セットアップ変更は「逆に仇になった」2ストップ戦略と噛み合わず、勝ち目の消えた決勝【角田裕毅F1第22戦分析】

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2025年11月24日 12:00  AUTOSPORT web

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2025年F1第22戦ラスベガスGP 角田裕毅(レッドブル)
「バーチャル・セーフティカー(VSC)が入るタイミングが味方してくれれば、今日は非常に効果的な戦略が取れたはずですが、結局は味方してくれませんでした。その直前にピットインしていたからです。すべてが自分に不利に働いているようで、週末の計画通りに物事が進みません。夜を徹して施したマシンの変更も、期待したほどペース向上には繋がりませんでした」

 2025年F1第22戦ラスベガスGPの決勝レース。このVSCを味方につけたのが17番手からスタートしたアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)で、2周目のVSCの際にピットインし、残りの48周をハードタイヤで走り切り、4番手でフィニッシュ。マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリの失格によって、3位となった。

 VSCのタイミングは角田にとって不運だったが、もしそのタイミングが味方したとしても、この日の角田にはアントネッリが打ったギャンブルは成功しなかった可能性の方が高い。それはピットレーンスタートを選択して、マシンに施したセットアップ変更とピットストップ戦略がちぐはぐだったように感じられたからだ。

 角田はピットレーンからスタートし、1周目にピットインしている。このとき、コース上は1コーナーでダブルイエローが振られていただけだった。つまり、角田とチームは、1周目にピットインして、ミディアムからハードへとタイヤを交換することをスタート前に決めていた可能性が高い。これ自体は決して無謀ではないことは、2周目にアントネッリがピットインして、ハードタイヤに交換してチェッカーフラッグまで走り切ったことでもわかる。

 この作戦を成功させるためには、タイヤのマネージメントが重要になるのだが、角田のエンジニアが予選後に行ったセットアップ変更は、リヤウイングについていたガーニーフラップをとって、ストレートスピードを上げるものだった。この変更が「逆に仇となって、セクター2が伸びなかった」と角田は振り返る。

 後方からスタートするため、前を走るマシン抜くことができるように空気抵抗を削りたかったのだろうが、その反動でダウンフォースも削られた角田は、ストレートの立ち上がりでのトラクションに苦しんだ。アントネッリがフランコ・コラピント(アルピーヌ)を早々に抜いていったのに対して、角田はコラピントがピットインするまで抜きあぐねたのは、それが理由だったと考えられる。

 コラピントの後ろでタイヤをマネージメントできなかった角田は、27周目に2度目のピットイン。1ストップが主流のなか、後方から2ストップになった時点で、このレースの勝ち目はなかった。

 ただし、このグランプリで犯した大きなミスは、やはり予選でのタイヤの内圧設定ミスだった。

「簡単に防げただけに残念です。しかも、かなりレベルの大きなミスで、衝撃的だったのでなんとも言えないです」

 レース後、ヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)は「彼はこの週末を通じて非常に競争力があっただけに、残念だ」と語った。

 ラスベガスGPはチームメイトのマックス・フェルスタッペンが優勝。レース後に行われた記念撮影会場に少し遅れて到着した角田は、最前列の端におとなしく座った。すると、それに気づいたローラン・メキース代表が角田を呼び寄せ、隣に座らせた。

 チームがミスを謝罪し、角田の実力を認めている。それが唯一の救いだ。

[オートスポーツweb 2025年11月24日]

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