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女優冨手麻妙(31)が、ショートドラマアプリ「FODショート」のオリジナルドラマ「背徳の館」で主演を務めることが話題になっている。近年流行中の“タイパ”を意識した、1話1分でめまぐるしくストーリーが動く縦型ドラマで、出演者の中で“唯一まともなキャラクター”のOLの双葉を演じる。貪欲な姿勢が実り、つかみ取った久々の主演作品で、さらに飛躍する強い意欲を語った。【野見山拓樹】
★“令和版冬彦さん”
スマホで“タイパ”よく見られる“令和版冬彦さん”だ。8月にFODショートで配信されたショートドラマで、ストーリーは冨手演じるOLの双葉の結婚相手でハイスペック医師の夏彦(佐伯大地)が究極のマザコンであることがわかり、家族からの嫌がらせやモラハラ、さらに不倫や略奪愛などさまざまな困難に襲われていく。
“冬彦さん現象”とも呼ばれ、92年の新語・流行語大賞にもなったTBSドラマ「ずっとあなたが好きだった」のようなドラマだといい、「昔の昼ドラのようなドロドロとした男女の関係を描いたドラマをやりたいと言われて、私も昼ドラが好きだったのでそれで引き受けた部分もあります。不倫とかやばい義理の母みたいなドロドロを詰め込んだ、タイトルのインパクト通りの作品です」と語った。
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新たなスタイルの作品でも、自信を持って送り出す。1話1分で全70話と短いストーリーがテンポよく進む構成で、「ちょっとでも目を離すと内容がわからなくなることもある」と語った。一方で「家のテレビでじっくり見るというよりは、通学中の学生さんみたいに何かしながら見るのがオススメです」と空いた時間で手軽に見られることも強調した。
★縦長画面のドラマ
縦長の画面に合わせて撮影するため表情や動作がより際立つという。1話1分と短く、テレビドラマや映画よりもストーリーの展開が速いことから「オーバー気味にリアクションをしたりすることはありました」。ショートドラマの出演は初めてで「今まで横画面の作品にしか出たことがなかった。縦型ドラマを見たこともなかったので不安はありました」と明かしたが、「縦型ドラマ専門の監督だったらお芝居も結構変わっていたかもしれませんけど、(映画やドラマの撮影をしている)山口(龍大朗)監督だったので『役者側はそこは考えなくていい』と言われて、いつも通りお芝居しました」と語った。
まだ幅広く知られていない作品のスタイルで、冨手自身もこれまでショートドラマに触れる機会はあまりなかったとしたが、「どの程度見てもらえるか分からなかったので、そこの期待やワクワクはあります」と可能性の大きさに期待をふくらませた。「ドロドロはしているけど、コメディーなので、分かりやすい話が続く。『あの時のあの人あんなこと言っていたよな…』とか『この人何を考えているんだろう…』とかそういう考えさせられる作品ではないので、気軽に見られると思います」とアピールした。
★受かると思わず
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地道に、貪欲にキャリアを築いてきた。09年にAKB48のオーディションに合格し、8期研究生として芸能活動を開始。しかし「『何が何でも芸能界に入るぞ!』という感じでもなく、受かると思わずにオーディションを受けたらたまたま入った感じ。正直よくわかんない状態でアイドルをしていた」と、加入からわずか半年で卒業。「簡単に言えばクビだった。でも、どうせ芸能界に入ったなら、じゃあ自分が好きな映画の世界でお芝居をやってみようと思って、そこで初めて(芸能界で生きていく)スイッチが入りました」と女優を目指す決心をし、長く地道な下積みが始まった。
★“恩師”へ直談判
下積み時代は小劇場で劇団員として演劇の仕事に励みつつ、「チケットを売らないといけなかったので、AKB48時代のファンをどうにか手放さないように、グラビアもやりながらファンの皆さんと会える機会を定期的に作っていました」と、5年ほどグラビアの仕事も行った。11年には日刊スポーツ後援の「フォトジェニックジャパンコンテスト」準グランプリに輝くなどしたが、「正直グラビアには全然興味がなくて、むしろ嫌いだった」。女優として活躍する未来を見据え、劇場を埋めるべくグラビアの仕事も懸命にこなした。
小劇場時代は映画監督で脚本家の森岡利行氏の劇団「STRAYDOG」に所属。「当時の森岡さんは本当に厳しくて、本読みの時点で台本をフルで頭に入れていないとすごく怒られた。でもそれって本当に大事で、中途半端なまま撮影するのっておかしいじゃないですか。その教えは今でも大事にしていて、基本現場には台本を持って行かず、すべて覚えて撮影に臨んでいます」。劇団の飲み会でも森岡氏の横を陣取って話を聞き込み、今に生きる強固な土台を築いた。
“恩師”への直談判が転機となった。「森岡さんからは自分がやりたいことを明確に持って、かなえるには自分から行動を起こすしかないと教わった」といい、「『愛のむきだし』のファンだったので、行くなら園さんしかいないと思った」と、映画監督の園子温氏のトークショーの会場へ足を運び、「自分を使ってください」と直談判。その熱意が買われ「新宿スワン」で園監督作品に初出演を果たす。17年の「アンチポルノ」では主役の座をつかむなど、園監督との出会いをきっかけに女優として花開いた。「今は言いづらくなってしまいましたけど」と前置きしつつ「園さんは恩師です」と言いきった。
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★いろんな色出す
今年は東海テレビ「最高のオバハン 中島ハルコ」などに出演し、来年以降も地上波ドラマや映画が複数決定している。時には狂気的な役も演じ、「最近はどの現場に行っても知っているスタッフさんがいる。自分が歩んできた道が分かりやすく見えるようになってきた」と安定して活躍の場をつかみ続けているが、「やっぱり貪欲さがなくなったらおしまいだと思っています」と、下積み時代から持つ貪欲さは忘れない。
「演じる役も、20代のころにやってきた狂気的な役から、今回でようやくまともで普通な役ができた。今は来た役を全力で何でもやって、いろんな色を出せるところを見せて、冨手麻妙という役者がいることをお茶の間に広める段階だと思っている。いずれは『冨手といえばこの役だよね』みたいな、個性を出す場を増やしていけるような役者になりたいです」
「たまたま入った」芸能界で、貪欲さを武器に着実にチャンスをつかんできた。「いつかベネチアの映画祭に出て、海外の人に自分が出ている作品を見てもらいたいです」。女優業を始めて以来掲げ続けた夢に向かって、ステップアップを続けていく。
◆冨手麻妙(とみて・あみ) 1994年(平6)3月17日生まれ、神奈川県出身。09年にAKB48オーディションに合格。研究生として活動も半年で卒業し、女優を目指す。13年「ハダカの美奈子」で女優デビューし、14年「後ろ向きの青」で映画初主演。17年「アンチポルノ」やNetflix「全裸監督」シリーズなどに出演。趣味はプロレス観戦。身長163センチ。
◆ショートドラマ スマートフォンなどの縦画面での視聴を想定して制作される、1話1分〜3分程度のドラマ。ストーリーが短いことから、会話のテンポやストーリーの展開の速さが特徴。中国では映画産業を上回る1兆円規模の市場に成長していると言われるほど大流行中で、日本でもTikTokやYouTubeショートなどで若者を中心に人気を獲得しはじめている。
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