画像:オイシックス・ラ・大地株式会社 プレスリリースより 今クールで最も話題を集めているドラマといえば、火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で間違いないでしょう。
◆TBS全番組の中でも歴代最高を記録
第3話は、TVerでの再生回数が配信開始から1週間で442万回を突破。2023年8月放送の『VIVANT』(TBS系)第5話が記録した419万回を上回り、バラエティ番組を含むTBS全番組の中でも歴代最高記録を更新したといいます。
本作は竹内涼真さんと夏帆さんがダブル主演するラブコメドラマ。
海老原勝男(竹内涼真さん)は、表向きはハイスペなさわやか男子ながら、「女の幸せは家で料理を作って愛する人の帰りを待つこと」という古臭い価値観を持った、今どき珍しい亭主関白な男。
大学時代に出会って恋に落ち、同棲していた彼女・山岸鮎美(夏帆さん)は、勝男のために手間のかかる手料理を毎晩作っていましたが、勝男からは「しいて言うなら、おかずが茶色すぎるかな」とチクリと嫌なことを言われていました。
そんな事情があり、勝男は鮎美にプロポーズするも、彼女の返事は「NO」。本作は、勝男と鮎美、二人の愛の再生を描く物語です。
◆もし勝男がつき合ったのが鮎美ではなかったら…
第1話放送当時は、竹内さん演じる勝男のモラハラっぷりがヤバすぎると話題になっていました。第2話以降は視聴者が勝男の改心や成長を見守っていく形となり、彼の評価はうなぎ上りなのですが、とにかく初回のモラハラモンスターっぷりにSNSなどでは非難の声が相次いでいたのです。
一方、夏帆さん演じる鮎美に対しては、視聴者からは同情の声が寄せられ、あまり批判されることはありませんでした。しかし、LINE公式サービスで計1万件以上の恋愛相談を受け、恋愛コラムも数多く執筆している筆者からすると、勝男に匹敵するぐらい鮎美はヤバく感じます。
そもそも、勝男がアラサーになってもモラハラモンスターのままであるのは、鮎美の責任もかなり大きいのです。鮎美がモラハラな価値観を否定せずに、受け入れけていたことで、続けていたことで、勝男は長年、自分の考えが間違っているのだと気付く機会を逃し続けていたとも考えられるからです。
もし勝男が大学時代に好きになったのが鮎美ではなく、もっとハッキリと自分の意見を主張できる女性や、普通の感覚を持っていてそれを教えてくれる女性であれば、彼はもっと早い段階で自分の痛々しさに気付けたことでしょう。
◆鮎美は男に媚びまくる典型的な「女に嫌われる女」
しかも、鮎美が清廉潔白・純真無垢な人格者であれば、彼女は“モラハラ男の被害者”と言えたかもしれませんが、実は計算高い性格だということが第2話で明らかになりました。
第2話では中学生ぐらいの鮎美の回想シーンが描かれましたが、その当時から自分は何が好きかより、男子からどうしたら好かれるかを考えていたそう。そして、モテに対する努力をしていない女友達を、《ましてやあなたたちみたいに何もせず、そのままの自分を愛してもらおうなんて、全然ダメ》と見下していたのです。
また、クラスのイケメン男子に上目遣いで媚びた口調で話す鮎美を見て、女友達は軽蔑の視線を送りましたが、鮎美は内心《友達なんていらない。私はモテに全ベットする》と思っていたほどです。
鮎美がそんな性格になった背景には、母親や姉が男に振り回されて不幸になっている姿を見てきたことが影響していました。鮎美は《私はああはならない》と反面教師とし、《必要なのは“愛され続ける努力”。私がほしいのは、恋愛の先にある結婚。そして家庭。安定した人生。それが私の夢》という思想が形成されていったようなのです。
要するに、鮎美は男に気に入られるために媚びまくって生きてきたタイプで、典型的な「女に嫌われる女」。
勝男と付き合ったのも安定した人生のための計算だったわけですし、ハイスペ男を逃さないようにモラハラ気質を黙認し続けていました。つまり、アラサーのモラハラモンスターを“育てた”のは、鮎美自身なのです。
◆このドラマはモテ全ベット女の成長譚でもある
「いかに男性に好かれるかだけを意識して生きてきた」という鮎美は、勝男と別れた後、年下男子・ミナトと付き合い始めます。しかし、ミナトは次々に恋人を変える“大量消費型恋愛体質”だったため、鮎美は振り回され、挙句にはフラれて独り身に。
第6話では、新たな恋を探すために婚活パーティーに参加します。そこでは年収1200万円の好条件の男性に声をかけられますが、《まただ、私はまた誰かに選ばれたくて、すがろうとしている》と気付く描写がありました。
鮎美も勝男と同様に、過去の自分と決別して、変わろうともがいています。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は勝男の成長譚という要素が注目されがちですが、鮎美の成長譚でもあるのです。
ドラマ前半は勝男のモラハラっぷりと、そのヤバさに気付いた彼の成長がフィーチャーされていました。ドラマ後半では、メンタルが不安定な描写が多かった鮎美が、成長していく様子が描かれるのではないでしょうか。彼女が本当の意味で強く変わっていくことを期待しています。
<文/堺屋大地>
【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』(扶桑社)で恋愛コラム連載、『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は @SakaiyaDaichi