
【写真】あの絶望が、よみがえる――『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』フォトギャラリー
わずか6万ドルの低予算で製作したデビュー作『π』(1997)でサンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞し一躍注目を集め、その後も『ザ・ホエール』(2023)、『ブラック・スワン』(2010)でアカデミー賞を受賞し、『レスラー』(2008)ではヴェネツィア国際映画祭金獅子賞に輝くなど、商業的にも作家的にも大きな成功を収めてきた鬼才ダーレン・アロノフスキー。
『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)は、ヒューバート・セルビー・Jrの小説を映画化した、アロノフスキーの監督2作目。なりたい自分になるため、夢を叶えるための“手段”として薬物に手を出した者たちが、依存症となり薬物に溺れ堕ちていく姿を強烈な映像センスで描く。イギリスの映画誌「EMPIRE」が選ぶ「落ち込む映画」第1位(2009年)、アメリカのWebサイト「Taste of Cinema」が選ぶ「心が砕ける傑作ベスト20」第1位(2016年)に輝いた、トラウマ映画の金字塔が、今冬、4Kリマスター版でスクリーンによみがえる。
物語の舞台は、ニューヨーク・コニーランド。サラ(エレン・バースティン)は一人息子のハリー(ジャレッド・レト)と暮らしている。サラの唯一の楽しみは、TVを見ながらチョコレートを食べること。ある日大好きなクイズ番組のスタッフを名乗る人物から出演を依頼されたサラは、サイズアウトした赤いワンピースを着るためダイエット薬に手を出す。
一方ハリーは恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)との未来に向けて、友人のタイロン(マーロン・ウェイアンズ)と麻薬売買を始める。それぞれに夢を抱いていたはずの彼らは、やがて抜け出せない地獄へと堕ちていく…。
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孤独な未亡人サラが、夢にまで見たテレビ出演を思い描きながら飲み始めたダイエット薬が、いつしか薬物依存へと変わっていく――。写真には彼女が、自身の出演を確かめようと必死にテレビ局へ電話をかける姿や、人気司会者との共演を空想する姿が。
そのほか、麻薬売買で一攫千金を夢見ながらも自らも麻薬に溺れ、現実と妄想の境が曖昧になっていくサラの息子ハリーが夢と現実の境で佇む姿、そして裕福な家庭に育ちながら麻薬によって次第に尊厳を失っていくハリーの恋人マリオンとハリーの仲睦まじい場面も。さらに、ハリーと彼の親友タイロンが、束の間の楽しい時を過ごす若者らしいバディ感あふれるカットなど、過酷な現実に翻弄され、妄想にすがる人々の姿が焼き付けられている。
サラを演じたのは、エレン・バースティン。その鬼気迫る演技力でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたバースティンは「映画の序盤には、たくさんのユーモアがある。サラはとても楽しい人。自分自身や置かれた状況さえ笑いに変える力がある」とコメント。
原作者のセルビーは「サラは、家の掃除をして料理をして、男たちの世話をするのが女性の役目だと思って生きてきた世代。でも今、彼女には世話をするべき“誰か”がいない」と解説。そして、その明るさの奥には深い孤独があり、“テレビ用の自分”を作り上げようとする行為は、目的のない人生に意味を与えるための必死の行動でもあると語る。
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洗練された美しさを持ちながら、人知れず深い孤独を抱える女性マリオンを演じたジェニファー・コネリーは「彼女はひどく孤独で、周囲の誰からも心を隔てている。心から愛したことも、愛されたことも、ほとんどないんだと思う」と語っている。
『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』は、2026年2月6日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開。
