2025年F1第23戦カタールGP決勝 アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とランド・ノリス(マクラーレン) FIAは、F1カタールGP後にアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がオンライン上で中傷され、殺害予告にさらされたことを重く受け止め、声明を発表した。
アントネッリは、決勝終盤、ランド・ノリス(マクラーレン)を後ろに抑えながら4番手を走行していたが、最後から2周目、ミスを犯してコースから外れ、ノリスにポジションを奪われた。
ポイントリーダーのノリスは、5位から4位に順位を上げたことにより、2点多く獲得。最終戦を前に、チャンピオン争いのライバル、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)との差は12点、オスカー・ピアストリとの差は16点となった。
レース終了前後に、レッドブルのメンバーが、アントネッリはノリスを助けようとしたという誤った主張を行った。まず、フェルスタッペンのレースエンジニア、ジャンピエロ・ランビアーゼ(GP)は、無線で「アントネッリに何が起きたか分からないが、単純に道を開けて、ノリスを通したように見える」と発言した。
その後、レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは、「彼(アントネッリ)は2度ほどランドを前に出した。非常に明白だ」と述べた。しかし実際にはノリスがアントネッリを抜いたのは一度だけであり、それは56周目の途中、ターン10でアントネッリがコースから外れた時だった。マルコはオスカー・ピアストリとノリスを混同していたものとみられる。
さらにマルコは「アントネッリは今や我々の最大のライバルを助けている。オーストリアではマックスのリヤに突っ込んだ」と述べ、まるでアントネッリが故意にクラッシュしたかのような主張も行った。
当然のことながら、アントネッリはカタールでノリスにポジションをすすんで譲ったわけではなく、順位を落としたことに非常に落胆し、「コースオフしてランドにポジションを奪われた。とても悔しかった」とコメントしていた。
マルコの言葉について尋ねられたメルセデスのトト・ウォルフ代表は、「これは完全にナンセンスであり、聞いていて呆れる」と語った。
「我々は(コンストラクターズ)選手権で2位を争っている。キミはあの時、3位を狙っていた。このようなことを言うとは、どれほど無思慮なのか。レースそのものに腹が立っているのに、さらに苛立つ」
「終盤のミスに苛立っている。他のミスにも苛立っている。そしてこんなナンセンスな言葉を聞かされると本当に呆れる」
ランビエーゼとは話をしたと、ウォルフは明かした。
「GPと話した。彼は明らかにその瞬間、感情的になっていた。ランドがアブダビでタイトルを獲得するのに必要な条件が、彼らが望んでいたよりも有利になった。私はGPに『キミはコースオフしただけだ。コーナーで少し挙動を乱し、次の左コーナーで進入速度が落ち、アクセルを踏んだ瞬間にポジションを失った。それは起こり得ることだ』と説明した」
「GPとはすべてクリアになった。彼は状況を見ていなかったと言った。なぜ我々がそんなことをする必要があるのか。GPに、ソーシャルメディア上で嵐のような騒ぎになっていると伝えた。GPは『もし騒ぎを起こしたなら申し訳ない。インシデントを見ていなかった』と言った」
「我々がドライバーズ選手権に干渉することなど考えるはずがない。幻を見ているのではないか。自分を見直すべきだ」
アントネッリは、レース後、SNSを通して多数の誹謗中傷のメッセージを受けた。レッドブルはこの状況を受け、ランビエーゼとマルコの発言は誤りだったという声明を発表した。
「カタールGP終了前および直後に、メルセデスのドライバーであるキミ・アントネッリがランド・ノリスを意図的に先行させたと示唆する発言があったが、それは明らかに誤りである」
「リプレイ映像は、アントネッリが一時的にマシンのコントロールを失い、その結果ノリスに抜かれたことを示している」
「このことがキミへのオンライン中傷につながったことを、我々は心から遺憾に思う」
マルコは、一部メディアに対し、自分の主張を撤回する発言をしたと伝えられている。
一方、FIAは、アントネッリに向けられた誹謗中傷を非難する声明を出した。
「FIAとその『オンライン上の誹謗中傷に対する団結(United Against Online Abuse)』キャンペーンは、あらゆる形態の中傷やハラスメントも非難する」
「我々のスポーツに関わるすべての人々が、安全で敬意ある環境で活動できることが、絶対的に重要である」
「我々はキミ・アントネッリを支持し、オンライン・オフラインを問わず、より広範なコミュニティに対して、ドライバー、チーム、オフィシャル、そしてスポーツエコシステム全体を、彼らが当然受けるべき敬意と思いやりをもって扱うよう、強く求める」
[オートスポーツweb 2025年12月03日]