写真―[あの日夢見た雲組]―
「僕が見たかった青空」、2023年6月15日に乃木坂46の公式ライバルとして結成したアイドルグループ(通称:僕青)だ。
同グループはセカンドシングル以降、シングル選抜システムを採用。メンバー22人(1名活動休止中)は、表題曲やメディア出演をしていく選抜の「青空組」と、ライブなどを中心に活動する「雲組」の2つチームに分かれて活動している。
この連載「あの日夢見た雲組」は、12月17日リリースの7枚目シングル「あれはフェアリー」で構成された雲組単独公演のライブとともに、雲組で切磋琢磨するメンバーに注目していく。
◆新たな雲組の顔として決意と不安
「6枚目シングルから雲組メンバーが10人に減ってしまって、ファンの方もどうなるんだろうと不安を感じていたと思うんです。だから、新体制の雲組に期待してもらえるようなパフォーマンスをしたいと全員でレッスンを重ねていました」
11月24日、新体制となって2回目となる雲組単独公演#23(1部・2部)が行われた。7枚目シングルの雲組楽曲「カイロに月」でメインメンバーに抜擢され、新たな雲組の顔として決意を語った工藤唯愛。しかし、本番当日のリハーサル後にスタッフと浮かない表情で話し合っていた。
「その日、喉の調子が悪くて……。他のメンバーの足を引っ張ってしまうと思って怖くなってしまったんです。私の異変に気づいたマネージャーさんが『いつもと違うけど、どうした?』と声を掛けてくれました。話せたことで気持ちが落ち着いて、とにかく今できることを最大限やろうと。公演中のMCで詰まった声になってしまったときは他のメンバーが面白くイジってくれたり、内容が聞こえづらかった部分は補足してくれたり、サポートしてくれました」
◆目標は「毎公演で1つでも成長を感じてもらう」
7枚目シングル期間では、「毎公演で1つでも成長を感じてもらう場面を作ること」を目標に掲げた。雲組単独公演#23では、スタートからMCを挟まずに11曲連続で披露するという雲組にとっての初挑戦があった。「私のダンスにはキレが足りないと感じていたので、とくに意識してパフォーマンスしていました」。
1部の「恋は倍速」では工藤の力強いソロダンスに歓声が上がり、アップチューンの「残り時間」のサビでは客席に向かって誰よりも強い思いを込めて拳を掲げた。
「僕青の楽曲のなかで『残り時間』が1番好きなので、それを雲組公演で踊れることも嬉しかったですし、どちらの公演も11曲を飽きさせずに魅せるのかはレッスンでも重点に置いていたので。ライブ後のお見送り会では『いつもより表情に迫力があって、ダンスのキレもよかった!』と言ってくださるファンの方も多かったです。自分でライブ映像を見返すと、『もっとこうすればよかった』と改善点ばかりを見つけてしまうので、前向きな気持ちで公演を終えることができました」
◆芸能界への背中を押してくれた推しの存在
北海道出身の工藤は13歳で僕愛に加入。グループでは八重樫美伊咲、木下藍とともに“年少トリオ”として知られる。そんな彼女の地元は冬になると、通学するのもひと苦労だったそうだ。
「学校に向かう通りが激狭な道なんです。そこに雪が降って除雪すると両脇に高い雪の壁ができるから、さらに狭くなって一列で登校してました。遅刻しないように親が車で送ってくれるときもあるんですけど、同じような送りの車が学校の近くでズラ〜ッと渋滞になって、結局遅刻ギリギリになるっていうのが北海道の学生あるあるです(笑)」
アイドルになる前もクラスメイトから注目されるマドンナ。かと思いきや、本人は「ほとんど女の子としか話していなかったので、全然そういうタイプじゃなかったです」と首を横に振った。芸能界に最初に興味を持ったのは、読者モデル。家族のサポートを受けながら雑誌のオーディションやコンテストなどに挑戦したが、結果は振るわなかった。そのなかで見つけたのが、僕青のオーディション。背中を押したのは推しの存在だ。
「小学生の頃から乃木坂46の賀喜遥香さんが大好きなんです。ライブには行ったことはなかったんですけど、お小遣いで買える範囲のライブグッズだけは毎回買っていて。生写真を入れたトレカケースをデコったり、粘土でミニチュアのオリジナルグッズを製作してみたり、推し活を楽しんでいました」
◆念願の雑誌モデルと生まれた苦しさ
