取引時間延長を告知する東証の掲示=2024年11月5日=東京都中央区 東証が株式の取引時間を30分拡大し、終了時刻を午後3時半に繰り下げてから、5日で1年が経過する。東証は1日当たりの売買代金を5%程度押し上げる効果があったと試算するが、市場からは「評価が難しい」との声が相次ぐ。一層の取引活発化には、時間延長に限らず、市場そのものの魅力を高める取り組みが欠かせない。
東証は時間延長の最大の目的について、システム障害が発生した際の強靱(きょうじん)性の向上だと説明する。2020年のシステム障害で取引が終日停止した事態を踏まえ、障害からの復旧時に、当日の取引時間を少しでも長く確保する狙いがある。一方の市場関係者からは、取引の活性化につながると注目が集まった。延長後の取引時間は午前9時〜11時半、午後0時半〜3時半となり、単純計算で10%増えたためだ。
これに対し、市況の影響を除いた東証の試算では売買代金の増加は5%程度にとどまった。市場からは「活況な相場にマネーが集まってきた印象で、時間延長が効果的だったかは疑問だ」(大手証券)、「1日の中で売買を繰り返す投資家の取引しか増えていないのではないか」(民間シンクタンク)との声が聞かれる。
大和総研の神尾篤史主任研究員は「商品に魅力がない小売店に消費者が集まらないように、取引所も、投資対象である上場企業の価値向上に取り組むことが不可欠だ」と分析。取引時間の延長は「付加的な要素にすぎない」として、東証には成長意欲のある企業への継続的な支援が求められると指摘した。