アイドル、俳優、ランウェイモデル…Snow Manラウールが肩書きに収まらないスタイルを確立するワケ

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2025年10月21日 08:50  女子SPA!

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ラウールInstagramより
 2025年9月13日から配信されている『ラウール On The Runway』(Prime Video)は、単なるドキュメンタリー映像ではない。本作終盤、ミラノのファッションウィークに挑戦する中で、これはランウェイモデルとしての自分の夢を叶える作品ではないと明言した。

 そしてラウールはこう言語化した。「自分のできること、幅みたいなものを証明してるような、そんなドキュメンタリー」。この言葉をさらに咀嚼するなら、これは、ラウールというモード、ラウールというスタイルが誕生することを「証明」する記録なんだと。

 アイドル、俳優、ランウェイモデル。本作ではそれらすべてが彼の中でどう流動するのか? 男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

◆オフランウェイで醸すセレブリティ感

 Snow Manの最年少メンバーであるラウールが、単身で自炊などもしながら、ファッションモデルとしてヨーロッパのランウェイを目指す。聞いただけでゾクゾクする。

 Prime Videoで配信中のドキュメンタリー『ラウール On The Runway』は、ラウールがミラノのファッションウィーク(日本ではミラノコレクションと呼ばれるが、正式名はミラノ・モーダ)に出演するまでの600日間の足跡に密着する。

 日本では国民的アイドルグループの一人。でも世界では誰も自分のことを知らないとラウール本人はカメラの前で言う。初陣は2024年1月、ミラノのファッションウィーク。ドルチェ&ガッバーナ秋冬コレクションの招待者(セレブリティ)の一人として参加することで現地の舞台に触れる。

 会場前に車で乗り付ける。ストライプのジャケットスタイルとサングラスで軽やかに武装。まだランウェイモデルではないが、オフランウェイでも醸す圧倒的セレブリティ感は、初陣とは思えない。

◆ラウールという新たなモード

 会場に入ってすぐブランドロゴをいただいて、スチール撮影に応じる。カメラマンと英語で一言二言交わしてポージング。シャッター音とともにエレガントな一枚が、画面上にインサートされる。

 さらにジョルジオ・アルマーニのショーに参加。今度はレザージャケットでオフランウェイの被写体になる。世界のセレブリティが並ぶフロントロウ(最前列)に座る。初陣から着実にステップアップしている。ショーの後、ラウールは順番待ちをしてジョルジオ・アルマーニとツーショットで記念撮影をする。

 会話音声はないが、笑顔のアルマーニとも何か言葉を交わしている。一代で世界的ブランドに育て上げたジョルジオ・アルマーニは、モードの帝王と称された。ランウェイモデル修業時代を追う本作は、マッチョな帝王を前にした瞬間、ラウールという新たなモード誕生前夜が立ち上がる記録映像になる。

◆可憐で華麗な「スタイル」とは?

 ファッション用語としてのモードとは、「最先端の流行」を意味する。他にも、流儀や表現方法などの意味があり、それらをひっくるめて「スタイル」と言い換えることができる。ラウールというモードを作ることで、それが毅然としたスタイルになる。では、そのスタイルとは?

 モードを作るのは至難の技でもある。コム・デ・ギャルソンのデザイナーである川久保玲でさえ、それまでのモードの常識を覆した1980年代前半は、批判されることも多かった。

 モードを作ることはそれまでの世の中にはなかった価値観を生み出すこと。たとえ生み出せてもそれがすんなり世の中から理解され、受け入れられるとは限らない。時間はかかるが、でもだから不屈の挑戦を続ける。

 ランウェイモデルを目指すラウールもまた苦戦を強いられる。何とかパリのモデル事務所に所属が決まり、何とかキャスティングまでくぐり抜ける。本作のカメラはラウールにとって初のブランドショー出演になったMaison MIHARA YASUHIROのキャスティングからフィッティングまでの流れを路地を挟んだ位置から静かに見つめた。

 ショーを終えたラウールに改めてカメラを向ける車内インタビュー映像では、緊張と興奮を飲み込んだ先で噛み締める、可憐で華麗な表情を垣間見せ、そこに独自のスタイルが浮かんでいたように思う。

◆ドラマ『愛の、がっこう。』脚本家も認めた才能

 MIHARA YASUHIRO春夏のショーに出演するまでの期間、大きな挫折を味わったラウールがセンシティブになっている様子をカメラは克明に記録している。その期間を乗り越えた車内インタビューで彼が「あぁ、これ、まだやめれねぇな」とグッと込み上げるものを抑えていた。一瞬、泣いているのかと思った。

 可憐で華麗なエモーションは、木村文乃との共演ドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系、2025年)で演じたホスト・カヲル役の多感な表情をどこか思わせた。実際、ラウールはこの後、(モデルとして)ミラノのファッションウィークへの挑戦と『愛の、がっこう。』の撮影を並行する。

『愛の、がっこう。』脚本家・井上由美子は、女子SPA!掲載インタビューでMIHARA YASUHIROのショーを動画で偶然見ていたと語り、銀テープが口元に付着するというハプニングをもろともせずランウェイを歩いた才能が「魔王のお散歩みたい」で、「別人になることを楽しめる方」と評した。
『愛の、がっこう。』最終回放送後の今、改めてこのドキュメンタリー映像を見たとき、ランウェイモデルとしても俳優としてもすべての活動がラウールの中で連動し、流動していたことがわかる。

 そうした流動感こそ、ラウールというモードであり、固有のスタイルである気がする。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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