「麺しか食べないちゃん」さん 飽食の時代、寿司・焼肉・カレー・スイーツなど、あらゆるものが好きな時に食べられる日本。そんな状況にあって、徹底的に同じものを食べる人も存在する。年間で数百杯の麺料理を食べている女性、その名も、「麺しか食べないちゃん」さん(31歳)もその一人。
「麺類に人生を捧げている」といっても過言ではない彼女は、どのような生活を送っているのだろうか。また、麺類といえば、カロリー・脂質・塩分も気になるところだが、体調や体型の変化はないのか? 本人の口から語ってもらおう。
◆2025年は700杯を超えるペース
麺しか食べないちゃんさんは、2024年には574杯、2025年は現時点(12月9日)で既に682杯もの麺料理を食べており、700杯を超えるペースだ。
それにしても、極端に麺類を食べるペースが上がったのは大学時代だという。なにがあったのか。
「一人暮らしを始めて、自分の好きなものを食べられるようになったのが大きいですね。大学のお昼休みにラーメンやうどんを食べて、休憩時間にもカップ麺を食べて、家に帰って晩御飯にパスタを作るような日々。まさに“麺だけ生活”を謳歌する感じですね」
しかし、麺好きな気質は幼少期の時点ですでに表面化していた。
「親にしょっちゅうねだるほど、リンガーハットが大好きでした。最初は、お子様メニューについてくるオモチャが目当てだったとは思うんですが。小学生になると、おやつにお菓子ではなくカップ麺や冷食のラーメンを食べていました(笑)」
◆自覚したのは高校生のとき、友人が…
子どもの頃は自分の麺好きが「他の人と比べて」ということには気がつきにくいもの。そんな中で起きた、ある出来事が麺しか食べないちゃんさんの「自覚」の一歩目となる。
「高校時代、友だちと『お昼、何食べようか?』という話になると、私は必ず麺の選択肢ばかりあげていました。その友だちが、裏で『あの子と遊んだら、昼ご飯は絶対ラーメンになる』と言っていたらしくて。『私、ちょっとおかしいのかな』と気づきました(笑)」
陰口というほどのことではないそうだが、オシャレなカフェにも行きたい年頃だろうから、友人の気持ちもわからなくはない。
◆麺以外の食事は、だいたいお寿司やステーキ
年間700杯ペースとなると、気になるのは健康診断の結果だ。カロリーの高さや脂質、さらに「濃い味が大好きで、二郎系ならカラメでアブラはマシで食べます」と明言する彼女の場合、塩分過多からくる高血圧も心配になる。
「去年初めて人間ドックを受けました。コレステロールはやや高かったんですが、その他は全く問題ありませんでした。食べる杯数は年々増えているんですが、体型や体調も変化はないですね。元来身体が弱いタイプだったんですが、麺を食べるペースがあがるほど、むしろ体調を崩さなくなりましたね。毎日、幸せな気持ちになれるので精神的に安定していますし」
だとすると、麺以外の食事をサラダにしたり、運動を習慣的にしていたりと、身体の管理を行っているのだろうか。
「全然やってません(笑)。麺以外の食事は、だいたいお寿司やステーキですし、ジムも契約はしていますが、ほぼ行っていません」
◆両親から「記事」が送られてくる
数値として問題はなくても、近しい人にとっては肌感として心配な感じがありそうにも思える。
「旦那はそんなに心配していないみたいです。仕事の関係でいつもではないんですが、半分くらいは私の麺に付き合ってくれていて、むしろ、私が毎日麺を食べているのを見て『それだけ麺食べてるのに、何も発信しないのはもったいなくない?』と言われて、SNSに投稿をはじめたくらいなので」
一方で、ご両親の反応は異なるもので……。
「親にはめっちゃ心配されます。例えば、『ラーメンを食べ過ぎることで死亡率が上がる』みたいな記事を見つけたら、すぐにLINEで記事のリンクを送ってきて。これ見よがしに『ほら、もうやめたほうがいいよ』と注意喚起されます(笑)」
◆なぜ「1日6杯」食べられるのか
少なくとも1日1食以上は麺を食べる日が何年も続いている彼女の生活。その記録が途切れそうになったことはないのだろうか。
「例えば、ランチで麺を食べなくて、夜に飲みに行くと『あ、今日は麺を食べてない』って思うこともあるんですが、家に帰ってペペロンチーノを作って食べたりします。記録のためではなく、進んで食べたくなるんですよ(笑)」
また、旅行に行くと、観光スポット巡りもそこそこに、現地にしかない麺を食べるのに忙しいという。
「居酒屋も大好きなので、旅行に行くと夜は5〜6軒はしごするんですよ。だから、朝と昼だけですが、2泊3日で10杯以上は食べますね。最大で1日6杯食べたこともありました」
見た所、ほっそりした体型の彼女が1日6杯は食べるのには驚きだ。
「大食いというわけではないんですよ。なので、連続で麺を食べるときは、時間を空けないようにしています。満腹中枢が気づいてしまう前にいろんな麺を食べたいから、脳みそをだましながら食べます(笑)。大食いだったらどんなに幸せだろうかと思いますね」
◆「北九州から引っ越したくない」と思わせる店
そんな麺しか食べないちゃんさんに、この先の目標を聞くと「生まれ育った北九州が大好きなので、地元の美味しい麺をたくさんの人に知ってほしい」とのこと。そこで最後に北九州でのおすすめ麺を聞いてみた。
「一番は、辛麺屋 十九力(とくりき)です。辛麺のお店ですが、スープ自体が醤油系で美味しいので、小さなお子さんを連れてこられて辛さゼロで召し上がる方も多いです。それに、煮込んだニンニクが入っていてパンチが効いていますね。このお店があるから、北九州から引っ越したくないと思うくらい好きです。それから、二郎系の『ヤドカリ』。二郎系でありながら上品な味わいがあるので、初心者や女性にもオススメです!」
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今のところは、健康体を保ち、日々楽しく麺ライフを過ごす彼女。無理なく、永く麺を食べ続けてほしいものだ。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。