この事故の影響でスケジュールが変更される重苦しい空気のなか、予選から同国モータースポーツを代表するファミリーネーム、ネルソン・ピケJr.（スクーデリア・バンデイラス・スポーツ／ミツビシ・エクリプスクロス）が躍動。自身SCB通算2度目、このSUV世紀初のポールポジションを獲得すると、日曜メインレースでも他を寄せ付けず。ピケ家にとって盛大な祝賀ムードとなったポディウムにて、3度のF1世界チャンピオンである父ネルソン・ピケから優勝トロフィーを授与される完璧なポール・トゥ・ウインを飾っている。
大規模改修されたアウトドローモ・インテルナシオナル・デ・ブラジリアにて、11月28〜30日の週末に開催されたシーズン大詰めの1戦は、約2週間後に控えるインテルラゴスでの最終戦を前に例外的な措置を実施。今季新型車両導入のプラットフォーム刷新により、各ドライバーの年間12戦中最下位5戦のスコアが破棄される特例競技規則が採用された。
これによりブラジリア終了時の5戦破棄適用後、ランキング首位とのポイント差が137点未満のドライバーにタイトル挑戦権が残され、数学的には選手権首位の『史上最年少タイトル記録保持者』フェリペ・フラーガ（ユーロファーマRC／ミツビシ・エクリプスクロス）が、ランク2位のドライバーにそれ以上の差をつけて週末を終えた場合、このブラジリアでSUV時代の初代王座を先行獲得する可能性がある。
そのフラーガが金曜FPの両セッションで最速タイムを記録し、早速レースウイークの主役に躍り出るなか、ピットストレート前の“ターンZERO”ではビッグアクシデントが発生。事故は現地12時35分頃、FP1でバティスタがスピンを喫した際、高速で走行していたオリベイラのカローラクロスが側面衝突。接触は後輪と助手席ドアの間で発生し、車両から収集されたデータによると激突時のオリベイラは133km／hで走行していた。
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ストックカーの主治医であるFIA国際自動車連盟のディノ・アルトマン医師によると、この事故による衝撃の強さと性質にも関わらず、両者は「意識があり、容態は安定しており順調だ」とのことで、経過観察と検査のため入院を続けると発表された（その後、日曜を前に両名とも退院が許可された）。
この事故の影響でスケジュールが変更された後、日暮れが近づくとFP2直前には激しい雨が降り始めたが、ウエットセッションでも2016年チャンピオンが主導権を維持。首位フラーガは、波乱の一日の終わりにバティスタとオリベイラへの連帯を示した。
「今日、ブルーノ（・バティスタ）とJP（デ・オリベイラ）が無事だったことが何よりもうれしい。彼らに何が起こったのかは正確には分からないが、大したことがなかったのに安堵した。事故当時は非常に緊張していたし、サーキットにいる皆をとても悲しませた怪我を除けば、僕にとってはポジティブな一日だった。コースは新しく、まだかなり汚れている。明日はコースが2秒ほど速くなると思うよ」
そんな条件刷新の予言を残したフラーガは、土曜予選で主役の座を譲ることに。代わって首都ブラジリアの観光名所をモチーフにした特別カラーリングを施したエクリプスクロス33号車をドライブするピケJr.が、ギリェルメ・サラス（ヴァルダ・カヴァレイロ・スポーツ／シボレー・トラッカー）とフラーガを抑え、スナップドラゴン・ポールポジション・トロフィーを獲得してみせた。
「たとえ小説を書いても、これほどの感動は表現できない。昨日は大変な一日だったし、言葉が出ないよ」と、地元ブラジリアの大歓声にも大きく感情を揺さぶられたと明かす40歳。
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これで日曜に開催されるメインレースでは、ピケJr.がサラスとフロントロウを分け合い、午後の土曜スプリントではリバースで上位12台の順位が入れ替わり、ランキング2位のガエターノ・ディ・マウロ（ユーロファーマRC／ミツビシ・エクリプスクロス）が千載一遇、先頭発進のチャンスを手にする。
しかしセーフティカー（SC）が幾度も投入され、ドライバーとチームの戦略に大きな影響を与えた午後は、30分＋1周の間にグリーンフラッグ下での走行時間がほとんどなく。義務ピットストップの要件によりドライバーたちの成績に“多大な被害”を及ぼすことに。
終盤にかけてトップ3を形成したリカルド・ゾンタ（RCMモータースポーツ／ミツビシ・エクリプスクロス）、フリオ・カンポス（クラウン・レーシング／シボレー・トラッカー）、そして前戦クイアバでの今季初表彰台で勢いに乗る通算5冠の“帝王”カカ・ブエノ（スクーデリア・キアレリ／シボレー・トラッカー）らは、義務ストップ手順が消化できず失格処分に。代わって10番手発進だったフラーガが勝利を祝い、2度目のチャンピオンシップ獲得に向けて大きな一歩を踏み出した。
「今日は幸運だった。クイアバで僕を混乱させたのと同じセーフティカーが、今日の勝利をもたらしてくれたんだ」とフラーガ。「この勝利を1歳の息子、ダニエルに捧げたい。（妻の）ヴァネッサ、彼と家族を本当によく世話してくれてありがとう。完璧でいてくれて感謝しかないよ」
土曜の結果を受け、各ドライバーがSCの介入を警戒して義務付けられたピット作業をできるだけ早く行う戦略を採用した日曜は、レース残り23分でタイヤ交換を行わずにコースに留まったのはフェリペ・バティスタ（CARレーシングKTF／ミツビシ・エクリプスクロス）のみ。その時点でフェリペはピケJr.に約40秒の差をつけてトップに立つ。
しかし直後。他車がトラブルに見舞われコース上でストップしたことで、その差は帳消しに。やはりSCが投入され、ここでフェリペが失意のピットイン。フラーガが2番手、フェリペ・マッサ（TMGレーシング／シボレー・トラッカー）が3番手を追走するなか、再開後の残り10分強で素晴らしいフィニッシュを迎えたピケJr.が、ブラジリアでの圧倒的な勝利を確定させた。
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「レースは50分（＋1周）だったが、僕には5時間にも感じられた。ただ集中力は非常に高く、自分自身、妻、家族、そしてスポンサーのためにこの結果を出さなければならないというプレッシャーも大きかった……自分自身にかなりのプレッシャーを掛けていたよ。でも、すべてがうまくいった。ブラジリアとこの街の人々、そしてこの満員のサーキットに心から感謝している」
最終盤にルーカス・フォレスティ（A.マティアス・ヴォーゲル／シボレー・トラッカー）がマッサを抜いて3位に入り、SCBでふたたび表彰台に返り咲いたが、ブラジリアでほぼ完璧なパフォーマンスを見せたフラーガはワースト5戦（合計60ポイント）を帳消しにした合計856ポイントを獲得することに。
これでタイトル獲得のチャンスは週末に40ポイントを獲得し、20ポイントを帳消しにした合計742ポイントで追随する選手権2位の僚友ディ・マウロとの一騎打ちに絞られ、12月12〜14日の週末にサンパウロ州インテルラゴスのホセ・カルロス・パーチェで決着の刻を迎える。
[オートスポーツweb 2025年12月04日]
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