“元セクシー女優”が回想する「母にセクシー女優になった」と打ち明けた夜。「人気絶頂で引退した理由」も教えてもらった

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2025年12月09日 16:10  日刊SPA!

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美谷朱音さん
 2025年11月24日、ROKUSAN ANGEL(旧バーレスク東京)にてダンサーとしてデビューした、美谷朱音さん。言わずと知れた、元超人気セクシー女優だ。アダルト業界を席巻した彼女の再スタートから間もなく、本人を直撃した。
◆3歳から16歳までダンスを習っていた

――ダンサーデビュー、おめでとうございます。美谷さんはセクシー女優としてデビューする以前からダンスに打ち込んでいたと伺いました。

美谷朱音:ありがとうございます。3歳から16歳まで、ヒップホップを筆頭にさまざまなダンスを習いました。母は私にバレエを習わせたかったらしいのですが、教室に連れて行った私があまりにも楽しくなさそうで、ダンスに切り替えたようです。その後、通っていたスクールが主催する東日本大会で団体優勝も経験しました。

――かなり練習したのではないでしょうか。

美谷朱音:もちろんダンスは好きで、とても楽しんで打ち込んではいましたが、“しのぎを削って練習した”といえるほどはやれていなくて。もともと、努力を高いレベルで続けられない自分の性質に対して、多少コンプレックスみたいなものがありました。「もっと突き詰める子はいる」とわかっているのに、そこまでの努力ができない自分がいました。よく「死ぬ気でやった」といいますが、とてもそんなことを口にできるレベルではなかったと思います。

◆なぜセクシー女優になったのか

――それでも、中学校との両立もたいへんそうですね。

美谷朱音:確かにダンスを中心に生活を組み立てていたので、比較的負担の少ない部活に入るなどの配慮はしていましたね。ちなみに、中学校時代は科学部に所属していました(笑)。学校にある木の名前を調べて、ネームプレートを作ってかける……みたいな活動を覚えています。

――意外と地道な部活ですね。そこからセクシー女優になる絵が浮かばないのですが(笑)。

美谷朱音:社会人になったばかりの頃、あまり待遇のよくない会社に入社してしまって。おまけに社内で既婚者と不倫してしまって問題になったこともあり(笑)。そこから慰謝料問題にまで発展しました。誰にも言えなくて悩んでいたのですが、あるとき、性的嗜好品のモニター募集を見つけて応募したんです。その担当の方が言うには、モニターは応募が多すぎてあまり仕事にありつけない可能性もあると。ただ、セクシー女優としてなら、「君なら3人くらいいるオムニバス作品のひとりにはなれるよ」ということでした。そして、「それならバレないよ」と。

◆母には「セクシー女優になった」と打ち明けた

――それを聞いて、どう感じましたか。

美谷朱音:素直に「なるほど、私はそのくらいの位置なのか。バレないのか」と思いましたね(笑)。ちょうど副業もしたかったし、いいかなと思って最初は始めました。ただ、「バレない」はずだったのに、いざDVDが発売されてみると、ピクチャーバナーに「大型新人デビュー!」みたいな煽りがついていて、驚きましたが。ほどなくして、親切な人が「たぶんもっと有名になっちゃうから、会社で話題になってしまうし、本業はやめたほうがいい」と言ってくれて、そうなりました。

――これほど有名女優になると、ご両親などにバレませんか。

美谷朱音:実は母にだけは、自分から言ったんです。母との関係はいろんな感情があって、一言では言えないんです。母はとにかく弁が立つ人で、父を毎回口で言い負かしてしちゃう強い人です。物心ついたときから結構な不仲で、私の高校入学とほぼ同時に離婚するのですが、私自身、どこかで母が怖くて反論したり意見を言ったりがあまりできませんでした。

 私がセクシー女優になったのが2017年。そこから結果を残してさまざまなアワードを受賞できた2020年に、母と2人きりで旅行へ行きました。ふたりとも結構飲んでいて、「よし、今なら言える」と思って思い切って打ち明けたんです。酔っ払って機嫌が良くなっていた母は、「ウケる! 有名な男優に会った?」などとはしゃいでいました。が、朝になって起きてシラフになると、我に返ったようで落ち込んでいました(笑)。

