「さんざん煽っておいて」ミセス“重大発表”に批判の声…“音楽性以外”がいつも注目を集めてしまう構造的な問題

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2025年10月20日 16:20  女子SPA!

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画像:株式会社WOWOW プレスリリースより(PRTIMES)
10月16日に公式YouTubeで生配信を行ったMrs. GREEN APPLE。その前から「重大発表をする」と予告していたことから、ファンの間では“解散”や“活動休止”を心配する声が挙がっていました。しかし、実際には今後の活動予定の報告だったことに、賛否両論の声が広がっています。

◆「フェーズ2」完結と「フェーズ3」始動の発表

主な要点は3つ。2025年12月31日をもって「フェーズ2」を完結させること。2022年3月から始まった「フェーズ2」が今年いっぱいで終了し、来年1月1日から「フェーズ3」が新たにスタートすること。そして、来年の夏には1か月間の夏休みを取ること。以上の内容でした。

この内容に対し「さんざん煽っておいてこれかよ」と多くの人が呆れる声を上げました。中には、心配したファンの心を「傷つけた」と怒りを露わにする声もあったほど。

アーティストがSNSなどで話題を盛り上げつつサプライズ発表をするのは、今に始まったことではありません。例えば、2018年にゆずが同じように「近日中に重要なお知らせがある」と予告した際には、解散などのネガティブな話題ではないかと心配するファンが出ました。結局は弾き語りのドームツアーのお知らせであり、一部でプチ炎上したこともありました。

SNSやネットニュース全盛の時代で、とにかく話題にならなければならないアーティストたちが置かれた世知辛い状況は、ミセスの場合も変わらないのです。

ただし、ミセスの活動やメディアへの露出を振り返ると、こうした構造的な問題が浮き彫りになっているため、世間の声が厳しくなっているのではないでしょうか。

◆「話題性」を武器にした露出戦略

その一因として挙げられるのが、彼らの音楽活動が、検索ワードの上位にとどまり続けるための“手段”のように映ってしまっていることです。

たとえば、新曲やタイアップが矢継ぎ早に発表されるたびに、「Mrs. GREEN APPLE」や「大森元貴」といった名前が連日のようにメディアに登場する。すると、1日に何度も彼らの名前が目に留まるような環境ができあがり、「ミセスが常に何かをしている」という印象を与えるニュースが量産され、拡散されていく。

その結果、特に熱心なファンでなくとも、朝の情報番組やSNSなどを通じて、日常的に彼らの話題に触れる状況が生まれるのです。

こうした露出の積み重ねは、結果としてMrs. GREEN APPLEの「国民的人気」を押し上げる要因の一つとなっているのです。情報が消費されるスピードが加速する現代において、話題を切らさずにメディアへ登場し続けるこのプロモーション戦略は、確実に成果を上げていると見ていいでしょう。

◆“重大発表”の皮肉と楽曲の評価問題

しかし、このようなプロモーションには落とし穴があります。それは、彼らにまつわるあらゆる出来事を、さも“重大”なものとして宣伝し続けなければならないという“辛さ”です。ほとんど同じことをしているのに、わざわざ「フェーズ」という言葉を使って、あたかも局面が変わったかのように見せる必要があるのも、その表れなのかもしれません。

そして、何よりも皮肉なのは、彼らのニュースがさも“重大”であればあるほど、彼らが発信する楽曲自体の印象が薄れていくという現象が起きています。バズればバズるほど、楽曲の評価や魅力よりも彼ら自身の存在や言動に対する賛否が中心になります。

たとえば、MVの中での人種差別的な表現が問題となった「コロンブス」に関しても、議論は音楽そのものではなく、表現の適切性についての批判に集中しました。今回の「重大発表」についても、ある意味ではいつものことだと言えるでしょう。

Mrs. GREEN APPLEはこうした独特なアプローチで、頂点に上り詰めたアーティストなのではないでしょうか。結果として、一にも二にも、アテンションを獲得すること。だからミセスは極めて如実に現代を象徴するアーティストなのです。

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

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