日本人の男性とトラブルになった外国人女性らが、男性に個人情報を提供した警視庁の行為は違法だとして、東京都に計440万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は16日、請求を棄却した1審判決を変更し、計66万円の賠償を命じた。萩本修裁判長は、男性が人種を理由に差別的な言動をとっていたことから女性側に不利益が生じることは容易に予見できたとし、情報提供は「違法」と判断した。
判決によると、原告は南アジア出身の50代女性と娘。2021年6月に都内の公園で当時3歳の娘が遊んでいたところ、男性から「自分の子どもが女性の娘から蹴られた」などと怒鳴られた。男性は女性に対して差別発言を繰り返し、駆けつけた警察官は双方から事情を聴いた。
男性は民事裁判を起こすためとして女性の情報提供を求め、警察官は女性から聞き取った氏名や住所、電話番号を教えた。男性はその後、差別的表現とともに女性の氏名や住所の一部を交流サイト(SNS)に多数投稿した。
1審・東京地裁判決(24年5月)は女性が情報提供を承諾していたとして女性側を敗訴としたが、高裁は「男性は乱暴な言動を繰り返し、攻撃性の高い人物だ」と指摘。承諾があったとしても情報提供は女性の不利益につながる恐れがあり、警察官は注意義務に違反したと認定した。情報が実際に悪用されたことを踏まえ賠償額を算定した。
母子側は警察官も差別発言をしたと主張していたが、判決は「証拠がない」と退けた。代理人の西山温子弁護士は「一部で違法だと認められたが、満足できるものではない」として、上告を検討するとした。
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警視庁訟務課の庄司博幸課長は「判決内容を精査した上で今後の対応を検討する」とコメントした。【安達恒太郎】
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