44歳・元テレ朝アナ、ハワイ移住して突如“主夫のいる暮らし”に。心境をつづる「なんという贅沢!」

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2025年12月04日 09:20  女子SPA!

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女子SPA!

大木優紀さん
 新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(44歳)。

 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第26回となる今回は、ハワイ移住を経て家族のライフスタイルが変化した大木さんが、話題のドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』を観て感じたことを綴ります。(以下、大木さんの寄稿)

◆移住してわかった“家事をする人”が家庭にもたらす大きな意味

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』というドラマがとても話題になっていますよね。みなさんも見ていますか?

 料理も家事もやらないのに、口だけ出してくるパートナー。その見えない苦労を可視化して、「別れ」から始まるストーリーのドラマなんですが、その内容がとても共感を呼んでいて、SNSなどでも議論も巻き起こっています。

 私自身も、これまで、家事と育児のメインを担っていました。しかし、ハワイへの移住をきっかけに生活が一変。家事の大半を夫が担ってくれるようになり、そこから家事への考え方が大きく変わりました。

 今日はそんなライフスタイルの変化から見えてきた、家事を担う人の価値、そして男女問わず「専業主婦(夫)」という存在の社会的意義について、私の感じたことを綴ってみたいと思います。

◆共働き時代だからこそ感じた、“主夫”がいる暮らしのありがたさ

 時代は令和になり、夫婦ともに働く「共働き」がスタンダードになりました。家電は進化し、行政のサポートや外注サービスも整い、家事の負担を家庭内だけで抱え込まなくてもよい環境が広がっています。

 今は「夫婦だけで家庭を回していく」難易度が、世の中全体で下がってきた時代だと言えるでしょう。育児をしながら働きたい女性にも男性にも、それぞれに働く選択肢が与えられるようになった。それが、今の世の中だと思います。

 そんな中で、私たち家族はハワイへ移住しました。ビザの関係もあり、今は、私がフルタイムで働き、夫は日本の仕事を半分に減らしてリモートワークを中心に。実質、夫は“ほぼ専業主夫+アルファ”のような形で家庭を支えてくれています。

 そして、私は人生で初めて「家の中に主夫がいる暮らし」を経験することになりました。家事や子育てを全面的に担わなくてもいい状態。それがは想像以上にありがたいものでした。

 初日から、帰宅すると夕食の用意がしてあって。夫はこれまで料理をほとんどしてこなかったので、「家に晩ごはんがある」という事実が、胸にしみました。

 子どもたちは遠慮なしに、「え、今日これだけ!?」と初めの頃は言ってましたが、私にとっては、例えそれが焼いた肉とご飯だけでも十分。

 今まですべて自分が担ってきて、これを出すまでにどんなに大変だったかという事実を知っているからこそ、働いて帰ってきたとき、子どもと自分が食べる料理が用意されていること、それは本当にありがたかったんです。

◆料理は日々のプロジェクト。家事の見えない苦労とは?

 あのドラマの話ではありませんが、家事や料理のプロセスを知らない人が、つい口を出してしまう。これはどの家庭でも起こり得ることだと思います。

 家事、とくに料理となると、やったことがない人は、包丁でトントンと刻むあの瞬間だけを料理だと思いがちです。でも実際にやっている側からすると、料理はキッチンに立つ何時間も前から始まっている。

 朝、冷蔵庫を開けて、在庫を把握し、子どもたちの給食メニューをチェック。家族の好みや栄養バランスなども考慮して、「今日は何を作るか」を決める。

 メニューの大枠が決まったら足りない食材を洗い出し、買い物へ。この買い物が結構な肉体労働で、重い荷物を持って帰ってきて、それでやっと、料理のスタートラインに立つんです。

 さらに、「残ったアスパラをどう使うか」「開けてしまった豆乳をどう使い切るか」など次の日、その次の日のメニューまで想像を膨らませていく。料理は今日だけで完結しない、過去から未来へとつなぐ「数珠つなぎ」のような壮大なプロジェクトマネジメントなんです。

 それを知らない料理をしたことない人ほど文句を言いがちで(笑)、ほんの少しでも賞味期限が切れていると絶対に食べないとか、同じ食材は続けて食べたくないとか言えるのは、この数珠つなぎの家事プロセス知らないからこそ出てくる言葉。やっている側としては、「もうそんなのは主婦の感覚でやっていますから」と言いたくなる瞬間もあります。

