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歌舞伎俳優中村橋之助(29)が、若手が中心になって行う「新春浅草歌舞伎」(26年1月2〜26日、東京・浅草公会堂)で2回目の座頭を務める。元乃木坂46の能條愛未(31)との婚約も発表し、公私ともに充実の1年を迎える。このほど、都内で、日刊スポーツのインタビューに応じた。【小林千穂】
★2年連続の座頭
若手俳優が中心メンバーの「新春浅草歌舞伎」。25年にメンバーが一新され、橋之助が座頭になった。26年の公演で2年目に突入する。チームを引っ張る上での工夫も明かしてくれた。
「1年目から座頭としていい公演にしたい気持ちが原動力になりました。僕の心構えや雰囲気は、想像していた以上に、公演に色濃く出ると分かりました。僕の意向で、全員大部屋に入れてほしいっていうリクエストをしたんです。もちろんみんなに、大部屋にしたいんだけどいい? と許可を取りました。良いことも悪いことも同じ空間で共有したい思いがありました」
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26年も大部屋システムは続ける。
「化粧してる時間もご飯食べてる時間も、楽屋入ってから出るまで、舞台の上も総力戦です。個々をじっくり知ることで、本当に仲良くなれると思います。芝居の話、何でもない話もいろいろしますが、刺激はたくさん受けます」
第2部「傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 土佐将監閑居の場」では、主人公の絵師、浮世又平後に土佐又平光起を演じる。師になかなか認められず、言葉も不自由な中、妻おとくに支えられて奇跡を起こす物語だ。
「又平は、役者がやりたいと思う“しどころ”が山のように詰まってるお役です。苦しさや悲しさ、自分ができるすべてをやっても道が開けない状況で、自決まで決める極限状態です。心のお芝居なので、難しいですけどやりがいがあります」
おとくを演じるのは中村鶴松。10代のころの約束が現実になる。
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「中学生くらいの時に、鶴(松)と2人で初役を一緒にやろうと約束していた演目です。幸せな思いを胸につとめたいです」
鶴松は来年2月に舞鶴(まいづる)襲名も決まった。幸せいっぱいのコンビが見られそうだ。
★大きな転機結婚
能條と婚約し、来年結婚を控えることも、夫婦愛を描いた「傾城反魂香」に生きてくるとする。
「大切な人ができたからこそ、変わってくる表現はあると思います。心の引き出しが増えることだと思うので、芸域は確実に広くなるし、今まで感じなかったことを感じるようにもなっていくんじゃないかな、と思います」
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結婚は大きな転機になりそうだ。
「歌舞伎役者は結婚して独り立ち、と言われます。これから僕が橋之助家への責任を持つことになるので、そのことは1人の人間としてもレベルアップするのではと思います」
能條に歌舞伎のおもしろさを言葉を尽くして伝えているという。
「興味持ってくれたら見てほしい、というスタンスなんですけど、僕自身がこれだけの歌舞伎ファンでもあるわけですから、“歌舞伎魅力手引き”はものすごくできます! 奥さん(=能條)が歌舞伎を見に来る前にちょっと解説するんですけど、めちゃくちゃ分かりやすいですし、『おもしろそう!』って興味持ってくれます。録音して聞いてほしいくらいなんですけど、ちょっと言葉がざっくばらんすぎるのでね(笑い)」
近年、着実に力を付けており、今年は「新春浅草歌舞伎」で「絵本太功記」の武智光秀で始まり、博多座では人気演目「双蝶々曲輪日記 引窓」の南与兵衛後に南方十次兵衛など、物語の真ん中に立つ役をつとめてきた。
「あこがれだったお役をさせてもらえるようになってきてるのは感じます。日々、1歩1歩を大事に勉強してきたからなのかなと思います」
★成駒屋引っ張る
間もなく30歳。これからの目標を聞いた。
「父が大事にやってきた演目を僕が受け継ぎ、成駒屋を引っ張ることが僕の30代の目標です。僕が本当に歌舞伎が好きになったのは、30代、40代の父を見ててかっこいい、と思ったからです。30代、40代、真ん中が似合うような役者になりたい」
やりたい演目、あこがれの役を聞くと、次々に出てきた。古典の名作、侠客(きょうかく)の親分、職人の恋物語などを挙げた。
「父が作り直した『小笠原騒動』が本当に大好きです。一昨年にさせていただいた時は言葉にできないうれしさと幸せがありましたが、1回ではなくこれからも何度もやりたいです。『極付幡随長兵衛』もやりたいです。父がやったもの以外では『磯異人館』の岡野精之介。若いうちしかできないお役で35歳くらいが限界だと思うので、この5年のうちにできたらいいなと思ったりします。やりたいことがいっぱいです」
大役、座頭を任されるようになって、責任感やプレッシャーも感じるが、子供のころからの芝居好きが、橋之助を支えている。
「歌舞伎をどれだけ好きで芝居を見てるかには自信があります。どの人の何がかっこいいと思うかという自分の気持ちを信じてきました。自分を信じて教科書を信じることも大事だと思います」
26年の展望を漢字1文字で表すとどんなものになりそうか。
「『新』です。20代までに積み重ねたものを基礎に新しい自分が始まり、新春浅草歌舞伎が始まります。新しい挑戦がありますし、新しい家庭も持ちます。いろんな新しいことが増える1年になりそうです」
◆中村橋之助(なかむら・はしのすけ)1995年(平7)12月26日生まれ、東京都出身。屋号は成駒屋。8代目中村芝翫とタレント三田寛子の長男。00年9月歌舞伎座「京鹿子娘道成寺」などで初代中村国生を名乗り初舞台。16年10、11月歌舞伎座「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」などで4代目橋之助襲名。弟中村福之助、中村歌之助と行う自主公演「神谷町小歌舞伎」も人気。ほか、舞台「サンソン−ルイ16世の首を刎ねた男−」、NHK大河ドラマ「毛利元就」、映画「シンペイ〜歌こそすべて〜」など出演。
■若手歌舞伎俳優の登竜門
「新春浅草歌舞伎」 若手歌舞伎俳優の登竜門として40年以上の歴史がある。26年公演は橋之助のほか、市川男寅、中村莟玉、市川染五郎、尾上左近、中村鶴松ら若手花形俳優、中村歌女之丞、中村又五郎が出演する。第1部は「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり) 鶴ケ岡八幡社頭の場」「相生獅子」「藤娘」、第2部は「傾城反魂香 土佐将監閑居の場」「男女道成寺」。出演者が日替わりであいさつする「お年玉」も毎年の人気。
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