NASCAR公判期日を前に反トラスト訴訟で最新の文書が公開。RCRや他シリーズへの侮辱や攻撃が明るみに

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2025年11月28日 17:50  AUTOSPORT web

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NASCARで係争中の独占禁止法訴訟に関し、現地12月1日の公判期日を前に大量の証拠書類と文書が公開されることに
 北米大陸でストックカーの3大ナショナルシリーズを運営するNASCARと、その最高峰カップシリーズに参戦する23XI(トゥエンティスリー・イレブン)レーシング、そしてフロントロウ・モータースポーツ(FRM)の間で係争中の独占禁止法訴訟に関し、現地12月1日の公判期日を前に大量の証拠書類と文書が公開されることに。

 その内容に含まれていたテキストメッセージから、一部のNASCAR幹部は現在廃止されているショートオーバルトラックで開催されるオールスター戦、スーパースター・レーシング・エクスペリエンス(SRX)に自社のスター選手が参加することに「メスを入れたい」とあまり乗り気ではなかったことや、カップシリーズにおけるチャーター販売の全取引履歴によるチャーター料金そのものが明らかになった。

 さらにスポーツの経済性をめぐる議論が続く中で、チームオーナーのひとりであるリチャード・チルドレスに対する激しい非難に発展。その侮辱的な発言内容に関しリチャード・チルドレス・レーシング(RCR)側は「法的措置を検討している」とし、新たな係争の火種となっている。

 これらのメッセージは、先週11月21日の金曜遅くに公開された大量の文書の一部であり、トニー・スチュワートとレイ・エバーナムによって創設されたSRXシリーズは2021年に初開催された。あらゆる分野のドライバーを招待し、同一の仕様のレースカーで競い合ったSRXは、夏の期間の6週間で実施され、北米ではESPNやCBSでTV中継もされていた。

 すでにシリーズ資産の一部は、今季初めにGMSレースカーズに売却されているが、NASCARのレギュラードライバーが参加可能だったのは、レースが土曜の夜に開催されていたことで、出場希望者はその週末にNASCARがレースを行っている場所からSRXイベントまで移動できたからだ。

 その短い開催期間(2021年から2024年)では、チェイス・エリオットやライアン・ブレイニー、デニー・ハムリン、カイル・ブッシュ、ダニエル・スアレス、ブラッド・ケセロウスキー、ジャスティン・マークス、ケビン・ハーヴィックなど錚々たる面々がエントリーし、エリオットやブッシュはシリーズで2勝を挙げ、ハムリンも勝利を飾っている。

 しかしこのSRXの存在に関しNASCAR幹部は苛立ちを感じており、シリーズを代表するドライバーがレースウイーク中に現場を離れる状況に「メスを入れたい」と考えており、シリーズ自体を「ナイフで刺してやるつもりだ」とのテキストメッセージが明らかになる。

 同時に、これまで秘匿中の秘匿とされてきたチャーター権の金額も明るみに出ることとなり、取引履歴からは例えばライブ・ファスト・モータースポーツは2024年にチャーター権を4000万ドル(約62億5000万円)で売却。これは個々のチャーター権としては過去最高額となり、昨季限りで解体されたスチュワート・ハース・レーシングは、保有する3つのチャーター権を合計8400万ドル(約131億3600万円)で売却していた。

 今回の独占禁止法訴訟の元凶ともなっているチャーター制度は2016年に導入され、NASCARは当初36のチャーター権を付与した。これはフランチャイズ方式を参考とし、カップシリーズのチームにイベントへの自動エントリーを保証する。同時にチャーター保有者には賞金の一部が保証されており、これはチャーターを持たない参加者よりも大幅に高額となっている。

 そのチャーター権の契約交渉と、カップでは2022年より導入されたNext-Gen規定モデルのコストについて、当時RCR代表のチルドレスがラジオ出演した際に懐疑的なコメントをしたことに言及し、NASCARの最高メディア兼売上責任者であるブライアン・ハーブストが、現NASCARコミッショナーのスティーブ・フェルプスに向け「(チルドレスは)裏庭に連れ出して鞭打たれるべきだ。彼は全財産をNASCARに負っている愚かな田舎者だ」と発信した。

 それを受けたフェルプスも「チルドレスは馬鹿だ」「もし彼らがこのスポーツを嫌うなら(自分の)資格を売却して出て行け」と応答し、さらに「私はチルドレスを馬鹿だと言っただろうか」と3度目の侮辱を重ねた。

 さらに、このメッセージに悪ノリしたハーブストも「今まさにヒットを聞いたところだ。彼は馬鹿だ。あまりにも虚偽の主張や不誠実な発言が多すぎる」と返信していた。

 この2022年当時、NASCARとチーム側が交わすメディア権契約が70億ドル(約1兆923億)と推定されるなか、2022年に投入する次世代モデルは「チーム側のコスト削減につながっていない」としてガレージから批判を受けていた。これらのテキストメッセージはまさにその紛糾した時期に交わされたものだった。

 現在ノースカロライナ州の連邦裁判所で続く訴訟の中心となっているのは、NASCARが独占企業であるという主張に加え、このスポーツの経済モデルとチャーター制度を対象としているが、このテキストメッセージで明らかになったようにオーナーがNASCAR幹部から侮辱されたことを受け、RCRは以下の声明で「法的措置を検討している」とした。

「RCRとリチャード・チルドレスは、NASCAR幹部のスティーブ・フェルプスとブライアン・ハーブストの間で交わされたテキストメッセージの中で、チルドレスについて無神経で中傷的な発言がなされたことに深く失望しています」

「これらの発言は、チルドレスのような多くのチームオーナー、そしてファン、スポンサー、そしてNASCARに参戦するすべての人々のために、スポーツの発展に人生を捧げてきた功労者を、NASCAR幹部の一部が歴史的にどのように見てきたのか。その方法と姿勢を反映しています。そのためRCRとリチャード・チルドレスは、謙虚で勤勉な経歴を持つNASCARファンと深く共感し、痛みをともにしていると感じています」

「RCRとリチャード・チルドレスは、これらのメッセージ、あるいは最近表面化したその他の中傷的なテキストメッセージに関して、今後一切の声明を発表しません。以降は法的措置を検討し、現在は弁護士と協議中です」

[オートスポーツweb 2025年11月28日]

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