最後は笑顔で。「すごくすっきりした気持ち」大嶋和也がスーパーフォーミュラでのラストレースを終える

0

2025年11月23日 22:50  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

大嶋和也(docomo business ROOKIE)とチームオーナーのモリゾウ、石浦宏明監督、豊田大輔GM 2025スーパーフォーミュラ第10戦・第11戦・第12戦鈴鹿
 11月21〜23日、三重県の鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第11戦/第10戦/第12戦は、docomo business ROOKIEの大嶋和也にとってのスーパーフォーミュラでのラストレースとなった。途中参戦しない時期もあったが、2009年から戦い抜いてきた大嶋は、7月の第6戦富士のレース後には涙で引退を発表していたが、第12戦のレース後は笑顔でのフィナーレとなった。

 大嶋は2009年にPETRONAS TEAM TOM'Sでフォーミュラ・ニッポンにデビュー。2013〜14年は参戦しなかったが、2015年にスポットで復帰。2020年からはROOKIE Racingとともに1台体制で戦ってきた。

 ただ、2021年からのROOKIE Racingの体制は、チーム代表のモリゾウが「大嶋選手に最初に用意したチームは、本当に寄せ集めの素人集団だった。クルマの評価のすべてが大嶋というドライバーにのしかかってしまっていた。苦労をかけたと思います」というものだった。入賞こそ果たすことはあっても、下位での戦いを強いられてきた。2022年第5戦SUGOでは、14位でレースを終えたものの、あまりの乗りづらさに大嶋の不満が爆発するシーンもあった。

 しかし、大嶋が中心となってdocomo business ROOKIEは少しずつ歩みを進めてきた。チームの参戦当初から監督を務めた片岡龍也、そして2023年から「自分がステップアップしていくなかで負け続けた存在である大嶋が、フォーミュラで苦しんでいる姿を見て、大嶋の本来のパフォーマンスを証明してあげたい」と監督に就任した石浦宏明が、ともにチームを引っ張ってきた。

 大嶋が不満を爆発させたSUGOでは、翌年に表彰台まで迫る4位に入賞。2024年は思うように歯車が噛み合わなかったものの、2025年に向け、大嶋はモリゾウに「もう一年乗りたい」と伝えた。結果を出すというより、スーパーフォーミュラという「わがままを貫く場所」で自らの速さを証明したい……。そんな思いからだった。

 そんな2025年は、開幕からコンスタントに入賞を続けてきた。12戦中7戦での入賞を果たしているのは、1台体制のチームでは驚異的な数字とも言える。大嶋が引っ張ってきたdocomo business ROOKIEは力強いチームに成長し、次代の若手に委ねるに十分なチームとなった。


●内容、結果ともに「満足がいくレース」となった第11戦

 7月の引退発表から、スーパーフォーミュラはSUGO、富士と転戦。ついに最終大会の鈴鹿を迎えることになった。1大会3レース制は大嶋自身も予想していなかったというが、11月21日(金)の専有走行から好調で、11月22日(土)の第11戦の公式予選ではQ1突破も達成。Q2では満足いくアタックができなかったものの、それでも12番手につけた。

 午後の第11戦の決勝では、大嶋は「今シーズンいちばん」のスタートを決めると、トップグループの混乱もあり7番手に浮上。スーパーGTのチームメイトである福住仁嶺(Kids com Team KCMG)をオーバーテイクし、セーフティカーランでのピットインでも、昨年から抜群のスピードをみせるdocomo business ROOKIEが素早いタイヤ交換を行い、5番手まで浮上した。

 結果的にペースに優る太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の先行は許したものの、それでも今季最上位タイの6位でフィニッシュ。上位での堂々たる戦いをみせ「満足できるレース」を終えた。この最終大会で、ひとつ自らの思いを納得させるレースができたことで、11月23日(日)の第10戦、第12戦は比較的楽な気持ちでレースを戦うことができたという。

 そんな第10戦でも、12番手からふたたび10番手にポジションを上げると、後方から迫った阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)を退け10位でフィニッシュ。2戦連続のポイント獲得を果たした。そして、最後のレースとなった第12戦は「若干欲をかいた」こともあり、グリップ感に苦しむことに。レース序盤、接触があった可能性もあり、そのチェックとニュータイヤ装着のために二度のピットインを行ったが、最後までザック・オサリバン(KONDO RACING)とバトルを展開するなど、攻めの姿勢を貫きラストレースを終えた。


●「ポテンシャルを示すことができました」笑顔で迎えたフィナーレ

 第11戦の後、「大嶋がどういう顔をしてクルマを下りてくるか。今日よりもさらに満足した顔で下りてくるシーンを全員で作りたい」と語っていたチームオーナーのモリゾウは、笑顔でクルマを下りてきた大嶋を握手と熱い抱擁で迎えた。

「大嶋選手は、ROOKIE Racingでかんしゃくを起こすわけでもなく、地道に、毎日毎日いろいろなケースを想定してやってきた。その積み上げが出たのが第11戦だったと思います。そういうチームの中で、この最後の3戦を戦って、自分としてはやり切ったんだと思います。本当に大嶋選手が作り上げたチームだったと思います」とレース後、モリゾウは大嶋のラストレースに言葉を寄せた。

「クルマから下りて、もっと疲れているかとも思っていたけど、良い顔をして下りてきましたね。一年やらせて良かったと思います」

 レース後、docomo business ROOKIEのピットには、チーム全員、さらにスーパーGTのチームメイトの福住、さらにチーム創設初期を支えた片岡も訪れ、大嶋に言葉を寄せた。モリゾウ、そして石浦監督も言葉を詰まらせるシーンがあったが、当の大嶋は終始笑顔で、やり切った様子だった。

「夏の会見でかなり泣いたので(笑)。たぶんみんな泣いて帰ってくるんじゃないかと想像していたんじゃないかと思いますが、今日は涙は出ません」と大嶋はチームメンバーに語りかけた。

「このチームで走りはじめて辛いことも多かったですが、信じてやってきて、最後の年に力がついたと感じています。しっかり若手たちと戦えるクルマを用意してくれたので感謝しています」

 ラストシーズンについて「ポテンシャルを示すことができましたし、満足しています。すごくすっきりした気持ちで最終戦を終えることができました」と大嶋は終始笑顔でスーパーフォーミュラでのラストレースを終えた。強く、たくましく引っ張ってきたdocomo business ROOKIEは、今後も大嶋が力を注ぎ、さらなる成長を果たしていくはずだ。

[オートスポーツweb 2025年11月23日]

    ニュース設定