スーパー耐久第6戦岡山でデビューを飾るTGRR GR Yaris M conceptはまだ「はじめの一歩」。今後S耐挑戦を経て“公開開発”を目指す

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2025年10月25日 13:30  AUTOSPORT web

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TGRR GR Yaris M concept 2025スーパー耐久第6戦岡山
 10月25日、ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第6戦『スーパー耐久レースin岡山』が開催されている岡山県の岡山国際サーキットで、トヨタ自動車は今回からST-Qクラスに参戦している32号車TGRR GR Yaris M concept(モリゾウ/佐々木雅弘/小倉康宏/石浦宏明)についての説明を行った。

 1月の東京オートサロンでその参戦が発表され、大きな注目を集めていたTGRR GR Yaris M conceptは、GRヤリスに開発中の直列4気筒2リッターターボのG20Eエンジンを搭載し、さらにミッドシップ四駆化するという意欲的な車両だ。オートサロンでの発表時に比べ大柄なフェンダーを搭載し第6戦岡山に登場したが、コンパクトなGRヤリスにも関わらずリヤにはG20Eエンジンをはじめとしたドライブトレーンがギッシリと詰め込まれている。

 すでにノーマルの時点でも完成度が高く、WRC世界ラリー選手権をはじめとしたラリーフィールドでも華々しい成績を収めているほか、スーパー耐久ST-2クラスでも多くの勝利を飾っているGRヤリスだが、なぜ“ミッドシップにするのか”というのはファンにとっても気になるところだ。

 GRヤリスは、その活躍が示すとおりTOYOTA GAZOO Racingが進める『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』の象徴とも言えるクルマだ。WRCを制するべく生まれたバックボーンをもっているが、WRCに合わせコンパクトハッチを前提としたフロントエンジンの四駆車両として誕生した。

 ただ、『止まる・曲がる・走る』という機能がすべてフロントに集約されており、フロントタイヤへの負担が大きくなっている。スーパー耐久ST-2クラスでもピットイン時はフロントのみ交換で作業時間を短縮するのが常道となっているが、フロントタイヤの摩耗がリヤに比べかなり大きくなるほか、アンダーステアが生まれる。モリゾウが「神に祈る時間」と称するステアリングを切っても曲がらない状態が生じてしまう。

 この「神に祈る時間」を無くすことがミッドシップのGRヤリスというアイデアに繋がった。その始まりはなんと2021年のスーパー耐久までさかのぼるという。2023年には、フィンランドで1.6リッターエンジンを搭載したミッドシップの試作1号車が完成。モリゾウと佐々木とエンジニアで試走した際に、ニュルブルクリンクを戦うために2リッターエンジンの必要性が発案された。


●速さはみせるもポテンシャルはその先。仕上がりはまだ「50点もいっていない」

 こうしてGRヤリス Mコンセプトは複数の試作車を経て、改善を行いながら2025年1月の参戦発表に至り、7月の第5戦オートポリスでのデビューこそならなかったが、第6戦岡山からTGRR GR Yaris M conceptとして登場することになった。ミッドシップ化にともない重量バランスや駆動力のバランスを改善し、リヤへのドライブトレーンや冷却等もあり、フェンダーも拡大された。

 タイヤマネージメントや旋回性の向上を狙ったほか、G20Eエンジン、さらにこれにGRヤリスやGRカローラで鍛えてきた可変四駆システム『GR-FOUR』、さらにDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)が組み合わされ、ジェントルマンドライバーであるモリゾウや小倉康宏にも乗りやすいクルマになった『Mコンセプト』の『M』はミッドシップ、モリゾウの頭文字からきているという。

 ただ、このミッドシップ+GR-FOURだが、「お客さまが乗って楽しいクルマを作るためのひとつの手段がミッドシップです。皆さんと一緒に走らせながら開発していく“公開開発”です」というのは高橋智也GRカンパニープレジデント。まだミッドシップ開発のはじめの一歩の段階であり、スーパー耐久という場を使って、ファンに開発の観てもらいながら、将来の市販車に結びつけたいという考え方だ。

 現状ですでにST-2クラスを上回るタイムこそ出ているものの「僕の中ではまだ50点もいっていないくらい。まだはじめの一歩ですし、タイムも大目にみてほしいくらいです」というのは開発を担ってきたひとりである佐々木。

「いろんな条件や路面などを走ることで、ここは良い、悪いということを足しては引いてを繰り返しています。これまで試作車も何台も作っていますし、最初は3気筒の1.6リッターで始めて、足りないところを補ってきて、ようやくみんなと同じサーキットで、迷惑をかけずに走れるようになった状態です」とまだまだ開発初期の段階であると語った。

 新エンジンも2リッター4気筒ターボで400馬力以上を目指しているものだが、こちらもまだまだ課題が多い。ミッドシップに積むことでの冷却も課題のひとつだ。ただこうして試作のような車両、エンジンを公の場で鍛えられることこそ、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racingの意義であると佐々木は強調する。

「こういう開発は以前のトヨタでは無理でしたし、こうして試作車を公開開発のようなかたちで鍛えることができるのは、マスタードライバーであるモリゾウさん、ROOKIE Racingがあってこそできることだと思っています。その中で開発ドライバーをやらせてもらえるのは僕も嬉しいことですし、だからこそ僕の全精力を注いで、センサーを研ぎ澄まして乗りたいと思っています」と佐々木は語った。

[オートスポーツweb 2025年10月25日]

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