
稲垣吾郎が、2026年2月7日から開幕するPARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」で傑作ラブコメディーに挑む。本作は、劇作、俳優、作詞、作曲、映画監督と多彩な才能を発揮したマルチアーティスト、ノエル・カワードによるラブコメディー。高級アパートメントの一室を舞台に、実力とカリスマ性を兼ね備えた俳優ギャリーの元を個性的な面々が訪ねてきて、騒動を巻き起こす。稲垣に本作への意気込みを聞くとともに、2025年の活動を振り返ってもらった。
−出演が決まったときの心境を教えてください。
まず、お芝居ができることがうれしいです。パルコさんにはずっとお世話になっていますが、こうした大人のラブコメディーやクスッと笑える作品に出演することが多かったので、また帰ってこられるんだという喜びがあります。僕自身もそうですが、きっと見に来てくださるファンの方もPARCO劇場にはいろいろな思い入れがあると思います。新しくなってからは初めてですし、渋谷の街も大好きなので、そういう意味でも今回、出演できることがうれしいです。
−台本を読んだ感想は?
ノエル・カワードは古い映画で見たことがあったくらいなので、これからまた勉強し直そうと思っているところですが、1942年の初演時にこの物語を上演したというのはすごいことだったのではないかと思います。普遍的な面白さがありながらも、スキャンダラスで刺激的で、見てはいけないものを見ているような感覚で楽しかっただろうなと。今見てもそれは変わらないと思います。刺激的なものをコミカルに描いているので笑いが止まらないんです。昨今は全てにおいて正しいことをしなければいけない世の中ですが、演劇くらいは自由で刺激的でいいのではないかと僕は思います。台本を読んでいるだけではまだ想像がつかないところも多いので、これから稽古が始まり、立体的になると見えてくるものもあるのではないかと楽しみです。
−今回、稲垣さんが演じるギャリーという役柄の魅力は?
この作品は、ノエルさんがご自身を投影した作品なのだそうで、そういう意味でもすごく興味深いですね。自分も俳優だからこそ分からなくはないところもあって。劇中でギャリーは私生活でもつい演じてしまったり、仮面をかぶってしまって本当の自分はどこにいるんだろうと迷ってしまう姿が描かれていますが、それは俳優でなくてもあることだと思います。共感できるところが多いキャラクターになるのではないかと感じています。
−PARCO劇場や渋谷の思い出は?
最初にPARCO劇場の舞台に立ったのは、20代で出演したつかこうへいさん原作の「広島に原爆を落とす日」です。初演は紀伊國屋サザンシアターで、再演がPARCO劇場でした。いのうえひでのりさんが演出をしてくださったのですが、僕は口立ての芝居の演劇指導を受けたことがなかったですし、膨大なせりふ量だったこともあり、すごく印象に残っています。演劇の道の第一歩を踏み出したきっかけにもなった作品でした。その後も、鈴木聡さんとご一緒した「恋と音楽」シリーズなどで出演させていただきましたが、渋谷PARCOも渋谷の街も当時とはだいぶ変わりましたよね。昔のPARCO劇場は、舞台の下手(しもて)に大きな楽屋が1つあって、そこは主演の方が使うことが多いんですよ。僕が舞台に出演するときにその楽屋に入ったら、(その前に公演をしていた)美輪明宏さんの香水の匂いがずっと残っていて。その存在もそこに残っているように感じて緊張したことを覚えています(笑)。今回、新しくなって初めてPARCO劇場に立つので、それもまたすごく楽しみです。
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−本作のギャリーは、俳優だからこそのこだわりがあって、気難しい一面も描かれたキャラクターだと思いますが、稲垣さんは「自分の中のルール」はありますか。
これは恥ずかしい部分だなとは思いますが、妙なこだわりもありますし、生活のルーティンを崩されたくないとか、きっと側から見たらわがままで自分勝手に生きているように見えていただろうなということはあります。パーソナルスペースに突然、入ってこられるとイラッとしてしまうことがあるんですよ(苦笑)。そうした人との距離感というところではギャリーの気持ちも分からなくないです。最近は気を付けないといけないと思っていますが、俳優という仕事をしている人は、ある程度の奔放さや奇妙なところがあっても仕方ないのかなとも思いますし、自分のルールがある人も多いのかもしれません。
−ところで、10月31日まで舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」にハリー・ポッター役で出演されていました。ロングラン公演、舞台上で魔法を使うなどほかの作品とは違う経験も多かったと思いますが、その経験から得たものや新たな気づきはありましたか。
本当にいい経験でした。最初は全く想像がつかないことだらけだったんですよ。稽古期間も含めると半年くらい携わっていましたが、改めてとても大きな作品で、老若男女、多くの方に愛されている作品なのだと感じました。劇場には、学生の団体のお客さんもいたのですが、僕はそれも初めての経験で。家族連れの方もいらっしゃって、「ハリー・ポッター」という作品のファンの広さにも驚きましたし、楽しかったです。今回、最大でトリプルキャストで演じたのですが、それもまた面白かったです。同じことを繰り返していると、マンネリ化してしまう怖さが舞台にはありますが、トリプルキャストで演じることで鮮度を取り戻せる感覚がありました。終わる頃には寂しさも感じましたし、ロングランだからこそ見えてくる作品の良さを改めて感じました。
−では、そうした経験もあった2025年はどんな1年でしたか。
どうしても舞台の印象が強い1年でしたね。それから、連続ドラマ。ちょうど舞台と同時期に撮影があったので、忙しい日々でした。舞台もドラマも長いせりふが多かったので、ずっとせりふを覚えていました(笑)。新しい地図でコンサートを行ったのも良い思い出です。ただ、今年はどうしても「ハリー・ポッター」が占める割合が大きかったです。
−先ほど、「トリプルキャストで演じることで鮮度を取り戻せる」という言葉もありましたが、トリプルキャストも初めての経験ですよね。
そうです。面白かったですよ。(トリプルキャストとして一緒にハリーを演じていた)平岡(祐太)さんはとても真面目な方で、彼の考え方もたくさん聞かせていただきました。もちろん同じようにはできないので、あまり意識しすぎずに演じていましたが、同じ列車に乗って、同じ方向に進んでいるという仲間意識が大きかったです。ただ、一緒に稽古をしていて長い期間を過ごしたのに、同じ舞台に上がることは1回もないんですよ。それもまた不思議な感覚でした。公演が始まると会うこともあまりなくて。1度、(平岡の公演を)見に行ったことがあるのですが、やっぱりすごく良かったです。彼が演じるのと僕が演じるのでは同じハリーも全然違うのですが、それもまた楽しい。彼とは一心同体で絆が生まれたことを感じました。公演はまだ続いていますので、最後まで頑張ってほしいと心から思っています。
−2026年はどんな1年にしたいですか。
まずはこの舞台です。それが終わったらやっと新しい年を迎えた気持ちになれるのかもしれません。どうしても年をまたいで芝居があると、つながっているような気がするんですよ。なので、まずはこの作品を成功させたら、次のことが見えてくるかもしれません。
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−最後に公演を楽しみにされている方にメッセージを。
きっと楽しんでいただける作品になると思いますので、劇場に足を運んでいただいて、良い時間を過ごしていただけたらと思っております。劇場でお待ちしております。
(取材・文・写真/嶋田真己)
PARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」は、2026年2月7日〜28日に都内・PARCO劇場ほか、京都、広島、福岡、仙台で上演。
PARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」|
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