NASCARカップシリーズの反トラスト法(チャーター権契約に関する独占禁止法違反)訴訟は、歴史的な和解に合意 約1年以上前に法廷を舞台として始まったNASCARカップシリーズの反トラスト法(チャーター権契約に関する独占禁止法違反)訴訟において、原告となるトヨタ陣営の23XI(トゥウエンティスリー・イレブン)レーシングと、フォード陣営のフロント・ロウ・モータースポーツ(FRM)は、NASCAR運営側と歴史的な和解に合意。これは今オフに始まった最終審理開始9日目の出来事で、現地木曜の12月11日に裁判所に対し、その最終決定が通知されている。
両チームはNASCARの反競争的行為を主張するだけでなく、このスポーツのビジネスモデルにも異議を唱え、参戦各チームがNASCARと(半強制的に)結ぶ参戦枠(チャーター権)を巡る付与の条件に対し「明らかに不平等でチーム側に経済的な不利益を生じさせる」との認識を示してきた。
その言葉どおり、カップシリーズにレギュラー参戦するチームのほとんどがこの契約を飲んでいるが、チャーター権を持つチームと“非チャーター枠”のオープン登録チームとでは、行使できる権利の過多はもとより、成績に対して与えられる賞金の額が雲泥の差になるという現実も横たわっていた。
アメリカ地方裁判所で審議が続いていた木曜の朝、裁判所は1時間の休憩が必要だと説明し、その1時間があれば将来「多くの時間」を節約できるだろうと提案した。その言葉どおり陪審員に休廷が告げられると、その時間は最終的に1時間半以上に伸びたのち、チーム側の主任弁護士から和解が最終決定したことが裁判所側に伝えられた。
最終的に裁判所が審理終了を知らされた段階で、合意の金銭的条件は明らかにされていないものの、23XIとフロント・ロウを含むNASCARカップシリーズに参戦する全チームに、永久(または『エバーグリーン』な)チャーター権が付与されることも明かされた。
『NASCAR、23XIレーシング、そしてFRMは、長期的な安定性をもたらし、より競争の激しい環境においてすべてのチームが意義ある成長を遂げるための条件を整備する、相互合意に基づく解決策を発表できることをうれしく思う』と、関係者による共同声明に記された。
『この解決策は、アメリカ最高峰のモータースポーツへの長期的な参加のための、公正かつ公平な枠組みを維持するという我々の共通のコミットメントを反映しています。この枠組みは、チーム、パートナー、そしてステークホルダーを支援すると同時に、ファンが世界最高峰のレースを途切れることなく楽しめることを保証します。この合意により、関係者全員がストックカーレースの発展と、ファンの皆様に卓越した競技を提供することに一致団結して取り組むことができます』
この問題が解決したことで、関係者一同は、すべてのチャーター登録のレースチームとともに『世界クラスのイベント、ダイナミックなスポンサーシップとパートナー・アクティベーションの機会、そして未来の世代に向けた継続的な成長を実現するために、ともに取り組んでいくことができる』とした。
『和解合意の条件として、NASCARは既存のチャーター権保有者に対し、署名を求める更新条件の詳細を記載した修正案を発行します。これには、相互合意を条件とする“エバーグリーン”チャーターの形態が含まれます。和解の金銭的条件は機密情報であり、公表されることはありません』
『関係者一同が常に一致してきたのは、このスポーツへの深い愛情と、その可能性を最大限に発揮して欲しいという願いです。これは画期的な瞬間であり、NASCARの基盤をより強固にし、その未来をより明るく、その可能性をより大きくすることを確実にするものです。このプロセスを通して専門的かつ的確な指導をしてくださったケネス・ベル判事と、調停人のジェフリー・ミシュキン氏、そして時間を割いてくださった陪審員の皆様に心から感謝申し上げます』
そのベル判事は裁判所に対し「和解がもっと早く成立していたら良かった」としながらも、関係者一同の尽力に感謝の意を示したが、ここまで法廷にはNASCARを所有するフランス家のジム・フランスや、FRMオーナーのボブ・ジェンキンス、23XIを共同所有するデニー・ハムリンらが証言のために出廷してきた。そのうちのひとりである、もうひとりの23XI共同所有者の“神様”マイケル・ジョーダンも、この和解が成立したのは「冷静な判断のおかげ」だと述べた。
「正直に言うと、ゴールラインに立ったとき、自分のことだけでなくスポーツ全体のことを考えなければならないときがあるんだ」と、ノースカロライナ州シャーロットの連邦裁判所前で語ったNBA(全米バスケットボール協会)レジェンド。
「両当事者がその段階に達し、和解の機会があるかもしれないと気づき、私たちは行動を起こし、実際にそれを成し遂げた。残念ながら、ここまで来るのに長い時間が掛かったが、ここまで来た。それがすべてなんだ」
その“MJ”自身もNBAの現役時代に協会と選手側の立場でスポーツ運営に関するあらゆる立場の相違に直面してきたが、今回の和解に際し永久チャーター権の追加は、チャーター交渉中に示された『4本の柱』のうちのひとつとなる。その他の軸は、チームによるスポーツのガバナンスへの発言権、スポーツの新規収益の3分の1、そして7億2000万ドル(約1120億円/チャーター枠1台あたり2000万ドル)の分配となっていた。
「当然のことながら、今回の係争相手としてお互いに有利なように最大限の努力をするが……ジム・フランス(NASCAR会長兼CEO)は、私と正反対ではないと思っている」と続けたジョーダン。
「ファンはつねに、この状況に対する最良の解決策だった。このプロセス全体、そしてスポーツそのもの。私は最初からそう言ってきた。このスポーツが成長する唯一の方法は、両者の間に相乗効果を見い出すことだ。そして、私たちはすでにその段階に到達したと考えている」
「残念ながら、ここまで来るのに16カ月も掛かったが、冷静な判断によって、私たちは実際に協力してこのスポーツを築き上げることができる段階まで来られたんだ。私はそれを非常に誇りに思っているし、ジムも同じ気持ちだと思っている」
[オートスポーツweb 2025年12月15日]