【カーリング】女子日本代表が8大会連続の五輪出場! 「震える」戦いのなかでチームの支えとなった言葉

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2025年12月13日 07:40  webスポルティーバ

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 カナダ・ケロウナで行なわれたカーリングのミラノ・コルティナ五輪最終予選で女子日本代表のフォルティウスが、チームとしては初の、女子日本代表としては1998年長野五輪から8大会連続の五輪出場を決めた。

 出場8カ国の最終予選で割り振られた五輪切符は2枚のみ。まずは総当たりの予選を日本は6勝1敗の2位で突破したが、アイスを読みながらの対戦となった序盤のドイツやオーストラリアといったカーリング新鋭国の丁寧なプレーに対し、ラストロック(最後の一投)を投げさせられるなど、ラクに勝てる試合は少なかった。

 我慢を強いられるゲームやエンドも多かった。大会前にサードの小野寺佳歩が腰痛を発症し、フィフスの小林未奈がセカンドに入り、セカンドの小谷優奈がサードにスライドする布陣で挑む試合もあった。しかし、23歳の小林は出場した試合でショット成功率90%、82%という高い数字をマーク。いずれも相手選手に投げ勝つハイパフォーマンスを見せて、フォルティウスの選手層の厚さを見せつけた。

「最終日に向けて戦術の強度を上げていきたい」とリードの近江谷杏菜は語っていたが、その言葉どおり4戦目のチェコ、5戦目のトルコ、6戦目のエストニアにはいずれも5点以上の点差をつけて大勝。予選最終戦のノルウェー戦では打ち負けて2位通過となったものの、「自分たちのゲームさえできれば、絶対勝利がついてくるっていう自信は常にあった」とスキップの吉村紗也香は振り返る。

 ノルウェーとの再戦となった代表決定戦。勝てば五輪出場が決まる試合で、さすがの吉村も「正直、緊張はしていました。いつも飲むコーヒーも少しだけしか飲めなかった」と明かす。序盤、予選では出場全フォース選手のなかで最高ショット率を残していた日本のエースにもミスが出た。

 それでも、「(チームメイトが)すごくいいセットアップをしてくれていたのですごく申し訳ないと思いながら、でも挽回するショットはしっかり決めきろうっていう気持ちの切り替えはできていた」という吉村は、すぐに立て直しを図った。このいい意味での開き直りこそ、近年のフォルティウスの強さだ。

 その支えとなっているのは、「前後裁断(前後際断)」。2023年WBCで頂点に立った侍ジャパンのヘッドコーチを務めたことでも知られる、白井一幸メンタルコーチがチームに伝えている言葉だ。禅の教えで、過去や未来にとらわれず、今この瞬間に全力を尽くして生きるという意味を持つ。

 大会前、チームはケロウナにある日本寺を訪れ、10分間、呼吸に意識を置きながら瞑想する時間を設けたが、奇しくもお寺の住職から受けた説法も「過去とか未来とかにとらわれずに今に集中するという話で、自分たちがやってきたことと同じでした」と近江谷。選手それぞれがあらためてその言葉を胸に刻んで、試合中は勝敗も五輪も忘れてチームのショットに専心した。

 五輪出場を目前にしたしびれる一戦ではあるが、振り返ればフォルティウスは9月に稚内で行なわれた日本代表候補決定戦で、ロコ・ソラーレ、SC軽井沢クラブとの死闘を演じてきた。しかも、そこでの8試合のうち5試合は、負けたら五輪への道が絶たれる、という背水の陣で臨んだ戦いだった。

 そうした経験もあって、大一番での戦いを「楽しめるし、震える」と振り返ったのは小谷だ。「その時に自分たちができることをやったら結果がついてくる」――。

 彼女はこのノルウェー戦、同点で迎えた10エンドで勝利を手繰り寄せるダブルテイクアウトを決めて笑顔を見せた。このダブルテイクアウトもあって、日本は優位な局面を保持。先攻のノルウェーのフォース、クリスティン・スカスリーンに難しいショットを残すと、スカスリーンはナンバー1ストーンを奪えずに日本の勝利が決まった。

 長年の悲願であった五輪出場を決めたフォルティウスは、スカスリーンのラストショットが惜しくも決まらずに勝利が確定しても、歓喜を爆発させるようなことはしなかった。ノルウェー代表のメンバーが勝者を讃える握手のために差し出した手を、近江谷も小谷も小野寺も吉村も相手の目を見て感謝を伝えながらしっかり握り、その後、チームで円を作りセレブレーションを行なった。

 対戦相手に敬意を忘れない、ナショナルチームとして、そして五輪代表としてふさわしいチームの振る舞いだった。

 吉村は試合後、「ホッとした気持ちが一番でその後にうれしさがこみ上げてきました」と満面の笑顔を見せた。

 次はいよいよイタリアへ。その前にチームはカナダ国内を移動し、スウィフトカレントでグランドスラムを戦う。そこにはスウェーデンやスイス、カナダ、韓国といったひと足先にイタリア行きを決めた各国代表チームが待っている。最大の目標である「五輪で金メダル」のためには倒さなければいけない好敵手ばかりだ。

 彼女らの旅は、これからが本番だ。

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  • なんでカーリングは全日本選抜ではなくて、特定のチームだけで出場させるのか?バレーでいえば日本代表に東レとかNECが出るようなもの。チームではなく上手い選手を選抜すればいいのに。
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