◆人気絶頂で引退したワケ

――人気絶頂で引退というのは、どういう心境の変化ですか。

美谷朱音:私はいわゆる“営業用のキャラクター”がないんです。良くも悪くもこのままだし、自分の素で成功できるところまでいけたと思っています。自分らしさを失わずにやれることはすべてやって、天井に到達したなという感覚があります。

 そして、私はこの業界でさまざまなことを学び、育ててもらいました。ある日いきなり引退、という人も大勢いるなかで、引退日を決めて、その1年近く前から宣言をしてファンの皆さんにお別れができたことは、幕の引き方としてはよかったと個人的には思います。

――ファンの方たちに対する思いが伝わってきます。

美谷朱音:私はこれまで、縁があってファンになってくれた人に届くイベントをしようと企画をしてきました。セクシー女優のイベントは、秋葉原にあるDVD屋さんで発券日にDVDを購入した人がイベントに参加できる仕組みです。来てくれる人に対してはもちろんありがたいと思っているのですが、反面、お仕事の都合で来られない方や遠方の方がどうしても参加しづらいだろうと心配していました。そこで、事務所主催でイベントを定期的に開催するなど、積極的に触れ合う機会を作ってきたつもりです。また、リアルに会えるイベントの開催はもちろん、ツイキャスを13時間決行したこともあります(笑)。

◆ダンサーとセクシー女優、一番の違いは?

――ROKUSAN ANGELのダンサーもセクシー女優も、人に見られる仕事だと思いますが、どのようなところに差がありますか。

美谷朱音:作品は、監督さん、男優さん、アシスタントさんなどと一緒でみんなで作っていくものですが、もっとも前面に大きく出るのは私の名前です。いろいろな事情があってそこに至っても、「最近の美谷の作品は〜」というふうに語られます。そのあたりのチーム戦ならではの難しさはずっと感じていました。作品が良かったかどうかは、売上やファンイベント、レビューなどの一部の要素で測るしかありません。けれどもROKUSAN ANGELの舞台で踊る以上は、全方向から見てもらえます。

 それに関連して、双方向のやり取りがROKUSAN ANGELでは可能なのも嬉しいですね。たとえば私の作品を見てファンの方が満足する姿は見ることがないわけですが(笑)、ROKUSAN ANGELではリズムに乗って楽しむお客さんを見ることができます。そうした違いがあるのではないでしょうか。

――今後の目標などを教えてください。

美谷朱音:一つは、これまでの私をみてくれたファンの人たちに、舞台で舞う自分を見せたいです。そしてもう一つは、ROKUSAN ANGELに以前から通ってくれているお客さんにからも、「美谷がセンターでもいい」と思ってもらえるまで、精進することです。24日はデビューイベントだったのでセンターで踊らせていただきましたが、通常営業になれば端で踊ることもあります。ステージ全体を支えられる力量を早く持てるよう、邁進したいと思っています。また、5月25日には私の誕生日イベントを行えるように、舞台を任せてもらえる存在になることは、直近の目標ですね。

――お誕生日って4月15日ではなかったでしたっけ。

美谷朱音:それは女優としてのデビューにあたって、事務所が与えてくれたものなんです。常々、誕生日イベントでファンの方に集まってもらったとき、「ファンのみんなも本当の誕生日じゃないってわかっててお祝いしてくれてありがとう」と思っていました(笑)。ダンサーとしては、プロフィールも素に近づけられるので、よりお客さんとの心理的な距離も縮まったかもしれません。そんな新たな美谷にも注目してもらえたら嬉しいです。

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 ひょんなきっかけから国民的セクシー女優への階段を上り詰めた美谷さん。言葉に嘘がなく、何事にもまっすぐに打ち込むひたむきさが伝わってくる。美谷さんにとってのダンサー転身は、容姿に恵まれたダンス経験者の勝ち戦ではなく、常に新たな自分にアップデートしていく彼女の途方もない挑戦だ。そんな女傑が舞台で咲く姿を見てみたい。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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