李相日監督「国宝」受賞ラッシュの中「初めて文芸の授賞式。飽きない」野間出版文化賞を受賞

0

2025年12月17日 20:16  日刊スポーツ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊スポーツ

野間文芸賞、野間文芸新人賞、野間児童文芸賞、野間出版文化賞贈呈式に登壇した李相日監督(撮影・村上幸将)

「国宝」の李相日監督(51)と原作者の作家吉田修一氏(57)が17日、都内で行われた第78回野間文芸賞、第47回野間文芸新人賞、第63回野間児童文芸賞、第7回野間出版文化賞贈呈式で、野間出版文化賞を受賞した。


「国宝」は、吉田氏の同名小説を李監督が実写化した映画が、6月6日の初日から11月24日までの公開172日間で興行収入(興収)173億7739万4500円、動員1231万1553人を記録。03年「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督)が22年、守った173億5000万円の実写日本映画興収記録を、22年ぶりに更新した。


原作も、映画の公開から4カ月で164万部が重版され、10月31日に累計発行部数200万部を突破と、映画が社会現象となって原作をベストセラーに導き、出版文化に貢献したことが評価された。


先に登壇した吉田氏は「思いがけず、こういう賞を頂いて、驚いています。奇跡のような映画を作ってくれたキャスト、スタッフの皆さんのおかげだと思います。特に、李さんに感謝したいと思って参りました」と李監督に感謝。選考委員の漫画家、弘兼憲史氏(78)が「私は映画が好きで歴代のベストテンをいつも頭に入れている。新しく『国宝』をベスト5に入れたい。原作の力強さとのシナジー(相乗)効果があった」と講評したのを引き合いに「僕も20年近く前から、そういう監督だと思い、胸が熱くなる」と感慨を口にした。そして「上映から、まだ半年たって上映しています。素晴らしい映画なので見て欲しい。その後、小説も読んで欲しい」と語った。


続いて登壇した李監督は「初めて文芸の授賞式に参加しましたけど、映画と違って個性が強烈で飽きない。自分が何を話すか考える間もなく、ずっと注視していました」と口にした。「世界99」で野間文芸賞を受賞した作家・村田沙耶香氏ら、各作家のスピーチに感じたものが多かった様子で「作家の方が何を目指しておられるかを見誤って、こうしたら面白い、観客が…ということだけ持っていけないと痛感しました」と原作ものを脚本にし、映画化する立場として襟を正していた。


映画は、主演の吉沢亮(31)と少年期を演じた黒川想矢(15)が、主人公・立花喜久雄の50年の人生を演じた。抗争で父を亡くした喜久雄を引き取る上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎を渡辺謙(66)半二郎の実の息子で、生まれながらに将来を約束された御曹司・大垣俊介を横浜流星(29)、少年期を越山敬達(16)が演じた。吉沢と横浜が、歌舞伎俳優の中村鴈治郎(66)から1年半にわたって歌舞伎の指導を受けたことも話題を呼んだ。


李監督は10年「悪人」、16年「怒り」に続き、3作目のタッグとなった吉田氏に感謝。「『悪人』で映画人生を変えて頂いた。『悪人』があって『怒り』があった。吉田さんには美しい人物、世界を描いて頂きたい。映画人が新しい形で届けるつながりが強固になることが、生まれたらうれしいなと思います」と語った。


主演の吉沢も、ビデオレターを寄せた。「歌舞伎の稽古の際、吉田先生とご飯に行き、喜久雄の話をさせて頂いた。『僕の思うスターは、周りを緊張させるけど笑わせるのがスターだよね』というお話が参考になった」と吉田氏に感謝。李監督にも「『怒り』はオーディションを受け、いつかご一緒したい憧れの監督だった。おふたりとお会いできたこと、うれしく思っています」と感謝を重ねた。

    ニュース設定