写真 新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(44歳)。
40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。
第27回となる今回は、ハワイ移住3か月目になる、大木さんの英語奮闘記を綴ります(以下、大木さんの寄稿)
◆ハワイ移住3か月で見えた、リアルな英語力の現在地
10月にハワイへ赴任して、気づけばもう3か月。今回は、そんな私の「英語力」についてお話ししたいと思います。
ハワイは日本人も多く、日本人向けの旅行業に携わっていることもあって、社外のミーティングの8割ほどは日本語で進んでしまいます。とはいえ、残りの2割はどうしても英語が必要。
さらに、生活面では日常会話レベルで十分なものの、お店のスタッフに日本語が通じるケースは少なく、必然的に英語を使う場面が増えます。
今日も車のタイヤ交換に行ってきたのですが、「ディーラーで何かトゲのようなものが刺さって修理した痕があり、それを交換したほうがいい」と言われたんですよね。
「空気圧を測ると来年の車検は通らなそうだから、後ろのタイヤだけ今替えちゃってもいいかもねー」みたいな、一歩踏み込んで、専門的なワードが出てくると、急にハードルが上がってしまって。
私は、日本で一般的な英語教育を受けてきた、ごく普通のタイプ。帰国子女でもなく、海外生活も今回が初めて。特別英語が得意というわけでもありません。
そんな私が今どんなふうに英語と向き合っているのか。そして、これから必要だと感じている英語教育について。今日はそのあたりをお話ししていきたいと思います。
◆受験英語→ホームステイ→オンライン英会話。英語迷子の日々
私が、英語を一番勉強したのは、大学受験の時。単語と文法をひたすら暗記して、叩き込みました。正直英語はあまり得意ではなく、好きな科目ではありませんでした。
その後、大学時代、1か月のホームステイも経験しましたが、基礎力が足りなくて、「自信を持って英語を話せる」という感覚には至りませんでした。
そして、社会人になって学ぶことの贅沢さを感じ、旅行好きも後押しし、30歳ぐらいのときに、オンライン英会話をスタート。当時は30分200〜300円くらいで受講できたので、週2〜3回のペースで2、3年続けました。
このときに、はじめて英語が通じる楽しさに気づきました。Skypeを使って遠く離れた方と会話をすることも新鮮で、英語を話すという心理的ハードルがぐっと下がったように思います。
ただ、先生が変わるたびに、自己紹介ばかり上手になって、なかなか深い議論までに発展できないというのは、オンライン英会話あるあるかもしれません。
もちろん、同じ先生を指名して、建設的に学ぶこともできたと思うのですが、直前でも受講できるタイミングで入れたりしていたので、毎回違う先生になってしまう。それで、どうしても同じような会話ばかりしてしまっていました。
◆産休翌日にオーストラリアへ。私の英語力が伸びた理由
それから、ふたり目を妊娠中、今から約9年前のことです。
オンライン英会話がひと段落ついて、産休に入った翌日から、当時2歳の長女を連れて、オーストラリアへホームステイに行きました。
妊娠中の海外渡航はもちろん自己責任ですし、積極的におすすめされるものではありません。最初、私は1か月間、娘と一緒にホームステイをさせてもらって「妊婦だし、ホームステイ先でのんびり過ごそう」と思っていました。
ところが、長女をナーサリーに預けられることになり、日中にぽっかりと自由時間が生まれたんです。
それで、せっかくだしと思い、そこまで学びたい欲があったわけではないんですが、午前中だけオーストラリア・ゴールドコーストの語学学校に申し込みました。すると、語学学校には本当にいろんな国から学生が集まっていて、私より若いエネルギッシュな子たちも多く、クラスがとにかく楽しい。
学校のスタッフから「午後のクラスも来たいなら来ていいよ」と言われるくらいのゆるさで、でもそのゆるさも心地よく、結局すごく充実した時間になりました。
この1か月は、英語力がぐっと伸びた感覚がありました。帰国後にTOEICを受けたら思ったよりスコアがよく、英語試験が免除になったことで、通訳案内士の資格も英語で取得することができました。
◆私の英語学習を変えた2つのツール
それから、英語を学ぶことが一気に楽しくなっていきました。
とはいえ、しばらくは英語の“必要性”が日常になく、学習は少しずつフェードアウトしていたのですが、4年前旅行会社に転職をして、海外相手の仕事なので、ビジネス英語ができるようになりたいというタイミングが訪れました。
その時に出会ったのが、パタプライングリッシュという英語教材です。
