが、その時の状況に応じて評価する必要があるだろう」

 Sportscar365から、もしその機会が与えられたらそれを利用するかと問われると、「現時点ではそうだが、いま、すべてが急速に動いている」と述べた。

 一方、ローデンバッハは、現時点では何らかのシグナルを出すにはあまりにも多くの変数が絡んでいることを強調した。

「疑問符が多すぎるため、これには答えたくない」と同氏。

「それは我々の決定だけではどうにもならない。ル・マンに挑戦するための手順は知ってのとおりだ。これは、いま話題にすべきことではない」

[オートスポーツweb 2025年10月16日]

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