
お正月は、雅楽に触れる機会の最も多い期間。初詣でどこからか「プエ〜〜」「ミャア〜〜」と聴こえてくるやつだ。
「雅楽って神社のやつでしょ?」とよく聞かれるが、もともと仏教とともに大陸から日本に伝来したルーツがあり、お寺でもさかんに演奏される。752年の東大寺大仏開眼供養会ではきらびやかな舞や演奏が華々しく奉納され、中国や朝鮮、インド、ベトナムなど多国籍な人や文化が集まる一大イベントだったようだ。
しかし現代の人が雅楽を楽しむ、となるとなかなか難しい。テンポは遅いし、曲は長いし、そもそも聴衆に生身の人間を想定していないような感じだ。雅楽ってどうなってるのかわからない、と顔をしかめられることが多いので、ここで少し鑑賞のポイントをお伝えしたい。
初詣で一番よく聞くのが「越天楽(えてんらく)」という曲。1曲10分ほどで、単純な4拍子の曲なのでわかりやすい・・・はずなのだが、やっかいなのがこのリズム。好き勝手に伸び縮みしてしまう。いち、にぃい、さん、しぃぃぃぃい、いち、に、という有様で、拍(はく)有るのに拍無いじゃん、みたいなことになるのだが雅楽人としては普通に拍を取っているつもりなのである。このリズム感が、雅楽が楽譜に表しきれず今も口伝で伝えられている理由の一つだろう。指揮者もいないのにこの自在なリズムをみんなで揃(そろ)えて演奏できているのは、全員が曲を歌い習って雅楽独特の空気感を体に刻んでいるからなのだ。
拍を取るポイントの一つは、打楽器を聞くこと。太鼓の大きな「ドーン」という音がしたら1拍目、と思えば少しわかりやすい(打楽器に関しても「絶妙に少しだけずらす」などしているのだがこれを文字に起こそうとすると大変厄介なのでここでは割愛)。
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また、曲の後半になるとテンポが上がり、リズムの伸び縮みが少なくなるのでわかりやすい。ちなみに曲のテンポについても特に決まりがあるわけではなく、「日本の景気が良いときは速くなる」という噂(うわさ)を耳にしたことがあるが真偽のほどは不明。
管楽器にばかり耳が集中してしまうが、実は絃楽器も活躍している。琵琶(びわ)が1拍目に「ベン!」と力強く入り、箏(こと)がそれに続いて「ポロロン」とアルペジオを刻む。管・絃・打楽器、全てが密接に関わりあい、お互いを聴きながら進めていく、究極の全方位忖度ミュージックが雅楽である。
おわかりいただけただろうか?たぶんわからないと思う。何しろ千数百年にわたって歴史を重ねてきた音楽だ。私だって今でもわからない。それでも今年は少し耳をそばだてて、雅楽の不思議な世界を味わってみては。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.2からの転載】

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かにさされ・あやこ お笑い芸人・ロボットエンジニア。1994年神奈川県出身。早稲田大学文化構想学部卒業。人型ロボット「Pepper(ペッパー)」のアプリ開発などに携わる一方で、日本の伝統音楽「雅楽」を演奏し雅楽器の笙(しょう)を使ったネタで芸人として活動している。「R-1ぐらんぷり2018」決勝、「笑点特大号」などの番組に出演。2022年東京藝術大学邦楽科に進学。
