2025スーパー耐久第7戦富士 TechSport Racingのマスタング・ダークホースR 11月15〜16日に静岡県の富士スピードウェイで行われるENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第7戦『S耐FINAL大感謝祭』には、新たに日米のモータースポーツ交流を目指した新クラス『ST-USA』が創設され、今後の本格導入を見据えたトライアルとして2台が参戦している。そのうちの一台、TechSport Racingのマスタング・ダークホースRは日本初登場だが、トラブルを乗り越え11月15日の公式予選に出走した。
今回のスーパー耐久第7戦富士は、アメリカで屈指の人気を誇るNASCARのデモランをはじめ、アメリカにちなんだイベントが数多く行われているが、その中でもトピックスのひとつとも言えるのがスーパー耐久内にトライアルとして設けられたST-USAクラス。日本ではアメリカ車のレース参戦は多くないが、アメリカ製車両およびチームの招聘を通じて、日米両国のモータースポーツおよび自動車文化の交流促進を目指すというものだ。
このスーパー耐久第7戦富士には、GT3カーであり、今季は鈴鹿1000km等に参戦したBINGO RACINGのキャラウェイ・コルベットC7 GT3-Rが参加し、11月15日の公式予選では総合ポールポジションを獲得する走りをみせたほか、日本では初登場となるフォード・マスタング・ダークホースRがエントリーした。
マスタング・ダークホースRはアメリカで開催されるマスタングカップ用のワンメイクレーシングカー。しかもドライブするのが、走らせるTechSport Racingのドライバーであるデビン・アンダーソンに加え、ジュリアーノ・アレジと中嶋一貴という豪華ラインアップとなった。
そんなマスタング・ダークホースRは木曜のスポーツ走行枠から大きな注目を集めていたが、実は金曜に2回行われた専有走行では、1周も走行することができなかった。木曜の最後のスポーツ走行でスターターにトラブルを抱えてしまったためだ。
今回、TechSport Racingの車両メンテナンスは名門セルブスジャパンが務めており、日本側の監督として長年日本のモータースポーツ界で活躍している小河原宏一氏が就いているが、小河原監督によれば「初日の2回の走行は問題なかったのですが、最後の走行のときにエンジンがかからなくなって、押しがけしたんです。3人のドライバーが全員乗れたので良かったのですが」と、初日の走行終わりにトラブルが発生してしまった。
●市販車オーナーと販売店の厚意を得て公式予選に復活
ただ、専有走行日の11月14日は、朝からスターターが回らない。再度押しがけしようとしたところ、今度はエンジンもかからなくなってしまった。ただ、ふだん日本で走っているレーシングカーとは異なり、別の個体があるわけでもなければ、メーカーサポートがあるわけでもない。また現在フォードは日本法人もない。
ただ、このマスタング・ダークホースRは第7戦富士の目玉のひとつ。チームはなんとか走らせられないかとあちこちに聞き回り、調査を続けた結果、広島県の販売店に市販車のマスタング・ダークホースが存在していたことが判明した。
「実はそのクルマは、売れてしまっていたんです。しかしいろいろとわがままを言わせていただき、販売店さんとオーナーさんに無理にお願いをして、エンジンがかからなかった部分も含めスターターモーターをお借りできないかと頼んだんです。その結果、オーナーさんのご承諾をいただき、なんと販売店さんがこちらに持ってきてくださったんです」と小河原監督は明かした。
富士スピードウェイに届いた市販車のマスタング・ダークホースからスターターモーターを移植し、その他の部品をチェック。急ピッチで作業を進めた結果、なんと11月15日13時からの公式予選に間に合わせることができた。
「オーナーさん、また販売店さんには本当に大感謝です。これがあってこその今日の予選になりました。クルマは比較的重いので1周の速さはそこまでではありませんが、ストレートではアメリカンなサウンドを堪能いただけたのではないかと思います。今日は昨日の分まで走ることができましたし、明日は4時間しっかり走りきりたいですね」と小河原監督は語った。
予選でのタイムを比較すると、このマスタング・ダークホースRはST-Z、ST-TCR車両の下位、ST-2クラスの上位と近いタイム。ただ小河原監督の言うとおり、ストレートでの迫力は十分だ。11月16日の決勝レースでは、ぜひチームの苦闘と市販車オーナー、販売店の厚意の末に復活を遂げたマスタング・ダークホースRの走りを見届けたいところだ。
[オートスポーツweb 2025年11月15日]