『ばけばけ』トキに漂う『みいつけた!』の“スイちゃん感”はなんだ?朝ドラと子供番組の意外な共通点

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2025年11月05日 09:00  女子SPA!

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女子SPA!

画像:連続テレビ小説 ばけばけ Part1(NHK出版)
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)が、じわじわと人気を獲得しています。ここ数週の視聴率は連続で15%台を記録、右肩上がりに上昇した『あんぱん』の数字に迫る勢いです。

『ばけばけ』は、「怪談」で知られるギリシャ生まれの作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツをモデルに、江戸時代の名残が残る明治初期に生きる市井の人々を描いた作品。小泉八雲をモデルにしたヘブンと、セツをモデルにしたトキの行く末が見どころのひとつです。

じわじわと人気を獲得している本作には、ある人気子供番組との共通点があるように思えます。

◆脚本のふじきみつ彦氏は子供番組の名手

物語の展開以上に視聴者の心をひきつけているのは、個性的な登場人物や、暗い時代にもかかわらずカラリとした空気感、クスっとできるセリフのやりとりやエピソードの数々です。何の気なしに画面に目を向けていても、自然と引き付けられ笑顔になる、そんな魅力があります。

脚本を担当しているのは、元CMプランナーのふじきみつ彦氏。朝ドラの前作『あんぱん』の脚本・中園ミホ氏に比べ、知名度の点ではやや劣るものの、Eテレの人気子供番組『みいつけた!』では、立ち上げメンバーのひとりとしてキャラクター作りから携わる人物。

メインとなるドラマパート「コッシーとスイ」などの脚本を長年担当している、子育て世代にはお馴染みの人です。『おかあさんといっしょ』で流れる歌の作詞も手掛け、子供のいるパパママなら、一度はその名前を見たことがあるはずです。

◆1話15分のショートドラマはお手の物

ふじき氏は『阿佐ヶ谷姉妹ののほほん二人暮らし』(NHK)、『バイプレーヤーズ』(テレビ東京系)などで見られるように、登場人物のキャラを最大限に生かした、テンポのいいコメディタッチの作風が持ち味です。

今まで手掛けた作品も、1時間以上の長尺より30分前後の長さのものが多く、1話15分の朝ドラはお手の物でしょう。

朝ドラで稀にあるのが、1時間以上の大作を主に担当していた脚本家が朝ドラを担当すると、展開が遅かったと思えば急に詰め込みすぎになったり、重い展開が数話続いて離脱されたり、数字的にも作品的にもイマイチという評価で終えること。

ふじき氏は、その点においては全く心配なく、信頼できる作家であると言えます。

◆不思議なおかしさ、理解しあうこと…『みいつけた!』との共通点

『ばけばけ』は、日本が不安定だった明治維新期が舞台です。松野家のように、武士の時代を捨てきれない人と、新時代を見据え欧米化しようとする人が混在し、まさにカオスな時代だったことがドラマからも感じ取れます。

そこに現れたおかしな外国人・ヘブン……。大歓迎の中来日した彼の手を握ってその震えを悟り、異人でも「同じ人間」だと臆することなく接するトキの姿に、『みいつけた!』のスイちゃんの姿をみました。

『みいつけた!』のメインコーナー「コッシーとスイ」は、サボテンのおじさん・サボさん、椅子のコッシー、小さな女の子・スイちゃんが繰り広げるドタバタコメディーです。

この3人(?)がどういう設定なのか、数年見続けていてもいまだに理解できていませんが、それぞれのキャラの仲の良さや愛らしさ、軽快なストーリーによって、そんなことどうでもよくなってしまう不思議なおかしさがあります。

一緒に遊ぶ相手が椅子だろうがサボテンだろうがおじさんだろうが関係なく、小さな女の子が楽しそうに接し、生活や世の中の色々なことを学んでいく姿は、多様性が叫ばれる現代において、分け隔てなく接し、互いの人間性を理解し合うことの大切さを教えてくれます。

若い日本人女性とおじさん異国人が出会い、心を通じ合わせるという『ばけばけ』は、まさにスイちゃんと、サボさんやコッシーとの関係性に通じるものがあります。ドタバタもあり、学びもあり、そんな部分も『みいつけた!』と共通しています。

◆高石あかりのコメディエンヌぶり、まるでスイちゃん?

極めつけがヒロインの高石あかりさんのキャスティングです。先日、Xで現・スイちゃんの容姿を乏しめる呟きがあり、炎上をしていました。その呟きに反論していたほとんどは『みいつけた!』のファン。

「スイちゃんは可愛いよ」「歴代スイちゃんはみんな素朴で感情表現豊かな子」「等身大のお友達のかわいらしさ」etcという擁護の声が圧倒的に多かったのは言うまでもありません。

高石さんも、タエ役の北川景子さんのような誰もが目を奪われるような万人受けの美女ではありませんが、表情豊かで愛嬌があるかわいらしさはまさに『みいつけた!』のスイちゃんのよう。

SNSなどで「顔芸」と評される喜怒哀楽表現が豊かな表情や、笑顔の破壊力、愛嬌に魅了される視聴者が多数いると言います。天真爛漫ですっとぼけた感じのコメディエンヌぶりも、無垢で自由奔放なスイちゃんの存在を思わせます。一味違った不思議ちゃん感もスイちゃんと同様、ひきつけられるものがありますね。

◆ワクワクするような通好みの制作陣と役者陣

もうひとつの共通点としてあげられるのは、ハンバート・ハンバートが手掛ける主題歌や、川島小鳥氏のタイトルバック写真、音楽担当の牛尾憲輔氏など、国民的なNHKの朝ドラにもかかわらず王道というよりカルチャー寄りの通好みの人選であることです。

『みいつけた!』も、子供向け番組でありながらも、宮藤官九郎さん、星野源さん、レキシの池田貴史さんなどが音楽その他もろもろで参加、篠原ともえさんや山崎まさよしさんも声優として参加し、大人が見ても「そうくるか!」とワクワクするキャスティングが多数あります。

『ばけばけ』でも、制作陣はもちろんのこと、記者役の岩崎う大さん、友人役の円井わんさん、遊女役のさとうほなみさん、ナレーション(蛇と蛙)の阿佐ヶ谷姉妹……という、個性があって、どこか一癖ある人選が光っています。物語の空気感含め、どこかサブカル好きな人の心をくすぐるものがあります。

◆『みいつけた!』ファミリーの出演を期待したい

多くのつながりがある『みいつけた!』と『ばけばけ』。Eテレ系列のNHKで放映されている作品ということも最大の共通点。

もしかしたら今後、『みいつけた!』ファミリーのオフロスキー役の小林顕作さんや、サボさん役の佐藤貴史さん、コッシー役の高橋茂雄さんあたりが、出演する可能性もあるかもしれません。どこか期待してしまいますね。

<文/小政りょう>

【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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