
【写真】32歳になったのん 輝きや透明感はますますアップ! インタビュー撮りおろしショット
◆田部井淳子さんは「何事も明るいポジティブなパワーで乗り越えていく」ところが魅力
本作は、日本を代表する女性登山家・田部井淳子の実話をもとに、エベレスト女性初登頂から、晩年の闘病、余命宣告を受けながらも亡くなる直前まで山に登り続けたその勇壮な生涯を描く。吉永小百合が主人公・多部純子の人生を生き生きとスクリーンに刻み、純子を支える夫・正明を佐藤浩市、純子の盟友・北山悦子役を天海祐希が演じる。
――エベレスト女性初登頂を成し遂げた田部井淳子さんをモデルとした役で、吉永小百合さんと同じ役を演じるという大きな挑戦の詰まった本作。出演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
のん:すごくうれしかったです。吉永さんが演じられる純子の青年期ということで「やばいな。どうしよう!?」というプレッシャーはもちろんありました。でも、脚本も素晴らしかったですし、「阪本(順治)監督と吉永さんの再タッグが実現するんだ!」ととてもワクワクしました。田部井淳子さんのパワーと吉永さんが持ってらっしゃるパワーに重なるところが感じられて、「これは絶対に関わりたい!」と思って飛び込みました。
――田部井さんをモデルにした多部純子役を演じられましたが、田部井さんについてはどんな印象をお持ちになりましたか?
のん:田部井さんについては、このお話をいただいてから調べていきましたが、本当に強いですよね。強靭な肉体と強靭な精神の両方を併せ持ってエベレストを登りきるという偉業を成し遂げた方なので、ちょっと人とはまったく違った精神性を持ってるんだろうなと感じました。てっぺんに行くためだったら、つらいことや苦しいこともはねのけて、明るいポジティブなパワーで乗り越えていく。そんな力強さを持った人なんだろうなという印象を持ちました。
――何事にも明るく前向きに向き合う田部井さんですが、田部井さんの魅力はどんなところに感じられますか?
のん:田部井さんのチャーミングさというのは、“好きの気持ちにあふれている”ところにあるのかなと思っています。好きな気持ちですこやかになっていく感じといいますか、“何があっても登山している自分がいれば頑張って楽しく生きていける!”みたいな、そういう中に田部井さんがお持ちのユーモアも含まれていて。いろんなことを蹴散らすパワーが田部井さんのチャーミングさですよね(笑)。それを裏付ける元気なところ、この人タフだなって思える雰囲気を大事にして演じるように心がけました。
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のん:70年代のファッション、かわいかったですね。パンタロンっぽいパンツだったり、特徴的な柄のトップスだったり、風合いもすごく楽しみました。髪型も田部井さんに寄せて、マッシュルームカットにして臨んだので、70年代の空気感を疑似体験できて面白かったです。
◆阪本順治監督からもらった言葉をお守り代わりに役に臨む
――純子と正明の夫婦関係が、信頼感にあふれていてとても素敵でした。
のん:吉永さんと佐藤さんが演じられるシーンを見学させていただいて、おふたりが出されている空気感を大事にしましたし、田部井さんと(夫である)政伸さんが書かれたエッセイも参考にして臨みました。政伸さんから見た淳子さんの姿や淳子さんからもらったラブレターについて書かれていて、とても面白かったです。
おふたりが互いにリスペクトしあって愛情を持っている関係が素晴らしいですよね。でもどこかお互いにマイペースなところもあるご夫婦なんじゃないかとも感じました。
――2人の関係性を紡ぐうえで、青年期の正明役を演じられた工藤阿須加さんとは何かお話をされましたか?
のん:役に対して何か特別にお話したということはなかったです。でも、現場で工藤さんから畑で育てていらっしゃるお野菜の話とかをお聞きして、優しく接していただき、正明さんのあたたかさもこういうところにあるのかなと自然と役に入ることができました。
――阪本順治監督とは初タッグになります。
のん:監督からは「吉永さんにも同じ言葉を渡しているんだ」と、監督が思う純子のイメージ、純子の精神性みたいなものを書き出した紙をいただきました。純子を解釈する上で必要な土台になるものだったので、いろんな資料と掛け合わせて純子というキャラクターを形成していきました。いただいた紙は撮影中も現場のバッグに入れてお守り代わりにしていましたね。
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――今回は同じ役を演じるということで共演シーンはありませんでしたが、吉永小百合さんの魅力はどんなところにあると感じられましたか?
のん:本当にパワフルですよね。水泳や運動も続けていらっしゃるので元気ですし、明るくってとても優しい方です。美しくてとても神々しいので、お会いするたびに「良い恩恵をいただいているな」「ありがたいな」という気持ちになります。
東京国際映画祭でもお着物の帯に田部井さんのプリントや、エベレストのプリントがされていて。そういうところにも思いやりや愛情深さを感じました。映画への愛にもあふれていますよね。
――次回共演が叶うとしたら、どんな役どころを演じてみたいですか?
のん:うわぁ〜! どんな作品がいいだろう…。次は同じシーンを演じられる役柄がいいですね。たとえば、吉永さんが大企業の会長で、私がその秘書。ライバル企業を打ち倒すために作戦を立てるバディのような感じとか…。
親子でもいいし他人でもいいんですけど、人間ドラマでもご一緒したいです。吉永さんが書店を営んでいて、私がそこに通い詰めていて、おすすめの本を教えてもらったり。そういうほっこりする作品もいいですね。
あとは何があるかな…。今回は登山だったので、スイミングスクールみたいなところで出会って、私が「この人カッコいいな」って惹かれていって吉永さんに「友達になってください!」っていうみたいな、年齢を超えた友情物語もやってみたいです。もういっぱい思いついちゃいます(笑)。
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のん:田部井さんの人生、自分で自分の人生を豊かにしていくというパワーや、田部井さんを支えてくれる人々とのつながりなど、ひとりの女性の豊かなドラマが詰まっています。これから自分が生きていくうえで、“こんなふうに生きられたら最高なんじゃないか”と思えるような、人生の指針になるような映画です。
この映画は田部井淳子さんの映画でもあるんですけど、吉永小百合さんがこれまで映画の道を追求してきて、それこそてっぺんの向こうを見てきた方だと思うんですね。その感じが重なって見えて、小百合さんが刻まれた映画だとも思っています。特別な映画だと思うので、ぜひ劇場にお越しいただけるとうれしいです。
――最後に、田部井さんは35歳でエベレストに登頂されましたが、現在32歳ののんさんが30代のうちにチャレンジしてみたいことはどんなことでしょうか?
のん:30代でチャレンジしてみたいこと…。天井知らずで表現を突き詰めたいです。
(取材・文:佐藤鷹飛 写真:高野広美)
映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』は、全国公開中。
