
元乃木坂46の与田祐希が主演を務めるドラマ『死ぬまでバズってろ!!』(MBS系)が、SNS社会の光と闇を鋭く切り取った問題作として注目を集めている。
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ふせでぃ原作の同名漫画(文藝春秋)を大胆に実写化した本作は、「バズる」という一瞬の快感に取り憑かれ、破滅へと突き進む一人の女性の物語だ。与田が演じる主人公・浅野加菜子(通称タパ子)は、借金を抱え、過去のDV被害に苦しむ26歳のバツイチフリーター。理不尽な職場と貧困に喘ぐ日々の中、偶然撮影したひき逃げ事故の動画がSNSで拡散されたことをきっかけに、“告発系インフルエンサー”として覚醒していく。第1話で描かれたその変貌の瞬間こそ、現代社会が抱える「承認欲求」という麻薬の入口だった。
動画の再生回数やコメント数に一喜一憂し、次第に「バズること」そのものが生きる目的に変わっていくタパ子。第2話では、ひき逃げ動画の興奮が冷めやらぬうちに「次のバズ」を求め、盗撮犯を告発する配信で再び注目を集める。
偶然ではない“自作のバズ”を生み出した快感を、与田は狂気すれすれのテンションで熱演。声のトーン、早口の独白、そして空虚な笑い声……そのすべてが、SNSに依存しながらも心の拠り所を見失っていく現代人のリアルそのものだ。
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第3話では、自身が告発した事件の被害者家族・まみ(星乃夢奈)と偶然出会い、タパ子の罪が現実世界に波紋を広げていく。麻子が父の不祥事に苦しみながらもタパ子を慕う姿に、視聴者は「バズの裏にいる人間の痛み」を突きつけられる。だが、タパ子はその罪悪感すらも次のコンテンツへと利用しようとし、視聴者の倫理観を逆撫でするような危うさを見せるのだ。
ここに描かれるのは、SNSの“正義”がいかに簡単に快楽へと変わるかという恐怖だ。タパ子が「ニュースなんて生活音」と言って、友人の心を犠牲にしてでも動画を拡散するシーンは印象的だった。視聴者の中には、彼女の冷徹な発言に嫌悪を覚える人もいただろう。しかし、その非常さこそが、SNSの「バズ」を追う者たちのリアルなのだ。
与田といえば、2020年公開の映画『ぐらんぶる』でヒロイン・古手川千紗を演じ、クールビューティーながら白目をむいて金属バットを振り回すというギャップ満載のキャラクターを振り切って体現したことで話題に。以降、TBS日曜劇場『日本沈没‐希望のひと‐』では居酒屋の看板娘・山田愛として自然体の演技で愛らしさを見せ、スピンオフ『最愛のひと〜The other side of 日本沈没〜』ではメインキャストとして物語の芯を支えた。さらに「量産型リコ」シリーズ(テレビ東京系)では、プラモデルに夢中になる女性を等身大に演じ、同シリーズを根強い人気作へと導く存在に。映画『OUT』では一転して、不良たちを圧倒する眼光鋭いヒロイン・皆川千紘役を務め、迫力ある芝居で観客を驚かせた。
こうして見ていくと、与田は“可憐なヒロイン”から“狂気をはらんだ現代的女性”まで、役の幅を年々拡げてきた。『死ぬまでバズってろ!!』で見せる壊れゆくタパ子は、これまでのキャリアの延長線上にありながらも、その集大成とも言えるハマり役だ。
ドラマの前半にして、タパ子はすでに倫理の崩壊寸前にいる。それでも、与田の演技にはどこか“人間としての温度”が残っており、観る者は完全に彼女を憎みきることができない。この“ギリギリの人間らしさ”を成立させているのは、過去作で培われた彼女の表現力に他ならない。
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与田はインタビューで「SNSは怖い。でも、誰もがそこに魅了される」と語っているが、まさにこの言葉がドラマの核。SNSでは誰もが“タパ子”になる可能性を秘めている。“アイドル出身”の枠を完全に超えた与田の覚醒がどんな名作を生み出すのか――タバ子の過去も詳細に描かれていきそうな今後の展開が楽しみだ。
(文=蒼影コウ)
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