パタプライングリッシュは、「チャンク × パターン練習」でサクッと話せるようになる英語メソッドを取り入れています。
よく使う型(パターン)を覚えて、単語を入れ替えながらどんどん口に出すだけ。繰り返し声に出すことでパターンが自動化されて、考えなくても英語がスッと出てくるようになりました。
アプリ教材なので、相手が人ではなく、スマホだけで完結する手軽さも魅力。私自身、初めて「これなら続けられそう」と思える手応えも感じました。でも「忙しい」「今日はやる気が……」と、いくらでも言い訳を見つけてしまい、だんだんとその意欲も下火に。
そんな中でハワイ赴任が決まったタイミングで出会ったのが、AI英会話アプリの「スピフル」です。
「スピフル」はレッスンをクリアすると称号バッジが手に入ったり、学習の連続記録が残ったり、ゲーム感覚で取り組める工夫がされているので、学習が続けやすい。また、自分の英語力の感覚より「やや簡単」と思える文法を使ってガンガンしゃべることができます。
AI相手なので、間違えても恥ずかしくない。しかもAIのフィードバックがあって、私の英語をきちんと評価してくれるから、達成感も味わえます。
いまは毎朝、ワイキキの職場まで車で20分ほど通勤しているのですが、個室空間なので声も出し放題。車の中が“最適な英語学習ルーム”になっています。
この通勤時間が、英語学習にはもってこいで、音声特化のパタプライングリッシュを再開。少しずつ軌道に乗り始めているところです。
車内では、超バリバリのビジネスパーソンに紛して、誰にも聞かれることなく、部下に英語で指示を出しまくっています。(そういう教材の内容なんです! とっても楽しい!)
そして、隙間時間や、子どもの見守りのタイミングではスピフルでゲーム感覚で学習…といった形で、無理なく時間を作ることを意識しています。
◆8割の理解とAI。これが私のハワイでの英語スタイル
現在のリアルな英語レベルとしては、ネイティブの方が容赦ないスピードで話し始めると、正直8割くらいしか理解できません。ただ、会話の文脈はつかめるので、「何について話しているのか」や大まかな方向性は把握できています。
とはいえ、商談はミスが許されない場面なので、最終的には必ずテキストで内容の確認を入れるようにしています。ここに関しては、AIの力が本当に大きい。Geminiなどを使えば、トーンまで含めて「こういうメールを作って」と指示を出すだけで、必要な英文メールを整えてくれます。
おかげで、テキストでのコミュニケーションに関しては、日本語とほぼ同じスピードで対応できるようになりました。
この時代にハワイにこられてよかったなと思います。
◆AI時代の英語のゴールは“正しさ”から“人間らしさ”へ
AIは、英語学習そのものを大きく変えた。いま、私はそれを強く実感しています。
以前は「正しい文法で書ける・話せること」がゴールでした。でも今は、その“正しさ”はAIが簡単に補ってくれます。つまり、人間が英語でやるべきことは、以前とはまったく違うステージに移ったのだと思います。
ハワイに来て、本当に必要なのは、私の人柄や、人格、バックグランドのような「私らしさ」を英語にきちんとのせてコミュニケーションを取ること。そこから信頼関係をいかに築けるかというところが大切だなと感じています。
商談の内容は今の英語力でもなんとか理解できます。でも、ちょっとした雑談や、話題がふわっと広がっていく瞬間になると、ニュアンスが急に難しくなる。
ジョークが拾えなかったり、笑うタイミングを逃したりすると、「ああ、ここに一番“人間らしさ”が出るんだ」と痛感します。
今の私が目指すべきなのは、“正しい英語”ではなく、“私という人間を表現できる英語”。AIが強力になったからこそ、英語のゴールがそこに移動したのだと、本当に実感しています。
◆ハワイで気づいた、英語の本当の目的地
これが、今の私のハワイでの英語生活のリアルになります。
日本で英語を学んできた、特に私と同世代の方の中には、大学受験のために詰め込み型で勉強して、その“受験英語”のところで止まってしまい、「なかなか上達しないな」と感じている方もいるように思います。
努力しているのになかなか前に進めないと感じるのは、実は“勉強量”の問題ではなく、“ゴール設定”の問題なのかもしれません。
これから必要なのは、「正しい英語」ではなく、「私という人間を伝えられる英語」。
AIが文法や表現の正確さをサポートしてくれる今、私たちが向き合うべきゴールは、きっとそちら側にある。私自身も、英語のゴールをそこへ置き換えなくてはと、ハワイでの日々の中で強く感じています。
<文/大木優紀>
【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母