
あの一世を風靡したIXY(イクシィ)が復活した!
その昔……もう昔といっていいと思うけど、コンパクトデジカメがピークを迎えた2010年前後、その代表的ブランドといえばキヤノンの「IXY」とソニーの「Cyber-shot」だった。
さらに富士フイルムの「FinePix」とかニコンの「COOLPIX」とかパナソニックの「LUMIX」とかオリンパス(当時)の「Stylus」や「μ」とか、カシオ(その後民生向けカメラから撤退)の「EXILIM」とか、いろいろあったなあと懐かしくなるのだが、当時主力だった片手で持てる小さなカメラというジャンルは、パナソニックが時々出してくる以外はほぼ見なくなったのである。
トップブランドであったキヤノンもPowershotシリーズはあるものの、当時主力だったIXYに至っては最後に出た「IXY 200/210」が2017年。8年前である。
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でも突然、マイナーチェンジではあるが復活を遂げたのである。Kodakブランドのコンパクトデジカメが話題になったり、パナソニックの「DC-TZ99」も好調だというくらいで、徐々にコンパクトデジカメが再発見された感があり、IXYもそこに加わったのだ。
それが「IXY 650 m」。16年に発売されたIXY 650のマイナーチェンジモデルだ。
IXYってのはキヤノンのAPSフィルムを使ったコンパクトカメラのシリーズ名だが、それがデジタルカメラとなって登場したのが2000年。初代「IXY DIGITAL」である。思わずIXY 650mと並べてみましたよ。
初代IXY DIGITALが誕生してからもう25年……四半世紀になるとはびっくり。このIXY DIGITALのヒットでコンパクトデジカメ市場が大きくなったのだ。
●懐かしのIXYは小さくて軽いのに12倍ズーム
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なにはともあれ、IXYである。8年ぶりのIXYなのでリアルタイムでIXYを知っている人も減ってきてるかも。
というわけでおさらい。キヤノンのコンパクトデジカメは「Powershot」シリーズで本格的な撮影ができるハイエンド機や、最近登場した動画モデルのPowershot Vシリーズなど幅広く取りそろえているが、どちらかというと実用性重視のラインアップ。
対してIXYは、マニュアル系の撮影機能はほとんどない細かい設定はカメラ任せのフルオート中心仕様で、そのかわり軽くて小さくておしゃれなコンパクトという路線だ。初代IXY DigitalからDigitalが取れたのちのIXYまで、時代時代で違いはあるものの、金属製でシンプルでコンパクトというデザイン重視の路線は貫かれている。
そして今回のIXY 650 m。型番から想像できるとおり、2016年に出たIXY 650のマイナーチェンジモデルなので特に当時に比べて性能が上がったとかそういうことはなさそう。でも当時のコンパクトデジカメならではの撮影がいろいろと楽しめるのである。
イメージセンサーは1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサーで約2020万画素。まあ大ざっぱに2000万画素と思っていい。
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手ブレ補正は約2.5段分。
レンズは35mm判換算で25-300mm相当の12倍ズームだ。
小型化を優先したこともあってF値はF3.6-7.0。絞り機構は持っておらず、内蔵のNDフィルタでF10〜F20に光量を落とす仕組みだ。
当時のIXYはそうだったのだ。何よりこの小ささ、サイズ感(撮影時の重さは約146g)で12倍ズームレンズを内蔵してたのである。
広角端と望遠端でズーム域をチェック。
さらにプログレッシブファインズームと称するデジタルズームで24倍相当まで上げられる。
シャッタースピードは1/2000秒まで。
