制御性T細胞、応用進む=がん新薬や自己免疫疾患で―ノーベル賞

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2025年12月11日 07:31  時事通信社

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時事通信社

ノーベル生理学・医学賞に選ばれた(右から)大阪大の坂口志文特任教授、メアリー・ブランコウ博士、フレデリック・ラムズデル博士=7日、ストックホルム(EPA時事)
 大阪大の坂口志文特任教授が発見した過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」は現在、その働きを活用してがんや自己免疫疾患の治療薬開発に向けた研究が進んでいる。

 制御性T細胞は、免疫が自らの組織を攻撃しないよう抑える「ブレーキ役」を果たしている。このため、病気に応じてブレーキの強弱を調整することができれば、自己免疫疾患では自己攻撃を抑制する一方、がん細胞に対する攻撃力を高めることができる。

 塩野義製薬は2014年から阪大と共同研究を進め、がん細胞内で活性化した制御性T細胞に現れるたんぱく質を特定。これを取り除く抗体医薬を開発中で、来年にかけて初期の臨床試験(治験)を実施している。共同研究を担う阪大の大倉永也特任教授によると、マウスを用いた実験では、多くのがんで縮小や消失が確認されている。

 慶応大の天谷雅行教授らの研究チームは、皮膚に水疱(すいほう)などが生じる自己免疫疾患「尋常性天疱瘡(てんぽうそう)」を対象とした治療法を検討している。炎症原因となる免疫細胞を、特殊な培養法で制御性T細胞に変換することで過剰な免疫反応を抑えるのが特徴で、マウス実験では症状の改善が確認された。

 現在の治療法は、ステロイドなどで免疫全体を弱めるため、感染症リスクの増加といった副作用が課題だ。研究チームは「病気の原因だけを狙い撃ちでき、副作用の抑制が期待できる」として、治験に向けた準備を進めている。

 このほか、臓器移植の際にドナー側の免疫が患者を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)を予防するため、人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の制御性T細胞を用いた基礎研究も進行中だ。

 坂口さんらも米国でスタートアップ企業「レグセル」を設立し、制御性T細胞を用いた治療薬の開発に向けた治験を検討している。 

このニュースに関するつぶやき

  • まぁ、今自己免疫疾患の最終兵器はステロイドぐらいしかないので新しい治療法が出来るのはありがたいことです。応用する中で違う発見もあるだろうしね。
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