Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(2025年10月6日〜12日)は、完結が公表された伏瀬「転生したらスライムだった件」シリーズの最終巻にキャラクターたちのアクリルパネルやポストカードが付いた『転生したらスライムだった件23 描き下ろしアクリルパネル+ポストカードセット付特装版』(GCノベルズ)が1位で、通常版『転生したらスライムだった件23』(GCノベルズ)が3位と、11月末の発売前から上位を占めた。
参考:『転生したらスライムだった件』はなぜ成功したのか? なろう系で新たな地平を切り拓いた作風
『転スラ』と言えば異世界転生ファンタジーの大看板だ。最弱のスライムに転生したところから始まる下剋上的な成り上がりと、その過程で見せる強敵とのバトルや街作りから国作りへと至る社会経済史的な描写で読ませた。コミカライズやTVアニメ化、劇場映画化、舞台化といった他のメディアへの展開も活発で、発行元ではジュニアノベルズ化も行って読者層の拡大に余念がない。
2026年2月27日は新作劇場アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』の公開も控えていて、本編完結となっても余韻としてではなく一段の拡大を見せていきそう。ランキングで9位に入った『転生したらスライムだった件 番外編 〜とある休暇の過ごし方〜』(GCノベルズ)もその一例。暴風竜ヴェルドラが「獣魔術を開発したい」と言い出し、リムルやヒナタといっしょに魔法開発旅行に出かける話というから、愉快な道中記が期待できる。小説完結後の書き下ろしSSも収録しており、同時期に発売の完結編と合わせ読みたい1冊だ。
2位は、大森藤ノによる「ダンまち」シリーズ最新巻『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか21』(GA文庫)。主人公のベル・クラネルが憧れる少女剣士のアイズ・ヴァレンシュタインが、【ロキ・ファミリア】として赴いた深層60階層で仲間たちとともに壊滅したという知らせが届き、ダンジョンのある街・オラリオの冒険者たち全勢力を投入した救出作戦が決行される。5日はかかる60階層までの進行を1日に縮めるような無茶を、ある方法によって遂行するところがなかなかの見物。その道程で、シリーズに登場してきた冒険者たちがオールスターキャスト的に出演する。これで最終章への幕開けというのだからクライマックスはどれほどのものになるか? 興味が尽きない。
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この『ダンまち21』は、5位に入ったアイズやレフィーヤといった【ロキ・ファミリア】の側から描かれてきた外伝シリーズの最新刊、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア16』(GA文庫)と裏表の関係にある。これまでは外伝がやや先行して本編が追いつく感じだったが、両最新巻では本編でのベルの進行とは別の場所で繰り広げられていたレフィーヤや【ロキ・ファミリア】の一級冒険者たちの戦いが外伝で描かれる。合わせて読むことで起こっていたことの全体像が分かるという前代未聞の仕掛けに驚こう。
『ダンまち』関係では、8位にオラリオの様々なファミリアにスポットを当てていくシリーズの最新刊『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeアスフィ』(GA文庫)がランクイン。「万能者」として様々な魔法道具を開発し、【ヘルメス・ファミリア】の団長としてファミリアの統率と運営にも取り組むアスフィの冒険と過去が綴られる。この『episodeアスフィ』と本編、外伝の特装版、カレンダーをセットにした『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 21 小冊子付き特装版+外伝ソード・オラトリア16 小冊子付き特装版+ファミリアクロニクル episodeアスフィ 3冊セットカレンダー付き特装版』(GA文庫)も7位に入った。
ランキングに戻って、4位は十夜『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?9』(SQEXノベル)、6位は徒然花原作、木野咲カズラ漫画の『誰かこの状況を説明してください! 〜契約から始まるウェディング〜11』(アリアンローズコミックス)がランクイン。共に女性読者向けの作品で、『溺愛ルート』の方ではヒロインのルチアーナがエルネスト王太子から告白を受けて混乱する中、今度は幻想王子と呼ばれるカールと出会って起こる新たな騒動が描かれている。
10位は、ゆっくり実況者のめめんともり原著・監修で田口仙年堂が小説を書いた『めめんともりと奇妙なゲーム 【めめ村】緊急招集! 変な館に召喚された! 犯人はこの中にいる!?』(ファミ通文庫)。ゲームで遊んでいたゆっくり実況者のめめんともりが妙な館に召喚され、ゲーム仲間の「めめ村」メンバーたちと殺しもありの「人狼ゲーム」をさせられる。発売してすぐ重版が決まったことも含め、ゆっくり実況やゲーム実況やVTuberといったカルチャーが人気を得ている状況を、垣間見ることができる1冊かもしれない。
11位以下では、『キノの旅』が25周年を迎えた時雨沢恵一による『フロスト・クラック 〜連続狙撃犯人の推理〜』(電撃文庫)が18位に入った。海外に住む男のところに日本の若い警察官から電話がかかってきて、発生している連続狙撃殺人事件について推理して欲しいと頼まれるストーリー。全編がカッコ書きの会話で描かれ、解決したと思ったらそうはいかない展開に知らず引き込まれてしまうところに巧さがある。
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注目作では、31位のぽち作『デスゲームに巻き込まれた山本さん、気ままにゲームバランスを崩壊させる5』(電撃文庫)を挙げておく。川原礫『ソードアート・オンライン』のようにVRのデスゲームに巻き込まれながら、【バランス】というチートスキル無双を続ける女子プレイヤーを主人公にしたシリーズ。最新巻では、海外から凄腕のゲーマーがデスゲームを覚悟で参戦してくるなど、新展開があってゲームの世界が広がりを増していく。運営すら超越してヤマモトに【バランス】のスキルを与えた存在はいったい何者か? 最後まで追い続けたくなる奥深さを持ったシリーズだ。
※参考:Rakutenブックス「ライトノベル 週間ランキング」
(文=タニグチリウイチ)
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