連載コラム【トムス吉武エンジニア/レースの分岐点】 スーパーGTのGT500クラスで、2023年、2024年とタイトルを連覇し、今年は3連覇に挑んでいるTGR TEAM au TOM’S。2025年は、1号車au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)の吉武聡チーフエンジニアに、特別コラムを寄稿していただき、毎戦レースのターニングポイントとなった部分を中心に振り返ります。
本来、ピット位置が昨年のランキング順のため、ウエットの予選は1号車が先頭でコースインするのがセオリーです。しかし今回はセッションが始まる直前、14号車ENEOS X PRIME GR Supraや38号車KeePer CERUMO GR Supraがウエットに交換したのを確認してから1号車も交換。その間にQ2が始まり、10台中8番目のコースインとなってしまいました。
しかし、3番手を走る僚機Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京選手)とのバトルが白熱。僕は両方の無線を聞いていたのですが、笹原(右京)選手は「ペースが苦しくなってきた」、坪井選手は「全然ペースがいいから前に出られる」という話でした。それでも、1号車には燃料リストリクターのハンデがあるので、GT300をうまく使って間合いを詰めつつ第1ヘアピンで飛び込んだのですが接触してしまいました。
とくに第2スティントで1号車と37号車が追い上げていた場面では、前を走る38号車KeePer CERUMO GR Supraと19号車WedsSport ADVAN GR Supraに引っかかり、大きくペースを落としました。
この場面で感じたのは、今回の大会はGRスープラ同士の戦いが前提という雰囲気があり、トヨタ内での順位争いに意識が向きすぎていたということです。その結果、100号車 STANLEY CIVIC TYPE R-GTや16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの追い上げに十分に対応できず、最終的にはホンダ勢に表彰台を独占されてしまいました。
1号車はランキング首位を維持できているので、最終戦はシンプルに優勝を狙いたいところです。トヨタ勢は同じトムスの37号車も含めて複数台に可能性がある一方、ホンダ勢は100号車のみに権利があります。さらに、前戦SUGOから速さを見せている64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTも要警戒なので、ホンダ陣営がどのような戦いをしてくるのか気になっています。