※写真はイメージです 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、電車内で“思わず顔をしかめてしまった”という2人のエピソードを紹介する。
◆缶チューハイを吹き出した男性に…
藤井馨さん(仮名・30代)は、仕事帰りに大阪駅からJR京都線に乗っていた。夕方の混み合う時間帯で、ようやく座席を確保できたそうだ。
「その日は相当疲れていて、座れた瞬間にホッとしました」
電車は順調に走っていたのだが、向かい側には小太りの男性が座っていたという。
「手には“缶チューハイ”をもっていました。そして、そのまま堂々とプルタブを開けて、ゴクゴクと飲みはじめたんです」
藤井さんは「電車でお酒?」と思ったものの、見て見ないふりをするしかなかった。
しかし次の瞬間……。
男性が咳き込み、口に含んでいたチューハイを勢いよく噴き出したのだ。飛び散った酒が隣の男性にかかり、一瞬にして車内の空気が止まった。
被害を受けた男性は無言でハンカチを取り出し、汚れたズボンを拭いていたという。
「男性は、『ごめんなさい』と軽く言っただけ。謝っているようで全然悪びれる様子もなくて、あの空気が本当に気まずかったです」
その後も酒の匂いが車内に残り、藤井さんは思わず顔をしかめた。
「みんな疲れているのに、“ああいう人”を見ると悲しくなりますね。お酒を飲むのは自由ですけど、周りへの気配りは忘れないでほしいです」
◆雨の日の電車内で強烈な不快感
田中由紀さん(仮名・50代)は、趣味の料理教室に通うため、週に数回電車を利用していた。
「雨の日はとくに混むので、少し早めに家を出ていました。それでも、その日はいつも以上に“ぎゅうぎゅう”でした」
田中さんは、ようやく座席を確保。そして、隣には傘をもった男性が座ったという。
「傘にカバーをしていなくて、水滴が私のトートバックや服にポタポタ落ちてきたんです。気づいているはずなのに、何も言わないのが辛かったです」
電車内は湿気と人の衣類のニオイが入り混じり、空気が重たくなっていたそうだ。
「梅雨の時期は、さまざまなニオイが混ざるんですよね。お互いさまだけど、だからこそ少しの気遣いが必要なんだと思います」
◆“気づかないふり”がいちばんの迷惑
隣の男性はなかなか降りず、40分ほど同じ車両で過ごすことになった。
「心の中では“もう次で降りてほしい”と何度も思いました。でも、注意したところでトラブルになるかもしれないと思うと、何も言えませんでした」
ようやく男性が下車。隣にいた女性がバックを拭いている光景が目に入った。
「あぁ、みんな同じように“がまん”してたんだなって感じました」
その出来事以降、田中さんには心がけていることがあるという。
「私も知らないうちに誰かを不快にさせているかもしれません。だから、雨の日は傘をカバーに入れたり、香りの強いものは控えたりしています。小さな気づかいが、気持ちよく過ごすために大事なんだと思います」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。