山田洋次監督、東京国際映画祭特別功労賞授与され日本映画黄金時代語る…木村拓哉大きな拍手促す

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2025年10月29日 15:46  日刊スポーツ

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<センターピース上映>で特別功労賞授与された山田洋次監督は花束を手に話をする(撮影・増田悦実)

山田洋次監督(94)が29日、ヒューリックホール東京で行われた、東京国際映画祭センターピース作品に選ばれた新作映画「TOKYOタクシー」(11月21日公開)公式上映の壇上で、同映画祭から特別功労賞を授与された。客席から拍手が起きたが、出演の木村拓哉(52)が「拍手、小さいですよ」と促すと、拍手はさらに大きくなった。同監督は「長い間、割に長生きしたから、たくさん映画も撮ってきてしまった。そのことで、褒められていただいたと、戸惑いながらも思っております」と感謝した。


山田監督は、安藤裕康チェアマンから「日本映画の生き字引」と評されたことを受ける形で、東大法学部を卒業後、1954年(昭29)に助監督として松竹に入社した当時の日本映画界について「今、思うに助監督として撮影所に入ったのは70年前。その頃の日本映画は充実していた。日本映画の黄金時代だと思います」と評した。また、東京国際映画祭が、アジアを代表する国際映画祭であることを踏まえてか「まだ、テレビがそれほど普及していなかったし、アジア諸国…中国も韓国も、映画らしい映画は作っていませんでした。だから、映画には多くの観客が集まった…娯楽の王座と言って良かった。今、思うと豊か…とってもゆとりがあったなと思います」と、日本映画界が、アジアをリードしていたことも紹介した。


その上で「その時代に比べると今の映画人は厳しい状況で撮っている。時々、かわいそうだなと思います」と、日本映画界の現状を憂えた。「ですから、そういう時代であるからこそ映画祭が催され、映画って、なんてすばらしいんだろうと考え、鑑賞する催しがあるのを感謝します。来年、再来年も大きな実りを与えてくれるであろうことを、期待してやみません」と東京国際映画祭の今後の果たす役割に、大いに期待を寄せた。


「TOKYOタクシー」は、24年に日本アカデミー賞外国作品賞を受賞した22年のフランス映画「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン監督)が原作。さえない日々を送る個人タクシー運転手が偶然、乗せた人生の終活に向かうマダムと出会い、1日、旅をする姿を描いた。木村は個人タクシー運転手の宇佐美浩二、倍賞千恵子(84)は85歳の高野すみれを演じた。


センターピース作品とは、37回を迎える前回の同映画祭で初めて設けられた。オープニング作品、クロージング作品と並ぶ目玉作品として映画祭の中盤を盛り上げる大作を上映し、24年は最初の作品として米映画「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」(リドリー・スコット監督)が選ばれた。


◆「TOKYOタクシー」 タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、ある日、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を、東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることに。すみれが浩二に「東京の見納めに寄りたい場所がある」と願い出たことから、2人で彼女の思い出の地を巡ることに。会話を交わし打ち解け、次第に心を許していく中で、すみれは自らの壮絶な過去を語り始める。たった1日の旅が2人の人生に想像もしなかった“奇跡”をもたらしていく。撮影は2月から4月まで東京近郊で行われ、倍賞が諏訪さくらを演じた山田監督の代表作「男はつらいよ」シリーズの舞台・柴又でも行われた。倍賞と木村の共演は、2004年(平16)のスタジオジブリのアニメ映画「ハウルの動く城」以来21年ぶり。山田組への参加は、倍賞は19年「男はつらいよ お帰り 寅さん」以来6年ぶり、木村は06年の主演映画「武士の一分」以来19年ぶりとなる。

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