変則カレンダーを過ごしたTCRオーストラリアの王者ジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)が輝きを放つ オーストラリアのザ・ベンドに続くアジア・フライアウェイの2戦目、10月17〜19日に韓国のインジェ・スピーディアムで開催されたFIA TCRワールドツアー第6戦は、グリッドにTCRアジア・シリーズが加わるなか変則カレンダーを過ごしたTCRオーストラリアの王者ジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)が輝きを放つ。
ペナルティ絡みの予選でレース1のポールポジションを得た豪州シリーズ連覇のチャンピオンは、かつてのシドニーでウィル・ブラウンがダブルウインを達成してから約2年後に、ワールドツアー初優勝を飾ったオーストラリア出身ドライバーとなった。
またシーズン開幕の惨憺たるスタートから挽回を図りたいヒョンデ陣営は、新たなホモロゲーションモデル投入も功を奏し、レース2でミケル・アズコナ(BRCスクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN EV TCR)が待望の今季初優勝、そして週末を通じ最速ドライバーのひとりとして君臨したリンク&コー・シアン・レーシングのテッド・ビョーク(リンク&コーTCR FL)が、最終ヒートで圧勝を飾りランキング2位に浮上している。
2025年シーズンの開幕戦だったメキシコシティ、アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスの標高の高さにより、エンジンパワーがまったく発揮できず大不振に陥っていたヒョンデ陣営は、この母国ラウンドの週末に向け新たなウェポンを用意。大型ターボチャージャーと出力レベルの向上を特徴とする新たなホモロゲーションモデル『エラントラN EV TCR』を導入した。
ミドルネームの“EV”はエボリューションの意と推察されるが、この新型では出力レベルが前モデル比で97.5%から100%に向上。その他の性能バランスは従来モデルと同様で、最低重量1275kg、車高は80mmとされ、トップカスタマーたるBRC陣営が3台を走らせることに。それ以外のサテライト扱いのチームは、旧ホモロゲの従来モデルで週末に臨んだ。
するとこの新型モデルが早速のスピードを披露し、走り出しのシェイクダウン・セッションではネストール・ジロラミ(BRCスクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN EV TCR)が最速。続くFP1では今季ヨーロッパ・シリーズを戦ったジュヌイ・パク(ソリテ・インディゴ・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)がヒョンデのトップ4を牽引していく。
ここへ立ちはだかったのがリンク&コーのビョークで、最終FPで首位に立つと、続く雨天の予選でも1分51秒698で最速ドライバーとなる。しかし全ドライバーで唯一1分52秒の壁を破り、2番手のバカンに0.5秒の大差をつけたビョークだったが、最初のQ1でTCRアジア勢のラインバート・G・ディワ(ユーラシア・モータースポーツ/ヒョンデ・エラントラN TCR)と接触。スチュワードはビョークに3グリッド降格のペナルティを科し、バカンが初戦ポールポジションを譲り受けた。
これで視界良好となったバカンは、まだ路面が湿った状況のなか、アジア登録の1台を除く全ドライバーがスリックタイヤを装着するなか、スタートからチェッカーフラッグまでフィールドをリード。予選の不振から挽回し、6番グリッドから猛追したエステバン・グエリエリ(GOATレーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)を抑え込み、約6秒差のポール・トゥ・ウインでワールドツアー初制覇を成し遂げた。
「こんなミックスコンディションでのレースはつねにリスクを伴う。後ろに彼らがいると、必要以上にリスクを負ってしまったかもしれない。だからギャップを作りたかったんだ」とレース戦略を振り返ったバカン。
「でも中盤はタイムをセーブし始めた。すると突然、エステバン(・グエリエリ)に7秒も差を詰められたんだ!」と7周目には8秒近くまで後続との差を広げた豪州2冠王者。「かなり差があるように見えたけど、レース後半は猛追された。エステバンには失うものが何もなかったんだ! かなりプレッシャーが掛かったけど、無事にゴールラインを越えられたときはホッとしたよ」
最終的にはふたたび6秒近く突き放されたグエリエリも「予選ではどういうわけか、Q2でのペースがまったくなかった」とグリッド争いを敗因に挙げた。
「だから良い結果を出そうと必死だったけど、路面が滑りやすかったから激しい接触を避け、マシンをコントロールしようと必死だった。テッド(・ビョーク)の後ろにぶつけたと思う。正直、あそこ(スタート後のターン1)でどれだけのことがあったか覚えていないよ!」
明けた日曜のレース2は、アスコナがリバースグリッドのポールポジションからスタートし、セーフティカー介入によって築き上げていた6秒差を帳消しにされたにも関わらず、終始トップを快走。今季初勝利を挙げることに。
一方の最終ヒートではリンク&コー陣営が他を圧倒し、僚友ヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR FL)を従えたビョークがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
これでスタンディングも首位のエルラシェールに続きビョークが2位に浮上し、その3ポイント差にグエリエリが続くオーダーに。このままアジア大陸を移動したワールドツアーの一行は2週間後の11月1〜2日に中国の株洲国際サーキットで第7戦を争い、最終戦マカオのギア・サーキットで雌雄を決する。
[オートスポーツweb 2025年10月20日]