「何にでも怒り狂う母親」の苦しみとは? 松本穂香が考えた“厄介な人”の本当の正体

0

2025年10月31日 16:30  女子SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

女子SPA!

写真
 数々の映画やドラマに出演している女優の松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが、現代のロンドンを舞台にしたヒューマンドラマ『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』について語ります。

◆限界を迎えつつある家族に訪れた出来事

 今回、わたしがご紹介させていただく映画は『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』です。

 舞台はイギリスのロンドン。主人公のパンジーは、配管工の夫カートリーと、無職の息子モーゼスと暮らしていた。

 とにかく何にでも文句をつけるパンジーと、それに伴って心を閉ざしていくカートリーとモーゼス。対照的に、パンジーの妹シャンテルは2人の娘を持ち、笑顔溢れる楽しい家庭を築いていた。家族が限界を迎えつつある頃、母の日がやってくる。

◆息苦しさを感じるほどの理不尽

 いや〜むずかしい。いろんな意味で理解するのが困難な映画でした。

 最初は、何にでも怒り狂うパンジーに面白さすら感じていたのですが、その文句のつけ方があまりにも理不尽すぎる&不機嫌じゃない時が無いので、観ていて息苦しさを感じてしまいました。

 いわゆる「クレーマー」だったり、街中で見かける「厄介な人」。きっと誰しも一度は遭遇したことがあると思います。

◆「厄介な人」なんて言葉で一括りにできるのか?

 それは私たちにとって、ただただツイてない日であり、ツイてない一瞬の出来事で、後々笑い話に出来てしまうような出来事。

 だけど、そんな「理解できない厄介な人」の周りの人の想いや、厄介な人へ至ってしまった本人の事情が、この映画には苦しいほどに詰め込まれていました。

 そもそも「厄介な人」なんて言葉で一括りにしていいものなのか、そんなことを初めて考えさせられる映画でした。

◆最後まで考えても考えても理解できない女性

 美しい花も、穏やかな鳥のさえずりさえも、己を刺激してくるものすべてを恐れて、誰よりも閉じこもっているパンジー。あらゆるものに吠え続け、パッと見はムテキに見えるけれど、その実、誰よりも苦しみ、疲れきっていたように思えます。

 う〜ん、やっぱり……考えても考えても理解できない女性でした。ただ、これも身勝手で矛盾した思いですが、パンジーの周りの人たちには、彼女を理解することを諦めないでほしいな〜と、つい最後にはそんなことを思ってしまうのでした。

 人間の複雑さが丁寧に描かれた作品でした! 映画館でぜひ!

●『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』
配給/スターキャットアルバトロス・フィルム 新宿シネマカリテほか全国順次公開中 ©Untitled 23 / Channel Four Television Corporation / Mediapro Cine S.L.U. Reserved.
<文/松本穂香>

【松本穂香】
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。2017年連続テレビ小説『ひよっこ』に出演して注目を集め、2018年にはTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で主演に抜擢。2023年、映画『“それ”がいる森』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2024年10月期月9ドラマ『嘘解きレトリック』では鈴鹿央士とともにW主演を務めた

    ニュース設定