レギュラーシーズン王者ウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、競合するライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を刺し切りフィニッシュ ポストシーズンもいよいよ大詰め。最終3戦“Round of 8”の天王山となった2025年NASCARカップシリーズ第35戦『Xfinity 500(エクスフィニティ500)』は、渾身のドライブで逆転劇を飾ったレギュラーシーズン王者ウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、競合するライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を刺し切りフィニッシュ。
これで最終“Championship 4”への挑戦権を獲得し、ランキングで優位にいたクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が7位で脱落。代わって5位に入ったカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が最後のひと枠を手にした。
マーティンスヴィル・スピードウェイで争われたチャンピオンシップタイトル挑戦権を賭けた一戦は、走り出しのフリープラクティス(FP)からヘンドリック・モータースポーツ(HMS)陣営が先行。この週末に勝たなければ勝ち進むことができないチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がまずは先手を獲り、続く予選では同地2勝の実績も誇るバイロンがポールウイナーに輝いた。
「うれしいけれど、まだ意味はない」とここでのポールポジション獲得はこれが初となったバイロン。「でも、いい結果だ。ここに来るまでしっかり準備してきたし、自分のレースカーにもかなり良い感触を持っている。他にも本当に上手いドライバーが何人かいると思うが、今のところ順調だよ」
そのバイロンは自身の言葉どおり、最前列のスタートから決勝ステージ1を制覇し、130周中125周をリード。その後も“2タイヤ”だったマイケル・マクドウェル(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を抜き去り、ステージ2の全130周も制圧する。
その流れを変えたのが242周目のコーションで、ここでリードラップドライバーのひとりだったブレイニーが245周目にピットインし、続く272周目のリスタートではタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)の隣から主導権を奪い、そのまま457周目までレースを掌握していく。
迎えた運命の瞬間は各ドライバーともロングランのスティント終盤に差し掛かるタイミング。わずかにタイヤのドロップ傾向が見られた首位ブレイニーの12号車に対し、ターン1で照準を定めたバイロンはマスタングのインに突っ込み、上段に押し出すように猛然と追い抜きを敢行。
成す術なく反撃の機会を逸したブレイニーは、最後の44周を追走したものの0.717秒差で必達の勝利を逃し、2022年に現行Next-Gen規定が導入されて以降初めて、過去3度のチャンピオンシップを制したチーム・ペンスキーが最終ステージ進出の権利を逃す結果となった。
「最後のイエローコーションが出る前のロングランで、ウイリアム(・バイロン)に抜かれた瞬間が痛恨だった」と、勝者を祝福するためヴィクトリーレーンへ出向いたブレイニー。
「リヤがタレ始めていた頃で、なんとかしようとしたがルーズになった。ああ、まさに衰え始めたところだったんだ。守ろうとしていたが、彼のあのダイブは責められない。僕は勢いを失っていた。正直に言って、僕も同じことをしていただろう」
最終盤にはカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)によるこの日3度目のスピンでコーションの機会が巡ってきたが、最後の11周は誰にも挑戦されなかったバイロンのペースには、ブレイニーも素直に称賛の言葉を残した。
「最後のリスタートは悪くなかった。上段に残ってスピードを維持しようとしたが、彼はいとも容易くボトム側で僕の速度を超えていった。本当にスゴかったね」と、過去2年は秋のマーティンスヴィルで連勝を記録していたブレイニー。
「チャンピオンシップ4でフェニックスに行けないのは残念だ。シーズンを力強く締めくくれるようベストを尽くすが、12号車のクルーたちを誇りに思う。彼らは持てる力を100%出し切った。これ以上望むことはない。今夜は充分ではなかったが、ただ前へ進むだけだ」
一方、最後の重要な局面で勝利をたぐり寄せたバイロンは、満面の笑みで「いやぁ、言いたいことが山ほどある」と振り返った。
「物事はうまくいくものさ。神様は本当に何度も忍耐力を試される。僕たちも試されてきたから、信じられないくらいだ。息が切れそうだし……ファンの皆、来てくれてありがとう。素晴らしい観客だった」と歓喜に浸るバイロン。
「かつて僕もスタート/フィニッシュラインのすぐ前で、初めてNASCARのレースを観戦したんだ。ああ、本当に感謝しているし、家族に会えるのが楽しみ。この勝利を心から祝いたい。もちろんフェニックスに行くよ。そこで全力を尽くして頑張るしかないね!」
そして3位だった僚友エリオットや、同8位だった現シリーズチャンピオンのジョーイ・ロガーノも敗退を喫するなか、トラブルのないレースで5位を守ったラーソンが最後の枠を奪い「ある程度、混乱から抜け出せたと思う。ああ、良かったよ」と安堵の声を漏らした。
「ウイリアム(・バイロン)のパフォーマンスは素晴らしかった」と、これでフェニックスでの最終チャンピオンシップ4はヘンドリックvsジョー・ギブス・レーシング(JGR)の各2台による対決構図へと持ち込んだラーソン。
「12号車(ブレイニー)がレースをコントロールするようになったとき、彼を倒すのは本当に難しいだろうと思ったからね。でも24号車(バイロン)はリスタートで素晴らしい仕事をし、ポジションをキープし続けた。あのロングランで彼を抜くだけの実力があったんだ」
併催されたNASCARクラフツマン・トラックシリーズ第24戦『Slim Jim 200(スリム・ジム200)』は、コーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRDプロ)が両ステージ制覇の完全勝利で今季11勝目を飾る結果に。
同じく併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第32戦『IAA & Ritchie Bros.250(IAA &リッチー・ブラザーズ250)』は、テイラー・グレイ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)がシリーズ初優勝を飾っている。
[オートスポーツweb 2025年10月30日]