陸上自衛隊の実弾演習で、主砲を放つ10式戦車=6月8日、静岡県の東富士演習場 2026年度の防衛関係予算は25年度当初予算比3.8%増の9兆353億円(米軍再編経費など含む)となった。中国や北朝鮮の軍備強化を背景に、12年連続で過去最大を更新(当初予算ベース)。無人機を使った沿岸防衛体制「シールド」の構築や、自衛官の処遇・勤務環境の改善費用を盛り込んだ。
シールドは、沿岸侵攻を試みる敵を大量のドローンなどで食い止める構想。10種類、計数千機に及ぶ無人機の取得費に1001億円を充て、27年度中の構築を目指す。
航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)で無人機活用の可能性を検討する。米国製の滞空型無人機「MQ9Bシーガーディアン」の検証飛行の費用として11億円を積み、中国の無人機を念頭に、監視や追尾などの対応能力を探る。
処遇改善には、25年度当初予算比42%増となる5814億円を計上。老朽化した隊舎の建て替え・改修を進め、居室の個室化といった環境改善も急ぐ。長時間の拘束を伴う訓練などへの手当を新設する。
敵の射程圏外から対処するスタンド・オフ防衛能力の強化を継続する。音速の5倍以上で飛び、迎撃が難しい極超音速誘導弾の取得に301億円を計上した。
英国、イタリアと共同で進める次期戦闘機の開発に1602億円を充てる。連携して飛行する人工知能(AI)を活用した無人機の研究開発に48億円を確保した。
組織改編では航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改称し、880人規模の宇宙作戦集団を新編。防衛副大臣を2人体制とし、緊急対応を強化する。
政府は23年度からの5年間の防衛費総額を約43兆円と定めており、26年度は計画の4年目に当たる。25年度の防衛関連経費は補正予算も含め11兆円規模となり、国内総生産(GDP)比2%に引き上げる政府目標を2年前倒しで達成した。