 画像はfukaseインスタグラムより
画像はfukaseインスタグラムより 本来、成人同士の恋愛は自由なはずです。なのになぜ赤の他人が勝手にモヤってしまうのでしょうか? 40歳の男と20歳の女。有名人同士の年の差カップルに一部から批判の声が上がっています。
        
    
        ◆20歳差カップルに相次ぐ否定的な意見
「SEKAI NO OWARI」のボーカル・FukaseとTikTokインフルエンサーの沢田京海との交際が世間を騒がせています。ダブルスコアの年齢差に、“違和感がある”とか“父親と娘みたい”と否定的なコメントが相次いでいるのです。
        
    
         もっと突っ込んだ意見としては、“そもそも会話の話題が合うのか?”とか“Fukaseの体力がもつのか?”とか。余計なお世話過ぎます。
        
    
         また、最近ではFukaseがタトゥーやゴツいアクセサリーをアピールしていることなどから、沢田さんの影響なのではないかと憶測を呼んでいます。
        
    
         こうした声に対しては、法律上成人と認められている者同士が自分の意志から交際しているだけの関係なので、いずれの批判もナンセンスであることは言うまでもありません。つまり、このケースでは、年齢差を問題視すること自体が、そもそも行き過ぎた議論なのです。
        
        
        
    
        ◆「見た目」も「中身」も若い、Fukaseという存在
 むしろ大切なのは絵的な納得感です。Fukaseと沢田京海のツーショットには、それがあります。Fukaseは27、8歳でも通用するツルッとした質感があり、沢田さんは20歳とは思えぬ落ち着きを感じる。つまり、二人の並んだ姿には、適齢期の素敵なカップルと呼ぶべき完全なフィット感があるのです。
        
    
         少なくとも、ネット上で言われている“違和感”という表現は、全くあてはまりません。
        
    
         それなのに、なぜここまで年齢差がクローズアップされてしまうのでしょうか? 逆に違和感がなさすぎることにこそ考えるべき点があるのではないだろうか―‐。
        
    
         そこで浮かぶのが、彼のバンド「SEKAI NO OWARI」の作風です。なぜなら、彼らの音楽や歌詞が、Fukaseの真に迫った若さの核心部分を裏付けているからです。
        
    
         つまり、見た目だけでなく、本当に若い。これを音楽が言っているのですね。40歳に見えない人が40歳とは思えない内容の歌をうたう。外見、内面の両方でFukaseの隙のない若さが、かえって40歳という数字だけを際立たせてしまうのです。
        
        
        
    
         たとえば、大ヒット曲「RPG」の<「世間」という悪魔に惑わされないで 自分だけが決めた「答」を思い出して>とか、レコード大賞に輝いた「Habit」の<すぐ世の中 金だとか 愛だとか 運だとか 縁だとか なぜ2文字で片付けちゃうの>というフレーズです。
        
    
         一般的に、これは10代後半か20代前半のソングライターによく見られる表現です。しかし、Fukaseはこれらを20代後半以降に発表しています。それも、無理に若作りしているのではなく、極めて自然な形で、違和感なく世間に認知させました。「RPG」は、30歳が15歳の気持ちを想像したのではなく、15歳のような30歳が歌ったからこそ、大きな共感を呼んだのです。
        
    
         ◆“似合いすぎる”からこそ起きる違和感
 この作風にこそ、Fukaseという存在の高純度の若さが現れているのです。それはミュージシャンとしての表現方法に限った話ではなく、Fukaseという人物像が映し出す、在り方そのものです。
        
    
         以上を踏まえると、見た目や価値観がかけ離れたカップルだからではなく、むしろその真逆で、見た目も雰囲気も似合い過ぎていることが、Fukaseと沢田京海の違和感の正体となります。
        
    
         完全にマッチしているからこそ、40歳という数字の事実だけが宙に浮いてしまう。セカオワマジックが起こした、皮肉な消化不良なのです。
        
        
        
    
        文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4