昔のイヌ属頭骨(上)と現代の犬頭骨。犬は遅くとも約1万1000年前にはオオカミから分かれて出現していたことが比較解析で分かった(英エクセター大提供) 犬(イエイヌ)が祖先のオオカミから分かれた時期を探るため、5万年前から現代に至るオオカミと犬の頭骨の形態を精密に比較した結果、遅くとも約1万1000年前には犬の特徴が明確に出現することが分かった。フランス・モンペリエ大や英エクセター大などの国際研究チームが13日付の米科学誌サイエンスに発表した。
犬は狩猟採集民がオオカミを手なずけ、狩りを手伝わせるうちに性格が次第に穏やかになり、餌も変わって鼻が短くなるなどの変化が生じたと考えられている。過去に報告されたオオカミと犬のDNAを比較解析する研究では、推定分岐年代が約4万〜1万9000年前と幅広いため、研究チームは頭骨の形態から絞り込むことを試みた。
5万年前以降の世界各地のオオカミと犬の頭骨計約640個について、さまざまな角度からデジタル写真を撮影してコンピューターで3次元モデルを作成。精密に比較した結果、犬の特徴がはっきりするのは約1万1000年前以降の頭骨だが、オオカミから犬への移行はそのしばらく前から進んでいた可能性が高いと結論付けた。
ドイツ・ボン郊外では1914年に、約1万4000年前の子犬の断片的な骨格が見つかっている。40歳くらいの男性や20代半ばの女性と一緒に埋葬されており、近年の研究では、感染症のジステンパーを患っていたことが歯の状態から判明した。
頭部は下顎の骨などしかないため、形態の比較はできないが、ペットとして飼われていたとみられるという。