
(左から)パーソナリティの宇賀なつみ、小山薫堂
◆歌という“故郷”を与えてくれた父に感謝の言葉
「日本郵便 SUNDAY’S POST」は、2025年の1年間に総勢53名のゲストをお迎えしました。番組では毎回、ゲストが「いま、想いを伝えたい方」へ宛てたお手紙を書き、朗読をおこないます。
今回は、そのなかから「もう一度、みなさんに聞いてほしい」と感じたお手紙を選び、ご紹介します。最初にお届けするのは、歌手・加藤登紀子さんのお手紙です。加藤さんは2025年3月16日の放送に出演。お手紙の宛先は、加藤さんのお父様でした。
<加藤登紀子さんのお手紙>
お父ちゃんへのお手紙
お父ちゃんが私に内緒でシャンソンコンクールに申し込んだことが、私の運命を変えました。歌手になろうと思ったこともなかったし、歌に自信があったわけでもなかったから、びっくりしました。でも、あの挑戦に乗って本当によかったと思う。
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お父ちゃんが言っていたこと、覚えています。「満州生まれの者は、故郷がないようになってしまう。故郷のない者ほど悲しいものはないぞ。お前にはそんな思いをさせとうないんや」って。
ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ攻撃で、たくさんの人が故郷を離れていくのを見て、涙が止まらないです。でも、お父ちゃん。私は歌手だから。
心のなかに、いっぱいの故郷があります。これからも、故郷のない人の悲しみを、私の歌にしていきます。お父ちゃんは、私に故郷をくれたんだよ。歌という故郷をね。登紀子
加藤:私の父はね、本当に歌が上手だったの。そして、82歳で死にました。死ぬまでお父ちゃんは歌っていましたね。亡くなる前、たまたま珍しくふたりだけで喋ったことがあって。そのときに「お前はまだまだやな。俺には及ばんな」って言われましたね(笑)。だから、お父ちゃんは「まだまだや」と思っているかもしれませんね。
小山:「歌が故郷」っていい言葉ですね。自分がたくさんの人の故郷を作り、歌い続けるということですよね。歌手という職業は、本当に羨ましいなと思います。
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2025年6月1日に出演したEPOさんは、自身に宛てたお手紙を朗読し、母への想いを伝えました。
<EPOさんのお手紙>
あの日の私へ。
あの日の私、お元気ですか? 未来の私から、あなたへお手紙を書いています。あなたが生まれる前のことですが、覚えていますか?
この世に生まれてくる前のこと。生まれ変わりのときを、雲の上で待っていたことを。あなたは神様に、こんなお願いをしましたね。
「私、どうしてももう一度生まれてみたいのですけど、どこかに私のお母さんになってくれる人はいますか?」
「1つあるにはあるんだが、そこはおすすめできないね」
「どうしてですか?」
「苦労するぞ。たくさん泣くぞ。たくさん傷つくぞ」
少しがっかりするあなたを見て、神様は何かひらめいたように、こう続けました。
「でも、君が地上に降りてやってみたいと思っていることのためだったら、このお母さんほど的確な人はいないだろう」
神様が、あなたにそう言ったのです。
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「はい。楽しんで、楽しんで。明るいほうへ、明るいほうへ」
そして、あなたはこの地上に生まれてきました。
神様が言っていた通り、生まれてきてからのあなたは、お母さんが抱える心の問題で、とても苦労しました。ところが、どうでしょう。お母さんの言葉に傷ついて泣いては1つ、また泣いては1つ。そのたびに、あなたのなかから素敵な歌が生まれてきました。あなたは、自分のつらい気持ちを歌にして、自分で心の傷を治してきたのです。
やがてあなたは大きくなり、いつしか歌を作ることが、あなたの大切な仕事になりました。そう、あなたは歌を作る人。そして、その歌を歌う人。それが、あなたの未来の仕事です。
あなたは、心に問題を抱えたお母さんをあえて選んだことで、あらゆる感情を体験し、やがてそれを歌にして、人の心を癒やす人になりました。それが、今の私です。
だから、これからも約束して。数えてはいけない、ありがとうと言ってくれない人たちを。数えてはいけない、悲しみの数を。悲しみというのは欲が深くて「なんで?」が増えていくだけだから。
数えてはいけない、ホクロの数を。数えていいのは、感謝と「ありがとう」の数だけ。EPOより
EPO:大変な人生の母でした。でも、そのお母さんしか私は知らないので、そういうもんだと思っていました。子どもながらに混乱して大人になったんですけど、その母を選んだことで、私は心のことにすごく興味を持ったんですね。私は今、心理セラピストの仕事もしているんですけども、それもあの母を選ばなかったら、たぶんそうはならなかった。
◆俵万智が亡き父に向けて短歌の贈り物
2025年の放送には、歌人の俵万智さんも出演しました。放送日は、俵さんの代表作「サラダ記念日」に記された7月6日でした。俵さんが書かれたのは、亡き父に宛てたお手紙でした。
<俵万智さんのお手紙>
お父さん、お元気ですか?
天国でも毎日、囲碁を楽しんでいますか? 病室の天井の格子模様に向かって、手を動かしていた姿を思い出します。あれは、天井に白黒の碁石が見えていたんだよね。看護師さんに説明したら「本当にお好きなんですね」と感心していました。
晩年は、1日10時間くらいパソコンの前に座って、ネットで囲碁をしていましたね。いつだったか、サイトで募集していた「囲碁川柳」にも応募して、娘が歌人のわりには見事落選。家族で笑い合ったのを覚えています。
その囲碁川柳の審査員、小山薫堂さんに、今日はラジオでお会いしましたよ。川柳は下手くそだったけれど、私の短歌は誰よりも暗唱してくれていましたね。お父さんを見送ってから、どんなに気に入った短歌ができても、もう読んでもらえないんだなと思ってしまいます。
この1年あまりは、お父さんを詠んだ歌ばかり作っていました。歌が生まれては「ああ、もう読んでもらえない。当たり前じゃん、お父さんがいないって歌なんだから」と、自分でツッコミを入れつつ、改めて寂しさを実感します。
今日は、こういう特別な電波なので、もしかしたら届くんじゃないかと思って、いくつか短歌を読みますね。天国で聴いていてください。
「妻の名前 隠されているパスワード もう一度打ってほしい父の手」
「形式と 思っておりし 線香の煙は 空へ届くひらがな」
「父逝きて はじめての雪 思い出し泣きという語の辞書にはあらず」
「大谷が結婚しても 藤井くん負けても 真顔のまんまの遺影」
「死にたいと言いつつ母は 塩分を控えて 今日の健康を見る」
最後の歌は、お母さんの近況です。早くお父さんのところへ行きたいと言いつつ、それはもう少し先になりそうかな。ゆっくり待っていてください。万智より
宇賀:短歌はもちろんですけども、お手紙全体が本当に素晴らしい作品でしたね。
小山:たくさんの短歌を書いてくださいました。短歌の面白さを改めて感じましたよ。
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2025年に番組へ寄せられた手紙の一通一通には、それぞれの人生と、時代を超えて受け継がれていく想いが込められていました。2026年の「SUNDAY’S POST」も、さまざまなゲストを迎え、特別なお手紙の時間をお届けします。
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00〜15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/post/
番組公式X:@sundayspost1
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