「こうなったら最後まで攻め続ける」追い上げるノリスに対し、自力で表彰台に挑んだサインツ【F1第23戦無線レビュー(2)】

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2025年12月04日 17:00  AUTOSPORT web

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2025年F1第23戦カタールGP カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
 2025年F1第23戦カタールGP。レース後半、2回目のタイヤ交換を終えたランド・ノリス(マクラーレン)は表彰台圏内に戻るべく、必須に追い上げていた。しかし前を走るアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)の攻略に苦労し、その一方で3番手を走るカルロス・サインツ(ウイリアムズ)は転がり込んできた表彰台のチャンスをものにしようとしていた。カタールGP後半を無線とともに振り返る。

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 レース中盤の24、25周目にピットインしたマクラーレンのオスカー・ピアストリ、ランド・ノリスは4、5番手まで後退していた。

ピアストリ:全員が32周目に入るんだよね。トム・スタラード:その通りだ。

 そこで再び首位に立てたとしても、マクラーレンのふたりはもう一度ピットインしなければならない。7周目のセーフティカー(SC)でステイアウトした戦略が誤りだったのは、この時点でほぼ明らかだった。

 30周目。9番手のシャルル・ルクレール(フェラーリ)はジョージ・ラッセル(メルセデス)を抜きあぐねていた。

ルクレール:毎ラップ、チェックしてよ。ジョージはターン10で何回も出てるから。

32周目ジャンピエロ・ランビアーゼ:よし、これが最終周だ。タイヤを使い切れ!フェルスタッペン:レース終盤も、同じ指示を頼んだぞ。

 32周目、フェルスタッペンを先頭に15台のマシンがピットに駆け込んで行った。ピットでは、オリバー・ベアマン(ハース)が発進しかけて、急停止した。

ベアマン:ああ!!ロナン・オヘア:ノープッシュ、ノープッシュ!

 慌てて止まるベアマン。タイヤ交換作業が完全に終わっていない状態でピットアウトしかけたとして、ベアマンには10秒ペナルティが科された。

ベアマン:シグナルはグリーンになっていたよね。オヘア:ああ、その通りだ。申し訳ない。

34周目ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ガスリーのタイヤを見る限り、左フロントのささくれが少ない。

 7周目のピットインで、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)だけがハードタイヤを選択した。その状態をレッドブル陣営は注視しており、32周目にハードに履き替えたフェルスタッペンに、その情報を与えた。

37周目ピアストリ:もうちょっと考えないといけないね。セーフティカーを待つのか、ペースで上回るのか。スタラード:ターゲットより1周早く入るかもしれない。

 ピアストリは2セット目のミディアムタイヤでのペースに、明らかに手こずっていた。2番手ノリスも必死にプッシュするが、挙動が安定しない。

ノリス:チェックしてくれ。コースオフしてダメージがあるかも。

39周目ピアストリ:いっそ、今入った方がいいんじゃないの?

40周目サインツ:アントネッリのラップタイムを毎周教えてくれ。ガエタン・イエゴ:今は(1分)24秒4、1周前は(1分)24秒6だった。

 フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)はグリッド順位からふたつ上げた6番手を快走していた。

クリス・クローニン:あと18周だ。アロンソ:了解。すべて順調だ。

オヘア:この周にピットインしてペナルティを消化する。ベアマン:何だって?オヘア:危険な状態でクルマを出したということだ。

 40周目にピットインしたベアマンは次周に再びピットへ。そのままリタイアとなった。

 41周目、アロンソが単独スピンを喫し、2台に抜かれて行った。

アロンソ:ワオ、やっちまった。クローニン:ああ。車体をチェックしているが、大丈夫そうだ。

 これでアロンソは8番手に後退。最後は7位入賞を果たした。

スタラード:24秒を切るペースで走れるか?ピアストリ:厳しいね。今はそれ以外の選択肢が見えない。スタラード:わかった。そうしよう。この周でボックスだ。

 2回目のピットインではソフトを履く選択肢もあったが、それでは最後まで持たないという判断だったのだろう。

ランビアーゼ:オスカーが早めにピットインして、追いかけるつもりだ。フェルスタッペン:マクラーレンのペースを教えてくれ。ランビアーゼ:ピアストリのラップタイムは(1分)23秒0だった。

45周目ランビアーゼ(→フェルスタッペンに):自由にプッシュしていいぞ。

 レース終盤、サインツは3番手を走り、表彰台が目の前だった。背後にはノリスが迫るが、ペースは悪くない。

46周目サインツ:僕らのペースからしたら、ノリスはアントネッリの後ろで手こずるんじゃないかな。イエゴ:ターン12と13の縁石に気をつけろ。サインツ:もうこうなったら、最後まで攻め続けるよ。

 すぐ後ろのアントネッリにDRSを使わせてノリスを防ぐことも考えたようだったが、自力で表彰台をつかむことを選択した。

 47周目。残り10周の時点でピアストリと首位フェルスタッペンのペース差はコンマ数秒しかなく、首位奪還は事実上不可能だった。

ピアストリ:僕はどれくらいのペースが必要なんだ?スタラード:フェルスタッペンの最終ラップは(1分)23秒8だった。それより1秒速くないと。ピアストリ:ああ。それは素晴らしいね。スタラード:できるだけプッシュし続けよう。

47周目ランビアーゼ(→フェルスタッペンに):残り10周だ。左フロントタイヤだけ気をつけろ。ピアストリとのギャップは、14秒だ。

50周目ハジャー:何かが動いている。左フロントだ。アムラン:ああ、問題ないようだ。あと8周だぞ。

サインツ:オー、ノー。コースオフして、何かが落ちた。イエゴ:タイヤ内圧は大丈夫だ。サインツ:左のフロントウイングだ。イエゴ:プレッシャーは問題ない。

ジョゼフ(→ノリス):サインツはフロアにダメージを受けているぞ。

アムラン:フェイルA1、フェイルA1だ。ハジャー:なんだって?アムラン:緊急だ。フェイルA01。ハジャー:ダメージだね。アムラン:パンクチャーだ。

 6位入賞目前だったハジャーは、無念のリタイアとなった。

 チェッカー2周前、アントネッリが挙動を乱した隙にノリスが先行し、4番手に上がった。

アントネッリ:コースオフした。ボニントン:ああ、見ていたよ。

 57周を終え、フェルスタッペンが今季7勝目を挙げた。一方で勝てたはずのレースを落としたピアストリの声は、重く沈んでいた。

フェルスタッペン:信じられないよ。素晴らしい戦略だった。最高だ。本当にありがとう。

ピアストリ:……もう、言葉もないよ。

[オートスポーツweb 2025年12月04日]

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