 そして、よく語られる料理の上手い下手という話。それって、ずっと後の話なんです。

 大事なのはまずやるか、やらないか。週末の趣味で作る料理ではなく、家族を生かすための「日々の料理」をやったことがあるかないか。そのずっと先に上手い下手があるんですよね。料理という家事はそれほど、家族の生活の根底にあり、必須のものだと思っています。

◆働く側の視点から見えた“家事を担う人”の社会的意義

 いわゆる家事をする側を担っていたからこそ、働く側の立場として、家で料理を作ってくれる人つまり「専業主婦(夫)」という存在がいかにありがたい存在なのかというのを、ハワイに来て改めて痛感しました。

 もちろん、「専業主婦」という生き方が減っていくことは、女性の自立とか、日本経済全体の活性化という面ではとてもポジティブな進化だと思っています。

「結婚=家庭に入るべき」という古い価値観から解放されたということだけでなく、自分がどうしていきたいかで選んでいける世の中で、それがインフラとして整っている。女性に限らず、「自分の人生を選べる社会」になってきたのは、大きな進化だと思っています。

 ただ、その一方で、かつて社会に根づいていた「専業主婦」という仕組みは、社会を支える大きな価値を持っていたのだとも感じるんです。

 だからこそ、“働いていないから……”と引け目を感じる必要なんて本当にありません。家を整え、家族の生活をまわすというのは、立派で価値ある「仕事」です。特に子どもが小さいうちは、その価値はよりいっそう大きいものになります。

 そして、これまで、夕方になると子ども達それぞれの帰宅時間と習い事などへの送迎をしなければならず、100%仕事に集中することができない状態でしたが、夫が家にいてくれることで、夕方までたっぷりと働くことができるのです! なんという贅沢!!

 さらに、アメリカでは13歳未満の子どもをひとりで留守番させてはいけないというルールがあり、学校も基本的には送り迎えが必要。そうした環境の中で、夫が“家の土台を支える役割”を担ってくれていることが、どれほど大きな支えになっているかを、私は日々実感しています。

◆「無償の愛」で共働き家庭を支える「おばあちゃん」の存在

 さらに言えば、その先にいる“おばあちゃん”の存在も、忘れてはいけないと思うんです。

 私の母はずっと専業主婦でした。いま孫は6人。私は3兄弟なんですが、私たち3家庭はすべて共働きなので、母は文字通りフル稼働。「おばあちゃんの予約表つくったほうがいいんじゃない?」と思うほど、誰かが困るたびに母が駆けつけてくれる。

 間違いなく、母が3世帯の共働きを陰で支えてくれているんです。

 でも、共働きが当たり前になって、現役世代の定年延長が進むと、今のおばあちゃん世代のような“育児にコミットできる祖父母”は将来的に確実に減っていく。家庭のなかに存在していた“サポートのリソース”が、確実に消えていく未来が見えているんです。

 もちろんその分行政サービスや制度などは整いつつあるんですが、かつて専業主婦やおばあちゃんが担っていてくれた「無償の愛による柔軟な対応」の穴はそう簡単に埋められない。

 ライフスタイルが変わって、家庭にフルコミットをする人の存在価値を改めて感じました。

◆家事や育児にフルコミットすることにも社会的な価値がある

 もちろん、社会全体で働くことはいいことだし、日本経済のためにも不可欠です。私自身、誰もが自分の働き方を選べる今の時代は、とても健全だと思っています。

 ただ、その一方で専業主婦、そしてその先にいる“おばあちゃん”という無償の愛によるサポートの存在には、やはり計り知れない価値があるのだと、ハワイでの暮らしを通して強く感じました。

 だからといって、「女性は家にいるべき」という考えを推したいわけではもちろんありません。ただ、今の時代だからこそ、逆に「家事や育児にフルコミットする」という選択も、社会的に大きな意味を持つのだと思います。

 働くことも、家庭を支えることもどちらにも価値がある。どちらの選択にも誇りを持っていい。

 新しい生活の中で、私自身もこれまで持っていなかった観点に気づき、“人としての幅”が広がったように思います。
<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母

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