写真 妊娠が分かった途端、義父の“孫フィーバー”が暴走し始めた――。そんな状態に苦しめられたと語るのは、斉藤茉奈さん(仮名・30歳/主婦)。連日のアポなし訪問に加え、価値観の押しつけが止まらず、つわりの辛さもあいまって、心身ともに限界へ。
そんな茉奈さんを救ったのは、意外な人物でした。
◆「孫には俺と同じ名前をつけよう!」
茉奈さんは、妊娠が分かってすぐの頃からずっと、義父の“孫フィーバー”に振り回されていました。
「結婚当初は、朗らかで気のいい人だと思ったのですが、私の妊婦を知った義父はよほど嬉しかったのかすごいテンションで張り切り出して止まらなくなってしまって。
『茉奈ちゃん、今日はお腹見せに来ないの?』『名前は俺と同じ“○○”に決まりだな!』『これ食え。妊婦はほうれん草を食べるといいんだぞ』と毎日のように連絡が来て、突然の訪問に、食事の強要も当たり前のようにありました」
つわりで苦しむ茉奈さんには、義父の“善意の押しつけ”が重くのしかかり潰されてしまいそうでした。
◆つわりで動けない……それでも義父は“アポなし訪問”
「ある日の午後も、義父が急にやって来て『ほら、今日もほうれん草持ってきたぞ!』と玄関前でずっとインターホンを鳴らし続けるのです……。私がうんざりした気持ちでソファーから立ち上がろうとしたら、急な吐き気に襲われて、耐えられずその場から動けなくなってしまったんです」
その時たまたま遊びに来ていたのが、助産師をしている茉奈さんの姉・美波さん(仮名・32歳)でした。
「姉には事細かに事情を話してあったし、私が弱っている姿を見かねて、義父の対応をしてくれたんですよ」
玄関を開けると、義父がにやっと笑いながら「あ、美波さんも茉奈さんのお腹見に来ていたのか? でっかいだろ〜」と話しかけてきましたが……。
「姉は、『お義父さん、いま茉奈は吐き気で動けなくなっています。妊娠中の女性に一番してはいけないのは“ストレスを与えること”です。良かれと思ってやっているのかもしれませんが、結果的に“母体の調子を崩している”ならそれは害です。つわりが悪化している原因の一つが、お義父さんの過度な干渉であることは明らかですね』とはっきり言ってくれたんです」
◆助産師の姉が「全部やってはいけないこと」とピシャリ
すると義父は「孫を楽しみにして、差し入れを持ってくることの何が悪い! 感謝されて当然のことだろ!」と顔を赤くして怒鳴ってきたそう。
「続けて姉が『お腹ばかり見るのも、突然来るのも、名前を押しつけるのも、全部やってはいけないことです。このままだと、茉奈はお義父さんのせいで切迫早産のリスクが上がってしまうかもしれませんよ』と続けると、さすがの義父も唖然として固まってしまいました」
そして美波さんは「なので今日から会う回数と連絡はこちらで管理します。義父さんの訪問は 月1回で事前連絡必須でお願いしますね。守れない場合は、産後の面会も制限しますからそのおつもりで」と冷静に伝えたそう。
事の重大さにやっと気がついて動揺したのか、義父は自分の失態を誤魔化そうとするかのように、猫撫で声で擦り寄り「分かったよ。もう少し控えるからさ」と苦笑いしながら言いました。
「そしたら姉が冷ややかな目で『いえ、“控える”なんて話はしていません。“約束を守る”でお願いします』とピシャリと言ってくれて……。それを聞いてものすごくスッキリして、胸の支えが一気に取れたような感じがしましたね」
◆逆ギレして去った義父。そして平穏が戻った
しかし、その言葉で義父の態度は一変。鬼の形相で怒り出してしまい……。
「結局『ふざけるな! 下手に出たら調子に乗りやがって! こんなところ2度と来るか!』と怒鳴り散らかして帰っていきました。それ以来、夫がたまに義父の様子を見に行っていますが、私にも孫にももう会わなくていいと言っているみたいなんです」
義父は「茉奈さんが謝ってくるまで口を聞かない」とすっかりスネてしまい、アポなし訪問をする事はなくなりました。
「とにかく平穏な毎日が戻ってきてホッとしています。とりあえずは無事に出産するまでは義父には会うつもりはないですね。つわりもすっかり軽くなり、姉には本当に感謝しています」
もちろん赤ちゃんに義父と同じ名前をつける予定はないそうです。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop