
【写真】現場でキャメラマンの木村大作と意見を交わす藤井道人監督
本作は、過去を捨てた元ヤクザと目の見えない少年との十数年を描く、年の差を超えた友情と再会の物語。昨年に公開され数々の映画賞を総なめにした映画『正体』にて、第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督が脚本も手掛け、北陸の港町を舞台に描く完全オリジナル作品となる。
チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』(1931)を下敷きに発想された本作は、スターサンズの故・河村光庸プロデューサーが2022年の逝去前に遺した最後の企画。『ヤクザと家族TheFamily』(2021)、『ヴィレッジ』(2023)で河村プロデューサーと晩年を添い遂げた藤井道人が監督を担い、主演は『ヤクザと家族TheFamily』で河村プロデューサーと縁を結んだ舘ひろしが務めている。
そして本作の撮影に参加したのは、黒澤明監督の『用心棒』(1961)、『隠し砦の三悪人』(1958)などで撮影助手をつとめ、キャメラマンとして独立後は『鉄道員』(1999)など日本を代表する名作を手がけてきた巨匠・木村大作。新時代の若き才能・藤井監督と、日本映画界を長きにわたり引っ張ってきた重鎮・木村が手を組むという試みが話題を集めた。
名実ともに最も多作にして勢いのある藤井監督が今、大先輩である木村とタッグを組んだ理由には、『新聞記者』(2019)以来、一緒に歩んできた河村光庸プロデューサーとの別れがあった。藤井監督は「これから一人で何をやっていければいいんだろうと考えたときに、自分が経験してこなかったこと、食わず嫌いしてきたものが多ければ多いほど、それらに対して自分の中に批判や否定の感情が生まれてくるだろうと思ったんです」と語る。
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今回藤井監督にとって最大の挑戦となったのは、フィルムキャメラでの撮影。藤井監督といえばデジタルの申し子としても知られており、現場ではモニターから片時も離れず画面の隅々まで写るものを入念にチェックするほどだったが、本作では外部モニターは木村の意向で導入せず、撮影を実施。現場では、メインのAキャメラを構える木村の傍らで、Bキャメラのレンズを直接覗いて画を確認する藤井監督の新鮮な姿が目撃されていたという。
それぞれの映画人としてのスタイルやポリシーの違いにより、時には現場で激しく議論し合うこともあったという2人。藤井監督は、木村との仕事について「全部が新鮮でした」と述懐。「大作さんも僕以上に張り切ってくださって、たくさんかまされましたね。“映画というのはこういうものだ”みたいなものをたくさん教えてくださいました。脚本にもアドバイスをくださる時もあったり、久しぶりだなと感じることも多くて楽しかったです」と充実した撮影を振り返った。
そして「大作さんの好きなところは、俳優に対しては一切何も言わないところ。どうしても譲れない部分でぶつかってしまう瞬間もありましたが、ちゃんと監督としての立場を尊重してくださって。感謝しています」とリスペクトをにじませた。
映画『港のひかり』は、11月14日より全国公開。
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