『盤上の向日葵』 ©2025映画「盤上の向日葵」製作委員会坂口健太郎と渡辺謙の魂の演技バトルで魅せるヒューマンミステリー『盤上の向日葵』がいよいよ10月31日(金)より全国公開。先月開催された釜山国際映画祭のワールドプレミアでもひときわ大きな歓声を浴び、屋外メイン会場に集まった4,500人もの観客を魅了しスタンディングオベーションを受けた本作。
先日行われた完成披露試写会でも「将棋の駒から男の生き様がみえてくる。重厚な人間ドラマ」「坂口健太郎くんの表情、瞳に何度泣かされたか分からない」「確かに本当に心が震えた。役者さんも音楽もすばらしい。目が離せなかった」と感動の声が続出。今回は、脚本も手がけた熊澤尚人監督の言葉をもとに、そんな本作の魅力を紹介する。
ある殺人事件の容疑者となった桂介(坂口健太郎)は、天才棋士として輝かしい活躍をみせていたが、実は幼い頃から酒とギャンブルに溺れる父・上条庸一(音尾琢真)と極貧生活を送る壮絶な過去を歩んできた。
しかし、そんな“闇”に満ちた人生の中でも、桂介が唯一熱中していた将棋の才能を見抜き、親のように温かく迎え入れた唐沢光一朗(小日向文世)や、桂介に静かな愛を注ぐ宮田奈津子(土屋太鳳)の存在によって、どん底で孤独な桂介の人生に“光”が差す。
そして、賭け将棋の真剣師・東明重慶(渡辺謙)との出会いが桂介の人生にかつてない情熱、また深い絶望をもたらすことになる。
やっとの思いで幸せを掴んだかと思いきや、父親が自身の元に金をせびりにきたりと思わぬ出来事が起こり人生を踏み躙られる…。次々と降りかかる絶望が自分の人生をどん底に突き落とそうとも、運命に抗い“生き切る”ことを貫く桂介の姿は私たちの心を激しく揺さぶる。
熊澤監督は、運命は自らの手で切り開けるが、血筋や遺伝子といった宿命は自分ではどうにもならないものであり、「そういう宿命に負けてほしくない、と思いながら映画を撮っていることが多いかもしれません」と語っている。
「ふり返ってみると『ユリゴコロ』も殺人者の血が流れている子どもが宿命を乗り越えていく物語でした。この『盤上の向日葵』の桂介も血筋や遺伝子という宿命が降りかかります。そして、そういった宿命は、実は観客の生活とも地続きでもあって、いまの日本が抱える貧困にも繋がっている。困難な状況であっても負けずに生きる選択をしてほしい、という願いも込めています」と話しており、桂介が自分ではどうにもならない運命に翻弄されながらも、生き切ろうとする姿は私たちの背中を押してくれるはずだ。
さらに、桂介が一歩ずつ踏み出しながら生きることができたのは、彼が決して手放さなかった“将棋”の存在も大きく、自分にとって大切なものを見つけて打ち込むその姿は、共感を呼ぶにちがいない。
そんな桂介の人生に欠かせないのが、賭け将棋の真剣師・東明重慶との出会いだ。孤高の存在として将棋界を歩む東明は、桂介の才能にいち早く気づき、その姿に自分自身を重ね合わせ、ただの傍観者ではなく桂介の人生に積極的に関わろうと、何度も彼のもとを訪れるようになる。
桂介にとって重慶は将棋に勝つ技術を教わった師匠でもあり、毎日会うような“父親”のような存在に感じたり、将棋だけでなく人生についても多くの示唆を与える存在であったりと、単なる将棋の師匠という枠を超えた、彼の人生における重要な人物でもある。
観客はまた桂介と重慶の関係性を通じて、自分自身の人生における特別な存在を再確認することにもなるだろう。
『盤上の向日葵』は10月31日(金)より全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)