ISO感度は最高でISO3200まで。ISO1600くらいからけっこうざらつきやディテールのつぶれが出てくるので高感度には強くない。
連写は約2.5枚/秒で、5Mにサイズを落としたハイスピード連写で約7.2枚/秒となっている。カメラのスペックとしては9年前の仕様なのでそこまで高くはない。
では使ってみよう。
●IXYならではの撮影を楽しもう
この小さなカメラの上面にあるのは電源スイッチとシャッターと撮影モードスイッチだけ。この撮影モードも、写真・クリエイティブショット・プラスムービーオートの3つだけ。3つめは写真を撮るとその前後の動画も撮ってまとめてくれるものだ。その代わり写真はフルオートのみとなる。
背面を見ると十字キーとボタンだけ。ダイヤル類はない。
この画面はオートモード。人を見つけたので右上に人物アイコンが出てる。
実にシンプルである。
電源を入れ画面を見ながらズーミングし、シャッターを押す。基本はそれだ。
では、まずオートであれこれ撮ってみる。AFエリアはオートのみ(人がいるとそこにあうけど)なので、狙いとちょっとずれてても撮るしかない。
続いて沈む夕日にカメラを向けてみると(色がきれいだったのだ)。自動的に夕焼けとシーン認識されてより鮮やかに撮れた。
人物もオートで。
暗いところでフラッシュがオートになっているとちゃんと光ってくれた。これぞコンパクトカメラの写り。
FUNCボタンを押すと、撮影モードを変更できる。
Pモードにすると、「マイカラー」を選んだり露出補正をしたり、AFを中央一点にしたりマクロモードにしたり、それなりにコントロール可能になる。
さらにいろんな撮影モードがある。ポートレートとか、レトロ風とか、夜景とか。中にはスマイルシャッターも。
気に入ったのは「極彩色」。その名の通り、彩度をぐわっと上げて極彩色の写真にしてくれるのだけど、これがかなり色鮮やかでこってりした画を作ってくれて楽しいのである。
トイカメラ風も遊べそう。けっこう極端なエフェクトがかかるから。
続いて「クリエイティブショット」。
今となっては珍しい撮影機能だけど、13年に登場した「Powershot N」で採用されたユニークなものだ。1回シャッターを着ると、オリジナル写真とは別にトリミングしたりエフェクトをかけたりした効果をかけた写真を5枚追加で作成してくれるもの。
シャッターを切ったあとにこんな風に合計6枚を「こんな風に撮れましたよ」的に見せてくれる。
人物を撮ると顔を斜めにした写真が混じってくるのがなんか面白い。このクリエイティブショットはどんなテイストの効果をかけるかで5パターン用意されている。どれも傾向を示すだけで最終的にどうなるのか分からないのが面白い。
クリエイティブショット(スペシャル)で撮った中から1枚。
人物以外のクリエイティブショット例も。
●懐かしのIXYは懐かしのIXYであるからこそ新鮮なのだった
最初にIXY 650のマイナーチェンジ版と書いた通り、AF性能や画質はあの頃のままだ。動画もフルHDの30fpsで4Kには未対応。
今ではあまり見られないようなユニークなエフェクト付きの撮影も楽しいし(本文にも書いたけど個人的には極彩色がいい)、しっかり光る内蔵フラッシュも新鮮。
操作系もあの頃のままなのでモニターもタッチパネル未対応。
バッテリー周りやUSB端子も当時のままで、バッテリーは本体内充電未対応なので付属のチャージャーを使う必要がある。最近のUSB充電に慣れてるととまどいそう。
しかもUSB端子もよく見るとUSB Type-Cどころか、今や見ることも少なくなったmini-B端子だったりする。
大きく変わったところはといえば記録メディア。SDカードだったのがmicro SDになった。
なので、往年のコンパクトデジカメ時代を知る人には超懐かしいIXYの復活であり、その時代を知らない人には小さくて簡単に使えてエモい写真も撮れるレトロなカメラとして新鮮かもしれない。
マイナーチェンジでとどめたからこそ、価格もイマドキのカメラとしてはかなり抑えられているわけだが、次はぜひもうちょっと現代的仕様のイマドキのIXYも見てみたいとは思う。
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