北海道から上京してからは初めのひとり暮らしに加えて、レッスンと学業の両立が始まる。娘が寂しくならないように、一日に何度も母親がビデオ通話をしてサポートした。そんな親の愛情に加えて、理想のアイドル像に出会えたことも彼女の希望となった。
「デビューした直後の歌番組の楽屋で乃木坂46さんにご挨拶したときに嘉喜さんがいて、嬉しくて大号泣していました。推しは変わらないですが、今は『ターンの綺麗さ』とか『指先まで魅せるダンス』など、同じアイドルとして吸収したいことにも目が向くようになりました。お会いしたのはその一度だけなので、また共演できるように頑張りたいです」
‘24年4月にはティーン向けファッション誌「nicola(ニコラ)」の専属モデルに合格。念願だった雑誌モデルの夢を叶えたはずだったのに、それが彼女を苦しめる悩みになった。工藤は選抜制が始まったセカンドシングルから5枚目シングルまで青空組にいたが、「ニコラのモデルだから青空組(選抜)に優遇されている」という批判だ。
「モデルの仕事が始まってから、そういう言葉が自然と目に入ってきてしまうことが多くて、勝手にネガティブに捉えて落ち込んでしまうこともありました。6枚目シングルで雲組に移動してからたくさん考えて、どうしたら『工藤唯愛は青空組に必要だ』と納得してもらえる自分になれるのか。本当に、本当に、模索しながら自分なりの答えを今も探しています」
◆自分に足りないところを雲組で向き合いたい
6枚目シングルの「超雲組公演 HYPER」。ひとりでMCコーナーを任された彼女は、声を震わせてありのままの気持ちすべてを吐き出した。「今は雲組にいて悔しさや苦しさを感じるときもあります。いつか人気も実力をつけて、青空組に行きたい」と。
「心のなかでモヤモヤしていたものが少しだけ晴れた気がしました。自分に足りないところを雲組で向き合いたいという強い決意に変わりました。また青空に選んでもらうための課題を挙げたらたくさん出てきてしまうけど、今は歌唱力と楽しんでお喋りする余裕を持つこと。私のことを見てくれている人を大事にしたいです」
彼女を温かく見守っているのは、ファンだけではない。雲組のメンバーもそうだ。
「家族のなかだと長女なので、僕青に加入したばかりの頃は『しっかりしなきゃいけない』と真面目に考え過ぎていたんです。7枚目シングルはお姉さんメンバーに甘えることも覚えて雲組では妹になった気分を味わっていて、レッスン終わりに日替わりでメンバーの肩にズン!って頭突きするのがブームです(笑)。そんな不思議な行動も受け入れてくれる優しさをあらためて感じてますね」
◆アイドルの自分を忘れられる時間
また最近では、息抜きにメンバーと出掛けたりしながらリフレッシュする時間も増えたという。彼女がアイドルの自分を忘れられるときはどんな瞬間だろうか。
「編み物とお菓子作りが小学生から好きなんですけど、ずっと続けていることなので没頭できている時間だなって思います。今年のクリスマスには雲組単独公演#24があってメンバーにも会えるので、お菓子を渡したいなって思ってます。以前にもクッキーを渡したときに喜んでくれた顔が嬉しかったから」
痛みも知る彼女だからこそ寄り添える優しさが、雲組の魅力を引き立てる。
【工藤唯愛(くどう ゆあ)】
2009年、北海道生まれ。2023年6月15日に結成したアイドルグループ「僕が見たかった青空」(通称「僕青」)のメンバー。サラサラなロングヘアがチャームポイントで、2024年5月号より、ニコラ専属モデルに。7枚目シングル「あれはフェアリー」が発売中。「僕が見たかった青空 雲組単独公演 #25」が、2026年1月12日(月・祝)Yogibo META VALLEY(大阪)、2026年1月14日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE(東京)、1月24日(土)NAGOYA JAMMIN(愛知)で、翌2月11日(水・祝)には「僕が見たかった青空 超雲組公演 でらっくす」が大手町三井ホールにて開催決定! また、「僕が見たかった青空」としては3月29日(日)KANDA SQUARE HALL(東京)を皮切りに、6都市を回る全国ツアーや、6月20日(土)には河口湖ステラシアターにて「結成3周年記念 僕が観たかった『青空野外』ライブ2026」の開催も決定した。最新情報は公式HPをチェック
<取材・文/吉岡 俊 撮影/山川修一(扶桑社)、星 亘(扶桑社)>
―[あの日夢見た雲組]―