2025年F1第22戦ラスベガスGP ランド・ノリス(マクラーレン) ランド・ノリスとマクラーレンにとって、これまで一度も表彰台に上がったことのないラスベガス・ストリップ・サーキットは最も苦手なコースのひとつと言えた。2025年は赤旗が繰り返された初日フリー走行2回目こそ首位に立ったものの、真の勢力図は見極めにくかった。
そして翌日の予選は、ラスベガスGP初のウエット予選となった。フルウェットでの周回となったQ2までのノリスは、苦戦を強いられた。Q1は13番手、Q2は4番手。しかし路面が乾き始め、全10台がインターミディエイトタイヤ(浅溝/グリーン)を装着したQ3になると、見違えるような速さを発揮した。
路面はそこかしこに水溜りが残り、そこに突っ込めば一気にコントロールを失ってしまう。それでもノリスは攻め続け、2番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)に0.323秒差をつけての圧巻のポールポジションを獲得した。
「ものすごく滑ったし、少しでも縁石に乗りすぎたらどこに行くかわからない。Q1が特に(コンディションが)酷くて、全部のコーナーでクラッシュするかと思ったよ」と、ノリス。
水曜日のドライバー会見で残り3戦に向けての心構えを訊かれた際には「守りの姿勢を取るつもりはない。1戦1戦、勝ちに行く」と、決意を語っていた。その言葉を身をもって実践したかのような、終始アグレッシブな予選アタックだった。
対照的に精彩を欠いたのが、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)だった。Q2はギリギリ10番手。12番手に終わったランス・ストロール(アストンマーティン)がインターミディエイトタイヤに履き替える賭けに出ず、そのままウエットタイヤ(深溝/ブルー)で走り続けていたら、ピアストリがQ2落ちを喫していたことだろう。
かろうじてQ3進出を果たすも、そのQ3でもピアストリの速さは戻って来ず、ノリスから1秒以上遅い5番手。最後のアタックはセクター2のタイムロスが大きかったが、セクター1だけでもノリスから0.4秒落ちだった。これでノリスの3戦連続ポールポジション獲得に対し、ピアストリはメキシコシティGPで予選8番手、サンパウロGPで予選4番手、そして今回の予選5番手と、終盤になっての急激な失速の原因は、謎としか言いようがない。
ラスベガス・ストリップ・サーキットを得意としてきたメルセデス、フェラーリの不振も意外だった。メルセデスは去年、ジョージ・ラッセルがポール・トゥ・ウィン、ルイス・ハミルトン(当時メルセデス/現フェラーリ)が2位。そしてフェラーリのシャルル・ルクレール、カルロス・サインツ(当時メフェラーリ/現ウイリアムズ)が4、2番グリッドからそれぞれ3、4位を飾った。
しかし今年の予選は、ラッセルが4番手、ルクレールが9番手。アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とハミルトンはまさかのQ1落ちを喫した。ハミルトンは「固すぎた。タイヤがぜんぜん作動しなかった」とコメントしており、決勝レースがドライ路面となることを見据えてのセッティングが、裏目に出たのかもしれない。
ここは比較的オーバーテイクしやすいコースであり、ポールシッターが絶対優位ではない。とはいえノリスの自信に満ちた攻めの姿勢を見るにつけ、彼の攻略は決してたやすいことではなさそうだ。
[オートスポーツweb 2025年11月22日]